日刊鹿島アントラーズニュース
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2013年9月18日水曜日
◇「第1S」と「第2S」で明暗/Jデータ(ニッカン)
http://www.nikkansports.com/soccer/news/p-sc-tp1-20130917-1190546.html
今季のJ1は「第1ステージ」と「第2ステージ」で明暗が分かれている(以下S=ステージ)。第17節までの前半戦終了時で首位だった広島が、第18節以降の後半戦の成績だけなら14位。同じく2位ターンの大宮も後半戦だけの成績は17位と失速している。一方、前半戦13位の新潟と同15位の鳥栖が後半戦で躍進。ともに5勝1分け2敗の勝ち点16、得失点差で新潟1位、鳥栖2位となっている。
Jリーグは、15年シーズンからJ1を前後期の2S制に分け、その後にポストシーズン(PS)を実施する方針を固めている。今季の現時点の成績を、その新方式に当てはめてシミュレーションしてみた。
広島と大宮は第2Sで下位に低迷しながらも、第1SでPSの出場権をすでに取得済み。PSに出場できる年間総合勝ち点トップは横浜(前期3位、後期6位)。同2位の浦和は前後期ともに4位と安定しているが、今のままでは出場圏外になる。一方、年間11位の新潟と同14位の鳥栖は、現行の1S制だと優勝は厳しい状況にあるが、新方式だとPSの出場権を獲得し、年間王者に就く可能性を残す。【石川秀和】
◇[緊急インタビュー]Jリーグ、2ステージ制導入の真意を問う 中西大介(Jリーグ競技・事業本部長インタビュー)(サッカーキング)
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/135115.html?pn=1
JリーグがJ1のリーグ戦開催方式を変更するべく調整を進めている。
現在のJ1は全18クラブがホーム&アウェイの2回戦総当たりによる年間1リーグ制を戦い、最も多くの勝ち点を得たクラブが頂点に立つというシステムを採用している。これは欧州のトップリーグにおけるベーシックな大会方式でもある。
Jリーグは1993年の開幕当初、サントリーシリーズ(ファーストステージ)とニコスシリーズ(セカンドステージ)という2ステージ制を採用し、それぞれの優勝チームがチャンピオンシップで対戦。その勝者が年間王者に輝いていた。
しかし、2ステージ制にはいびつな事例も発生していた。1999年の清水エスパルス、2000年の柏レイソル、2001年のジュビロ磐田、2004年の浦和レッズはシーズン最多勝ち点を獲得しながら年間王者になることはできず。2000年の柏に至ってはステージ優勝を果たせず、チャンピオンシップの出場権すら得ることもできなかった。2001年の磐田は年間勝ち点で2位に17点という大差をつけながら涙を呑んだ。また、2002年にはジュビロ磐田が、2003年には横浜F・マリノスがステージを連覇し、チャンピオンシップが開催されないシーズンもあった。
そして2005年から、各チームに平等な大会フォーマットで真のチャンピオンを決めることができる現在の1ステージ制が導入された経緯がある。
では、なぜ今、Jリーグは再びフォーマットの見直しを進めているのだろうか。今回の報道を受け、Jクラブのサポーターはスタジアムで大会方式変更に反対する横断幕を出すなど、全国各地で議論が巻き起こっている。改革を推し進める理由と真意を探るべく、Jリーグの中西大介競技・事業本部長を直撃した。
――Jリーグのファンやサポーターの皆さんは、各種メディアからの報道で大会方式の変更を目にしていると思います。まず、今回の変更にどんな意図が込められているのかを説明いただけますか?
