来月のU-17ワールドカップに臨むU-17日本代表のメンバー21名が25日に発表され、都内で行われた記者会見では森山佳郎監督とナショナルチームダイレクターの山本昌邦氏が出席した。今夏優勝したU17アジアカップから、FWの人数は3人から5人に増員。森山監督は「この1か月弱、スタッフで見逃すことなく見てきた。この年代はFWにいい選手が多くて選べなかった。まだ選びたい選手が複数いる」と複雑な胸中を明かした。
U17アジア杯で史上初の2連覇を成し遂げ、日本は3大会連続のU-17W杯出場を決めた。U17アジア杯メンバーは23人で、今大会の登録数は21人と2人減る。その中からメンバーも4人変更。GK小森春輝(浦和ユース)、DF布施克真(日大藤沢高)、FW井上愛簾(広島ユース)、FW徳田誉(鹿島ユース)がメンバー入りを果たした。
特にFW陣は井上、徳田が入った代わりにアジア杯メンバーが抜けることもなく、もともといたFW道脇豊(熊本)、FW名和田我空(神村学園高)、FW高岡伶颯(日章学園高)の3人と合わせて合計5人になった。指揮官は「フィールドプレーヤーが18人なので、どこを削るか何回もミーティングをした」と苦悩を語る一方で「この年代はFWで特長のある選手が多いだけに、それを伸ばさない手はない」と期待を寄せた。
徳田は世代屈指のFWで、U17アジア杯予選では6ゴールと大活躍。しかし怪我で今年の活動は不参加が続き、U17アジア杯も出場できていなかった。だが、10月の「燃ゆる感動かごしま国体」で復活をアピールし、得点ランク2位の7ゴール。茨城県の49年ぶり優勝に大きく貢献してみせた。今回、世界大会で満を持してメンバー入り。森山監督も「アジア杯予選では主力として活躍していて、前回は怪我で来れなかった。もともとこのグループでも中心でやってきた選手が帰ってきた。アジア杯でも(徳田分)1人マイナスで行ったので」と待望の帰還に目を細めた。
一方、井上に関して、森山監督は「この1か月、2か月でかなり力を上げてきた。旬と言えば旬の選手で、やってくれるんじゃないかなという期待を持たせてくれた」と選考の経緯を明かす。指揮官もその存在はもともと把握していたが、8月のBalcom BMW CUPで一気に評価を上げた。サンフレッチェ広島ユースのFWとして、U-17日本代表やU-17ウズベキスタン代表からゴールを連発してみせた。
「僕らに対して強烈なシュートをねじ込んですごく嫌だった。(井上)本人にも(代表に)入ってこいよと発破はかけていた」(森山監督)。そして、井上は9月のフランス遠征に負傷で不参加となった徳田の代わりで初参加。すると、リモージュ国際大会第2戦・イングランド戦でも2ゴールの活躍を残した。
同じ広島ユースのMF中島洋太朗との好連係も評価点のひとつだ。「相性が抜群でお互い気心が知れている。これはそのままW杯で使えると。そういう主力選手との相性の良さもある」(森山監督)。さらに、個の力についても「フィジカル的に強靭とまでは言えないが、戦闘力というかグリグリ体をぶつけていける。メンタリティが良くて、体を張ってボールをなんとか自分のものにして、味方に預けてまた背後に走る。そういう部分がこの1か月、2か月で強烈に上がった」と高く評価した。
U17アジア杯で得点王と最優秀選手に輝いた名和田を筆頭に、アジアの舞台で結果を残した道脇、高岡も据え置いてFWは5人。その分、中盤と守備の人数が減った。その枠を埋める選手として指揮官はDF布施克真(日大藤沢高)を選出。サイドやセンターでもプレーができるポリバレントさに着目し、「ちょっと困ったときにここできるなというところで」布施をメンバーに加えた。
そこまでして前線の枚数を増やした理由について、森山監督は劣勢に陥ったときの戦い方を挙げる。
「一人大きい選手がいて、本当に負けている状況のところでもう一人大きい選手が入るとか。負けているときに負けているままではなくてなんとか殴り倒して、1点取られても2点返しに行くぞみたいな戦いをしようと思ったときに、やっぱり前線の選手のフレッシュさとか、飛び込む迫力とか、そういうものは出していきたい」
過去2大会のメンバーと比較し、森山監督は今回のチームを「伸びしろがある。もしかしたら大化けするし、お前らこんなしょぼい負け方したのかと言わないといけないような可能性も秘めている」と見る。コロナ禍で国際経験が少ない分、世界を相手にしたときの実力は未知数。指揮官は選手たちの背中を力強く押し、W杯で暴れさせるつもりだ。
(取材・文 石川祐介)
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