【中古】ミニカー チョロQ 浦和レッズバス (ホワイト×レッド)
浦和レッズは、18日に行われた明治安田生命J1リーグ第29節で大分トリニータに0-1と敗戦。J1参入プレーオフ出場となる16位・湘南ベルマーレとは勝点4差、降格圏の松本山雅FCとは同6差と、残留へ予断を許さない状況となっている。
一方でAFCチャンピオンズリーグ(ACL)では、前年覇者の鹿島アントラーズを準々決勝で破った広州恒大(中国)に準決勝第1戦で2-0と完勝。2年ぶりのファイナル進出へ王手をかけている。
ここで大きな疑問が生じる。ACLでは無類の強さを誇る浦和がなぜ、リーグでも同じ戦いをできないのか、という疑問だ。スポーツライターの飯尾篤史氏は、浦和がリーグで勝てない要因をこう読み解く。
■なぜ、ACLとリーグで戦いぶりに違いが生まれるのか
Jリーグの七不思議のひとつかもしれない。
ACLで無類の強さを誇る浦和レッズがなぜ、Jリーグでは勝てないのか――。
Jリーグ勢で唯一、アジア4強まで勝ち残り、10月2日の準決勝第1戦では、鹿島アントラーズを退けて勝ち上がってきた広州恒大に対し、ほぼ完璧な試合運びで2-0と完勝を収めた。
ところが、18日の大分トリニータ戦では後半アディショナルタイムに決勝ゴールを許し、0-1と敗戦。これで今シーズン、12敗目。J2とのプレーオフに回る16位の湘南ベルマーレと勝点4差の12位に低迷している。
完勝した広州恒大戦のあと、記者のひとりがつぶやいた。
「リーグ戦でもこのパフォーマンスができれば、優勝争いなんだけどなあ」
すると、周囲の記者たちは一様に頷いた。
「ほんとにそうだよなあ。もったいないよね」
おそらく選手たち自身も、悩ましいに違いない。なぜ、ACLではできるのに、リーグではできないのか、と。
だが、敗れた大分戦後に感じたのは、リーグ戦での浦和が現在における姿なのではないか、ということだ。つまり、ACLでの浦和が特別なのではないか、と。
ACLでは、アジア最強を決めるという舞台装置や、ビジュアルサポートをはじめとしたレッズサポーターの力強い後押しなどによって、モチベーションが最高点に到達し、集中力も研ぎ澄まされ、持てる力以上のものが引き出されている面があるはずだ。
また、過去二度もACLを制し、「オレたちACLに強い」という、良い意味での思い込みが、ACLにおける自信に拍車を掛けているかもしれない。
かつて鹿島アントラーズの土居聖真が「メディアが『鹿島は勝負強い』と書いてくれるから、そうなんだ、と思い込める部分がある」と語っていたが、それと同じようなことが浦和の選手にも起きていてもおかしくない。
ただ、それに気がつかず、「ACLにおける自分たちこそが本来の姿」と錯覚しているから、リーグ戦で苦しむことになっているのではないだろうか。
■「ACLは優勝、リーグでは残留」。目標を明確に
リーグ戦で結果を残せない要因は、チームの平均年齢の高さやチーム内での競争力の低下など、さまざまだろう。主力選手の顔ぶれは、この数年間変わっていない。大分戦では20歳の橋岡大樹が欠場したとはいえ、スタメンの平均年齢は29.64歳。これは18チーム中、断トツの最高齢だから、過密日程のなか、運動量が上がらないのは当然だ。
大槻毅監督も、あの手この手でアプローチしているが、いかんせんシーズン途中の就任だったから、すでにチーム編成は固まっていた。
若く、フレッシュな選手を起用し、チームを活性化できればいいが、両コンペティションが大詰めを迎えた今となっては、それも難しくなっている。
ルヴァンカップでは汰木康也や柴戸海といった20代前半の選手たちにチャンスが与えられ、天皇杯4回戦のHONDA FC戦では池高暢希、岩武克弥と高卒、大卒ルーキーがスタメンに抜擢された。しかし、この試合に敗れて以降、若手の出場機会は激減してしまった。
大分戦のあと、興梠慎三は「引き分けを狙うつもりはなかったし、勝ちにだけこだわっていた」と振り返った。
一方、岩波拓也は「今、自分たちの置かれている状況を考えれば、勝点1でも良かったのかな、と正直思っている」と言葉を絞り出した。
個人的には、岩波の意見に賛同できた。
残り5試合となった今、残留争いに巻き込まれているのは、まぎれもない事実だ。ACLのファイナルまであと少しのところに迫っているから、リーグ戦での現状を受け入れ難いかもしれないが、「ひとつでも上の順位を目指す」「本来の自分たちのサッカーをする」といった曖昧な目標のままでいると、泥沼にハマる可能性だってある。
だから、「ACLでは優勝を、リーグでは残留を目指す」と、今季の目標を明確に打ち出し、チーム内外で共有したほうがいいのではないか。
■8年前に見せた“残留への執念”
残留争いといって思い出されるのは、11年シーズンだ。悲壮感さえ漂っていたが、J1残留に向けてチームがひとつになって、ガムシャラに闘っていた。
残留を決定づけることになる11月26日のアビスパ福岡戦では、柏木陽介の放った枠外シュートが相手DFに当たってコースが変わり、ゴール右隅に吸い込まれた。
「あんなに枠から外れたシュートが入るなんて。でも、自分が浦和をJ1に残したい、何かを起こしたいと思ってうった。いろんな想いが乗っかって入ったとしか思えない」
のちに柏木はこう語ったが、まさに「絶対に残留するんだ」という執念がボールに乗り移ったようなゴールだった。
もし、リーグ戦の目標を「J1残留」だと明確に打ち出していれば、自分たちよりも上位である大分戦は「勝点1でもいい」と割り切れたかもしれないし、8年前の柏木のように、魂を込めたシュートを放てたかもしれないし、カウンターを浴びた場面でも、より必死に戻り、身体を投げ出して潰せたかもしれない。
もちろん、リーグ優勝を狙ったシーズンに、「残留を目指す」と公言するのは憚られるだろう。しかし、リーグ戦は毎シーズンあるものだ。今オフに関根貴大、橋岡を主軸に据えてチームを編成し直して、来季、改めてリーグ優勝を目指せばいい。
ホームで痛恨の敗戦を喫した大分戦のあと、スタンドからブーイングは起こらず、拍手すら聞かれた。アウェーで行なわれるACL準決勝第2戦にチームを送り出すためだ。広州恒大との大一番は23日。さあ、今度は強い浦和レッズのお出ましだ。
取材・文=飯尾篤史