中西大介 僕らはJリーグの試合クオリティに一定の自信を持っています。いい試合をたくさんできるようになりましたし、東アジアカップの優勝を見ても分かるように、Jリーグでプレーする選手のクオリティは相当高い。世界各国のリーグと比較しても、戦術的に相当練られているゲームをしている。実際に試合を見てもらえれば、非常に喜んでもらえるゲームが多いと思います。ただ、最近はいい試合を繰り広げていることを多くの皆さんに伝えたり、分かっていただける機会が少なくなってきていました。今回の変更は、そういった機会を増やすためのきっかけになればと考えたのが一番の理由です。Jリーグを応援してくれているファン・サポーターの皆さんや毎週報道しているメディアの方々からは、「Jリーグのレベルは上がっているよね」と言われますが、Jリーグに普段接していない方に聞くと、選手の海外移籍でJリーグのクオリティが落ちたり、レベルがむしろ下がっていると思われているのではないかと。しかし、決してそういうことはないと思っていて、これだけ多くの選手が海外へ移籍しても、次々にいい選手が出てくるリーグのほうが珍しいと思っています。とにかくJリーグの試合が面白いということをもっと多くの方に分かってもらいたいところが一番大きいですね。
――現在、多くの日本人選手がヨーロッパへ移籍して、高い確率でチームの主力になって成功しています。それが日本人選手のレベルの高さを証明していますが、その一方でさらに新しい選手たちがJリーグで活躍しています。ただ、スタジアムに毎週末、足を運んでいるファンの満足度は高くなる一方、伸びしろがなくなってきているところに危機感を感じているのでしょうか。
中西大介 まさにそうですね。以前、ブラジルやアルゼンチンの選手が次々にヨーロッパへ移籍するにもかかわらず、どんどん新しい選手が出てくることを本当にすごいと思い、憧れの目で見ていました。そして今、徐々に日本がそういう形になってきています。育成部門の努力や環境整備の成果はすごいと思います。その成果を多くの方々に知ってもらいたいですし、今のJリーグから満足度を得ているファンの皆さんの仲間にも良さを知ってもらって、スタジアムへ足を運んでいただければ、もっとスタジアムが埋まる。そうなれば今のファンももっと楽しめますよね。そういった空間作りを含め、新しくJリーグを見てくれる方を増やすことが、新しいファンにとっても今のファンの両方にとっても幸福なことだと思います。ですから、そのための政策を長い間、考えてきました。
――それで今回の大会方式変更に至ったわけですが、2ステージ制とプレーオフを実施することの一番の目的はどこにあるのでしょうか。
中西大介 最終的な目標は、継続的な日本サッカーの成長です。それは試合のクオリティとファンに見ていただける観戦環境、つまりスタジアムの整備が重要だと思っています。ただし、一気にそこへ行けるわけではありません。まず、成長が鈍化している現状をいったん止めることで、更なる成長を遂げるための原資を作りたい。そして優秀な選手を生み出し続けるための投資を続けることの2つが重要だと考えています。これは最終目的につながっていると思っています。決して大会方式の変更自体が目的ではなく、あくまでも成長を続けるための手段だと思っています。もちろん手段ではありますが、多くの方により楽しんでもらえる方法がいいと考えてきました。
――これまでと違った取り組みを実施することで、新たな楽しみを提供したいという思いがあるのでしょうか。
中西大介 新たな楽しみを作って、それを楽しんでいただきたいという思いは当然あります。例えば東アジアカップの日韓戦を思い出してもらいたいんですが、選手たちがあれだけ団結して、あの1試合に集中することで韓国の猛攻を耐えることができた。それはやはり、多くの人に見てもらっていたり、日の丸を背負っているからこそだと思います。それはクラブの選手でも同じですよね。たくさんの人に見られていて、クラブのエンブレムに誇りを持って応援してもらい、満員の観衆に囲まれて戦うという舞台をどれだけ作ってあげられるかも大切だと思っています。ただ、今のJリーグで大きなスタジアムが埋め尽くされることは、ほとんどなくなっています。満員のスタジアムで、ものすごく熱い試合を見てもらえれば、Jリーグは素晴らしいコンテンツですし、それに値するレベルは持っています。それを実現するためには、Jリーグのクオリティが高いと分かるモデルケースの試合が必要だと感じているので、今回の改革が必要だと思います。
