http://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20140912/231399.html?view=moreゴール後に、珍しく喜びを爆発させた柴崎 [写真]=Getty Images
まさに、言い得て妙である。
ハビエル・アギーレ監督はベネズエラ代表戦後、新戦力の活躍について、「新しい代表の選手が良いプレーをして、しかも結果を残した」と話し、「新しい血が注入された」と喜んだ。途中投入された武藤嘉紀は、勢いよく飛び出し豪快な先制点を挙げたプレーぶりから、まさに“新鮮な血液”だった。
一方、A代表デビューを果たした柴崎岳は、少し趣が異なる。滞りなく血液循環させるように長短交えたパスでチームを動かすプレーとポジションを考えれば、むしろ心臓と表現した方がしっくりくるのではないか。
アルベルト・ザッケローニ監督体制だった2年半前に代表初招集を受けていた柴崎は、長らく日本代表の屋台骨を担った遠藤保仁の後継者と目されてきた。10代から将来を嘱望され、22歳となり新体制の船出とともに、ついに代表での第一歩を刻んだわけだが、気になる点は中田英寿や遠藤が背負った背番号「7」を引き継いだように、プレーでも偉大な先輩と同様、チームをけん引できるかどうかだろう。
ただ、鮮やかなダイレクトボレーによる代表初ゴールをはじめ、鮮烈な印象を残したベネズエラ戦でのパフォーマンス以外でも中心選手に上り詰める可能性は感じさせる。プレーに対する考え方が、どこか指揮官とリンクしていそうなのだ。
柴崎はデビュー戦について、「ボールを持たないところにおいても、自分の判断やプレーを積極的に表現したいと思っていた」と振り返ったが、8月28日のメンバー発表会見の席でアギーレ監督も、「(選手は試合の)88分間はボールを持っていない。では、その88分の中で、選手は何をしているのか。私はそれを見る」と口にしていた。偶然と思えばそれまでだが、両人ともオフ・ザ・ボールの質にこだわりを見せていたところは興味深い。
そして、もう一つ。試合後の会見でアギーレ監督は「選手には枠から飛び出して、自分のプレーをしてほしいとリクエストした。自由にプレーしたくない選手はいないと思いたい。ある形を選手には与えるが、それを発展させるのは選手の自由」と、語った場面があった。
指揮官のコメントは、「日本人選手は形にはめてプレーすることは得意でも、アイデアを発展させたり自身の判断でプレーするのは苦手とされている。この2試合を通じ、選手がピッチ上で監督のアイデアを発展させる能力があると感じたか」という問いに対する回答だった。そして、図らずもベネズエラ戦の前日に柴崎は「監督は自分のやり方を完全に教えてくれるのか、トレーニングから意図を読み取らないといけないのか」という質問に答えている。
「トレーニングの意図は伝えてくれますし、それと同時に徐々に一握りではありますけど、監督のやりたいサッカーが段々出始めているところで、練習からどういうことをしたいのかという部分が見えてくることもあります。一つのことを偏って押し付けているわけではないので、選手と監督のお互いにいい関係でトレーニングできているかなと思います」
技術の高さはもちろん、バランス感覚や対応力が魅力の柴崎である。要求に応えつつ、自身の特長を上乗せしていく点に不安はないだろう。論じられるべきは、どれほど高いレベルでこなせるかになる。
代表招集前、「次のワールドカップでは26歳。今は22歳ですけど、本当にいい歳でワールドカップを迎えられると思うし、最初から選ばれてずっと入っていきたい」と語っていていたことからも、彼の描くグランドデザインは壮大なものだろう。
柴崎本人も、「世間的に見れば代表の7番というのは、過去に偉大な選手がつけていた背番号なのでそういう見られ方はされると理解しつつ、僕自身のプレーを出せればいい」と自覚も十分。ならば、「背番号にはそんなにこだわりはない」と語っていることを承知しながらも、敢えて中田と遠藤に並び、そして越えていくような活躍を願いたい。
日本代表の新たな心臓と言えるような活躍を。