【ふるさと納税】RS-8 手ぶらでBBQ(2名まで)広がる鹿嶋のビーチ「Sea ...
想像してみよう。大学生で唯一、日本代表に選ばれる。舞台は、あのコパ・アメリカ。そこで、PKのキッカーを務める。
重圧は半端じゃない。多くの人の場合、“外したらどうしよう”“誰か代わりに蹴ってくれないかな”が、きっと頭をよぎる。
今回のコパ・アメリカで唯一、大学生ながらメンバー入りした上田綺世は、違う。ペナルティースポットに立つ彼は、こう考える。
「PKって、シンプルに試合中のどんな場面よりも一番チャンスじゃないですか。ゴールから11mの距離から、誰にも邪魔されずに、自分のタイミングでシュートを打てる。ワクワクしかないですし、その状況を楽しめない理由がわからない。もちろん重圧はありますけど、FWとしてそこから逃げるのは、絶対に違うと思います」
大学2年で鹿島内定、スカウトも好評価。
法政大学サッカー部に所属する上田は、まだ2年生だった今年2月の時点で、2021年度に鹿島アントラーズに加入することが内定した。入団内定会見の場で、鹿島の椎本邦一スカウト担当部長は、その能力の高さをこう語っている。
「鹿島学園高時代も点を取る良いFWだなと思っていたけど、大学に入って体もできてかなり良くなった。総理大臣杯とかでも取っていたので、とにかく点を取るやつだなと。FWとして一番大事なことで、その感覚は教えられる部分ではないですし、センスの部分。『そこにいるんだ』というのを持っている」
6歳のころ、父親が社会人チームの試合でハットトリックを達成する姿を見て以来、点取り屋一筋だ。厳しい父とのマンツーマン練習では、野球場のピッチャーマウンドに立つ父から、バッターボックスに立つ綺世少年へ全力でボールが投げつけられ、恐怖心に耐えた。ロングパスの練習では、父があえてあらぬ方向に蹴るボールを全力疾走で追いかけた。
では、「教えられる部分ではない」ゴールハンターとしての感覚やセンスは、どのようにして身に付けたのか。
自分のゴールシーンを何度も見る。
「僕は自分の成功体験をすごく大事にしています。だから、小さい頃から自分のゴールシーンの映像を何度も見てきました。ゴール前では、考える時間はありません。咄嗟の感覚やセンスが大事になる。自分のゴールシーンを見ていると、僕自身でも思いもしない動きをしていたり、思っていた以上に高く跳んでヘディングしていたりする。
素直に自分でも“うまいな”って思うこともありますからね。映像を見ることで単純にモチベーションも上がりますし、その記憶と感覚を参考にして、次のゴールにもつなげているイメージです」
そんな生粋の点取り屋も、エリート街道を駆け抜けて鹿島と日本代表に辿り着いたわけではない。中学時代は鹿島ジュニアユース・ノルテに所属するも、ユース昇格はならず。高校は茨城県外の強豪高でプレーすることを望んだが、叶わなかった。
「小学生の頃は、今以上に負けず嫌いで、“俺は世界一足が速い”“どんな相手からも点を取れるぜ”って、謎の自信があったんです。それが、上のレベルに行くにつれて、自分と並ぶ選手や、自分より上に行く選手を知りました。その過程で、絶対に逆転してやる、この悔しさを晴らすんだという反骨心が芽生えた気がしますね」
理想とするFW像が、いかにも“反骨のストライカー”らしい。見栄えにはこだわらない。実を取る。試合中、上田は自分のシュートがゴールネットを揺らす様子を、ほとんど見ていない。
「兵器のような選手になりたい」
「僕は綺麗なゴールやスーパーゴールは求めていなくて、入ればいいと思っているんです。シュートがGKの正面に飛んだとしても、入ればいい。だから、僕がゴールを確信するのは、GKがシュートに触れず、ボールが手の横をすり抜ける瞬間です。その瞬間の感覚を得るために、シュート練習を続けています。
理想は、点を取ることに特化した、いわば“兵器”のような選手になりたいんです。フィジカルが強いとか、テクニックが優れているとかじゃなくて、これまでにはいない存在。どんな状況でも、どんな環境でも点を取れる選手でありたいですね。
例えば今、中国の聞いたこともないようなクラブで、1試合だけプレーすることになったとしても、そこで点を取りたい」
ボールが来れば、小学生でも点を獲れる。
森保ジャパンの“新兵器”は、いきなりコパ・アメリカの大舞台でベールを脱ぐ。
「今まで経験したことのないレベルの大会ですし、試合に出られるかもわからない。得点力やヘディングといった、僕の武器が全く通用しない可能性もあります。じゃあ、それでお手上げなのか、そこで諦めるのかと言えば、そうじゃない。チャンスを得たときに、まずは自分が持っている力をすべて出すことが重要だと思っています。
自分の武器が全く通用しなくても、それはそれで面白い。僕の理想が、どんな状況、環境でも点を取る選手である以上、ヘディングも、スピードも、フィジカルも通用しなくても、点を取りたい。本物の得点力と、運を持っている人ならば、たとえ体が弱くても点を取ると思うんです。
極端な話、コパ・アメリカに小学生が出場したとしても、こぼれ球さえ転がってくれば、ゴールのチャンスはある。だからこそ、言い訳はできませんし、点を取る手段はいくらでもあるはずです。そこに全力でトライする。その意味でコパ・アメリカは、今の僕がどんな存在なのかを計れる大会だと思っています」
想像してみよう。大学生で唯一、日本代表に選ばれる。舞台は、あのコパ・アメリカ。そこで本気のガリー・メデル(チリ)やディエゴ・ゴディン(ウルグアイ)が、シュートを食い止めようと襲い掛かってくる。
圧力は半端じゃない。多くの人の場合、“ミスしたらどうしよう”“無難にプレーしよう”が、きっと頭をよぎる。
上田綺世は、違う。どれだけボールを失ったとしても、一瞬にかける。そこに、ゴールの匂いは漂う。