◆◆サッカーダイジェスト / 2019年10月24日号
最初の45分間の攻撃は、どこか“よそいき”だった
[ルヴァンカップ準決勝第2戦]鹿島0-0川崎/10月13日/カシマ
第1レグの1-3のビハインドを覆すには、最低でも2点が必要――。そんなシチュエーションにプレッシャーを感じていたのか。いつも以上にナイーブになってしまったのか。ホームに川崎を迎えた第2レグで、結果的に鹿島はひとつのゴールも奪えなかった。シュート数は3対18。とても2点が必要だったチームとは思えない出来だった。
とりわけ前半は、まったく点が入る気がしなかった。川崎の組織立った守備が機能していたのは間違いないが、最初の45分間の攻撃は、どこか“よそいき”だった。
サイドにボールをつける。相手のプレスがかかる。そこで無理に横パスを通そうとして、結局はカットされる。あるいは、ミスパスになる。狭いスペースでも、なんとか繋ごうとするが、思うように連動せず、手詰まりになる。ポゼッションに優れる川崎からせっかく奪ったボールを、自滅に近い形で失う場面は少なくなかった。
打開するのが難しそうなら、割り切って一度、後ろに下げればいい。何度でもやり直して、空いたスペースを見逃さずに鋭く突く、もしくは長いボールを使って、それがアウトになったとしても、少しでも局面を前に進めるように、ジワジワと圧力をかけて攻め込んでいく。
そうした余裕がなかったように思う。点を取らなければと、焦っていたのかもしれない。急ぎすぎていたようにも見えたし、考えすぎて無駄な手数が多かったようにも見えた。そこを、ことごとく川崎の選手たちに狙われた。いずれにしても、まるで“鹿島らしく”なかった。
後半から投入された伊藤翔が、ピッチに立ってほどなくすると、後ろ向きでパスを受けてから、思い切ったサイドチェンジを繰り出す。このワンプレーで少し勢いが出たような気がしたが、こうした大きな展開がもう少し、あっても良かった。それでも、足もとで繋ごうとして川崎の守備網に引っかかっていた前半と比べ、後半は多少、持ち直すことはできた。
余裕を持ってボールを動かしていたわけではないが、攻守で後手に回る場面が多かった前半よりは、個々の出足の一歩が早くなり、パススピードも上がり、敵陣でのプレータイムが増える。余計な邪念が取り払われ、相手ゴールに向かう力強さが出てきた。
ただ、尻に火がつくのが遅かった。それなりにチャンスは作ったが、守備を重視してこの一戦に臨んだ川崎のゴールをこじ開けるには、時間も迫力も足りなかった。
レオ・シルバ、三竿健斗、セルジーニョなど、主力メンバーの負傷離脱はたしかに痛かった。戦力が大きく落ちていたのは事実だが、だからこそ試合に臨むメンバーには意地を見せてほしかったが、『常勝軍団』の肩書を持つチームとしては、あまりにも不甲斐ないスコアレスドローだった。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
◆【鹿島担当コラム】不甲斐ないスコアレスドロー。自滅に近い形でボールを奪われては…(サッカーダイジェスト)