DVDでマスター! サッカー 鉄壁ディフェンス 学研スポーツブックス / 岩政大...
MFの土居聖真は、攻撃の起点としてアシスト、得点と鹿島アントラーズの攻撃陣を引っ張っている。「見え方が変わった」と言う土居にあったブレイクスルーの瞬間とは? そしてピッチで考える「攻撃の原則」とは――。ピッチレベルの視点をメルマガやlive配信などで紹介する『岩政大樹 PITCH LEVELラボ』の対談動画で語った。その一部を編集して紹介する後編。
岩政大樹が聞く「攻撃」の原則<後編>
クラブワールドカップで開いた「眼」
岩政大樹(以下、岩政):相手のことも自分たちのことも見ながらプレーする感覚というのは、いつ頃から整理されてきましたか。
土居聖真(以下、土居):去年の終わりくらいですね。
岩政:えっ、そんな最近?
土居:クラブワールドカップに出たときに見えるものだったり、“見る観点”というものがすごく変わりました。それで今年のキャンプから、感触すごくいいな、 と。考えていること――ああしてほしい、ああしたいこうしたい――というのと、自分の足下の技術やプレーがリンクすることが多くなってきた。満足のいく試合、満足のいくプレーやコンビネーションみたいなものが――真ん中の位置でプレーするようになってからですが――今年は多くなってきたかなと思います。
岩政:いわゆるブレイクスルーに至るまでにいろいろと紆余曲折があったと思います。たどり着くまでに、どんなことを考えてきましたか。
土居:それまでは、良くも悪くも、いい子ちゃんのプレーばかりしていました。年齢も上になってきて(現在27歳)、(小笠原)満男さんが引退したり、主力選手が抜けたりしてきたなかで、選手を引っ張っていくために、どういうことをしますか、どういうことを心がけますか、と言われるのが、正直、うるさいな、と思っていたんです。最初は、僕が引っ張っていかなければいけない、鹿島のために先頭に立って・・・という考えばかりだったんですが、でも、まだしなくてもいいんじゃないかってパッと思ったんです。
まだ上の人もいる。遠藤さんも、内田(篤人)さんもリーダーシップを取ってくれている。曽ヶ端(準)さんもそうですけど、そういうことをやってくれる人がたくさんいるんで、若手のためにとか、チームのためにとか、っていうのは、もうひとつ優先順位を下げてもいいんじゃないかなって。そういうところから、なんか変わってきましたね。
逆算してプレーできるようになった
岩政:その感覚はすごくよく分かります。最初にチームありきになると、自分のプレーがこじんまりしてしまって、最終的にチームのためにならなくなる。
土居:そう、そうなんですよ。
岩政:プロとして、まず、自分のプレーの責任というところにフォーカスがいっていると、結果、プレーもよくなって、最終的にはチームにも還元される。個人か、チームか。どっちに目を向けるかで、全然プレーが変わってきますよね?
土居:ポジションもあると思うんですけど、僕は前目のポジションなんで、献身さだったり、ハードワークというところよりは、やっぱり決定的なシーンにつながるプレーだったり、ゴールの起点といったプレーをしたいっていう気持ちもあるし、そういうのができると思っていたんで。まずはそこじゃないかなって。それがチームのためになるんじゃないかって思うようになって。ただ走り回ってボールを追いかけて守備をするっていうのも、もちろん大事なんですけど、そういうのはほかの選手でもできるんじゃないかなって。僕しかできないことを整理したというか考えて・・・。
結果、それでいい方向ばかりに転がっていってくれたんで、これだ!って思いました。
岩政:逆に言うと、ゴール前で仕事をするために逆算していろんなプレーを選べるようになった、ということですか。
土居:そうですね。
岩政:中盤でガチャガチャするよりも、ゴール前でなにをするか、ということに・・・。
土居:ゴール前に行くために逆算してどういうことをしなければいけないのか、というところにたどり着いたというか、整理できるようになりました。ただ、ゴール前でボールを待ってて、くれくれ!って言って、シュートを打つっていうのはできないから、ゴール前にいかに勢いをもって、シュートを打てるようにするか。これは、(岩政)大樹さんからもらったアドバイスもあるんです(笑)。