――そういった前提を踏まえて、Jリーグ各クラブの意見をヒアリングし、現状への危機感を共有しながら、戦略会議などでJリーグのあり方や将来について議論を重ねてきたわけですよね。そして9月11日に行われたJ1・J2合同実行委員会で、2015シーズンから前後期の2ステージ制移行とスーパーステージ導入が同意されました。ただ、現在、各地のサポーターからは2ステージ制に反対する声が上がっています。平等なリーグ戦の大会方式を考えると、1リーグ制が理想的だと思いますが、実行委員会ではJクラブから反対意見は出なかったのでしょうか。
中西大介 もちろん1リーグ制が理想であることは、JリーグもJクラブも共通認識として持っています。ただ、先ほどから申し上げているように、Jリーグ全体が更なる成長を遂げるために、新しい取り組みを導入することが必要であると考えました。今回の実行委員会においては、西日本の2クラブだけは1ステージ制を消化してのプレーオフを提案しましたが、プレーオフ制の導入については、全会一致で承認されています。確かに当初は反対意見が多かったですが、説明を続けてきたことで危機感を共有することができてきた。反対意見があるのは理解できますが、プレーオフ制の導入に反対するならば、現状を打破するだけの代案が必要になりますよね。いろいろな意見がある中で、我々も「じゃあどうすればいいのか」という議論を続けてきました。ここは覚悟を持って臨み、成功させるしかないわけです。これまでは、できる限り、Jクラブにも選手たちにも危機感を共有することなく進んできましたが、何かを変えなければならないという危機感は、現時点ではクラブとは共有できていると感じています。もちろん、これまで一緒に歩んできたサポーターの皆さんとも危機感を共有しながら、Jリーグを前向きな形で大きくしていきたいので、どこかでそういう場を作りたいとは考えています。
――全国各地のサポーターがスタジアムで2ステージ制導入反対の横断幕を出しています。Jリーグとして今回のポストシーズン制導入に際し、コア層を含むファンの声を集めたりはしたのでしょうか。
中西大介 Jリーグでは観戦回数による「ポストシーズン制に対する評価」に関して、インターネット調査を実施しました。6万110人に対する調査です。観戦頻度が多いほど反対の傾向が強くなり、年間10回以下の方では統計的に賛成が多くなっています。一番右端の数字が各クラスターの回答者数で、これを合計すると6万110人になります。11~20回、21回以上の観戦回数に当てはまる方ですと、アウェイにも行っているコア層が多くなるので反対数は増えますが、この観戦頻度に入ってくるお客様は、2つの今回の調査では544人。つまり全体の0.9パーセントとなります。このコア層がJリーグとともに歩んでくれているファン・サポーターと言えますが、絶対数が少ないからといって反対意見を無視しているのではなく、「興味を持たなかった」や「知らなかった」という層が圧倒的大多数であることをサッカー界全体としての大きな問題だと捉えたわけです。これまでの1リーグ制がベストであることは、Jリーグ側もクラブも共通認識として持っています。ただ、本当の意味で日本サッカー界全体を発展させていくためには、興味を持たなかった圧倒的大多数にアプローチしていくことも必要で、この調査結果から抱いた危機感も、今回の改革案を進める一因になっています。
年間観戦回数知らない賛成反対どちらでもない人数1回 49.2% 13.0% 13.2% 24.6% 2,242
2~3回 30.9% 20.7% 20.2% 28.1% 2,260
4~6回 18.8% 30.5% 27.5% 23.1% 1,072
7~10回 13.6% 32.3% 29.4% 24.7% 477
11~20回 10.8% 22.0% 39.4% 27.9% 287
21回以上 7.4% 21.0% 51.4% 20.2% 257
観戦しようと考えたが、結局一度も観戦せず 43.4% 13.6% 12.4% 30.6% 6,184