岩政:おー(笑)。よく覚えていますね。
土居:僕がプロ2、3年目で試合に出れないとき、「お前はどこで仕事したいんだ?」と聞かれて。ここ(ペナルティエリア左角)からカットインしてシュートを打つのにも、どう受けて打つのか? っていうことをいろいろと教えてもらいました。ここに至るまでのプレーが大事なんだって。(岩政)大樹さんから言われてから心がけています。
セルジーニョとか、(伊藤)翔くんとか、(上田)綺世とかはワンタッチゴーラーだと思うんで、彼らはここ(ゴール前)で駆け引きをしていいと思うんですよ。でも、僕はそういう選手じゃない。それだけの選手じゃないと思うし、そこに至るまでのプレーが好きっていうのもあるんですよね。
岩政:俺のイメージだと、サイドの比較的スペースのあるところでプレーするよりも、ゴール前のゴチャゴチャしているところのほうがプレーしやすいように見えるんですが。
CBがこちらに来てるということは・・・
土居:これは、ボールの出し手の問題になるんですが、たとえば、ここらへん(ペナルティエリア手前)にいる時、僕はゴールを奪うためのプレーをすごくイメージしていますよ。自分でボールを持ってドリブルで抜くことはできないから、後ろからボールが来たら、スルーしてFWに当てて裏へ抜け出そうとか、そんなイメージをもって勝負しようって、すごく考えているんですけどね。でも、どうしても狭いし、人(敵)もいるから、自分に出しても潰されるだろうなっていう気持ちがあると思うんですよ、出し手からしたら。
岩政:ある程度、周りに敵がいてもボールを入れてほしいと?
土居:そう思うときは多々あるんですけど、なかなか入らない。入った時は勝負していて、今シーズンは僕が点を取るんじゃなくてアシストがすごく多いんです。身体と頭がすごくリンクしているかなって思いますね。
岩政:いわゆる「ハーフスペース」――ピッチを縦5分割し、左右2列目のエリア――にボールが入った時、どんなところを見ていますか。センターバックか、スペースか、それとも、味方か・・・。
土居:やっぱり相手を見ますね。たとえば、僕だったら相手のボランチが付いてくることが多いんですが、センターバックが付いてきたらチャンスだ、とか。ボランチが付いてきたら、勝負してかわしても、まだセンターバックが後ろにいるんで、簡単に逆サイドに展開したいすることが多いですね。センターバックの前でボールを受けた時は、おっ、センターバックだ! チャンスだって思いますね。
岩政:ボールを受ける際、どのポジションの選手が来るのか、把握しているんですね?
土居:はい、見ています。
岩政:それが見えない選手も多いですから。ボールを止めることに集中していて。
土居:周りが全然見えていないときも、あれ、この選手は逆サイドのセンターバックなのにこっちまで付いてきているぞ、ってことは・・・。
岩政:そのセンターバックがいたスペースが空いているだろうと?
土居:そうやって想像して、感覚で(そのスペースに)パスを出してみようかなって思いますね。うちのチームはゴール前に人数をかけるので、逆サイドのスペースに入ってくれる選手が多いので、そういうところも見れるようになりました。
岩政:なるほど。見えるようになったんですね!(笑)。
土居:なりましたね(笑)。この前の試合(J1リーグ第27節・北海道コンサドーレ札幌戦)でも、(前半41分に)中盤の右サイドでセルジーニョがボールを持ち出して、3バックの真ん中のセンターバックがマークに行ったシーンがあったんですが、それで僕がそのセンターバックの裏のスペースに走り込んだら、右のセンターバックが付いてきたんで、そのままシュートを打っても良かったんですが『(上田)綺世がフリーなはず』と思って、左サイド=ゴール前へヒールキックで落としたんです。
岩政:感覚なんだね!
土居:はい、感覚です。
岩政:逆のセンターバックが付いてきているからスペースがあるだろうと?
土居:絶対に空いているだろうと思って。その時は見えてなかったんですけど、感覚で出したらドフリーでした。(上田選手の)シュートは外れてしまいましたが(苦笑)、あれは僕のなかで理想的なプレーのひとつですね。