観戦しようとまでは考えなかったが、興味あり 60.4% 6.6% 6.5% 26.5% 10,894
興味も持たなかった 84.1% 1.2% 1.1% 13.7% 36,437
――今後、9月17日のJリーグ理事会での承認を経てポストシーズン制導入が正式決定となるわけですが、「分かりにくい」という声もあるので、ここで大会方式を確認させてください。リーグ戦を前後期の2ステージに分け、各ステージで2位以内に入ったクラブがスーパーステージへ進出。そこで優勝したクラブが、年間勝ち点1位となったクラブとチャンピオンシップを行い、年間チャンピオンを決めることになります。ただ、年間勝ち点1位クラブがスーパーステージ進出の権利を得ていた場合の代替案や、AFCチャンピオンズリーグの出場権、賞金額等に関しては、今後も継続して議論していくことになっています。まずは2ステージ制とスーパーステージを導入する方向性を固め、ここから詳細を詰めていくわけですね。2ステージ制とは言え、2004シーズンまで採用していた形式とは異なり、世界中のリーグを参考されたと聞きました。
中西大介 今回のスーパーステージ導入にあたって、まずは世界50カ国のリーグの形式を改めて調べました。何かを基準にしないといけないので、FIFAランキングで上位50カ国のやり方を全部調べて、なぜその国がこういう方式を取っているのかまで考察しました。そうすることで、いろいろなことが見えてきたのも事実です。今回、日本はどこかの国を真似するのではなく、これまでにない形にトライしようとしています。今の日本サッカーが置かれている環境や、過去の2ステージ制の反省、あるいは日本のメディア環境などを考慮した上で、オリジナルのもので進めようと考えました。
――それがスーパーステージであり、チャンピオンシップということですね。確かにプレーオフを含めて山場が増えますし、2ステージ制にすることで年間に2度、優勝争いが生まれますから、必然的に注目度の高い試合は増えると思われます。
中西大介 そうやって、より注目を集めることで、選手たちの力を今まで以上に引っ張り出すことができ、選手としての可能性も高められる舞台を作ることも非常に大切な仕事だと感じています。昔の2ステージ制とチャンピオンシップの大会方式が良かったかどうかではなく、例えば鹿島アントラーズとジュビロ磐田の選手たちには、チャンピオンシップを戦ったことで成長した選手がたくさんいると思いますし、実際にプレーした選手からも同様の声を聞いています。重圧を背負って戦う日本代表戦が選手の成長を促すことはありますが、クラブシーンであっても満員の県立カシマサッカースタジアムで小笠原満男選手や中田浩二選手がどれだけ成長したかは計り知れないものがあると思います。そういったクラブにおける晴れ舞台みたいな試合があることで、日本サッカー全体の成長や選手にとってもプラスになると感じています。
――近年、日本ではプロ野球もプレーオフを導入しています。モデルケースとして参考にされたのでしょうか。
中西大介 例えば、イングランドはテレビに依存せずにサッカーが根づいている期間が長かったりします。テレビに依存しないで基盤を築き、その後にテレビでさらに成長しました。最初からメディアを意識して成長してきたアメリカのスポーツとは違いますよね。日本はもともと無料多チャンネルのテレビがあって、プロ野球はたくさんの方に楽しんでもらうことをベースに成り立ってきました。Jリーグはそれに準じるのではなく、スタジアムに足を運んでくれるファンを一番重要視してきましたが、日本のメディア環境では地上波で放送されなくなると、すごく価値が落ちるように思われてしまうことも事実です。裾野を拡大しなければいけないJリーグにとって、その価値が落ちてしまうことは得策ではないと思っています。日本のメディア環境を考え、現在のファンのことも大切にしようと意識した上で考えたシステムではあります。
――これまでの2ステージ制では、一つのクラブがステージを連覇した場合、チャンピオンシップは開催されませんでした。詳細はこれから決定するとのことですが、たすき掛けで各ステージの1位と2位が戦い、その勝者同士が対戦するスーパーステージを経て、年間最大勝ち点を獲得したクラブとのチャンピオンシップを開催することになります。これだと最大4試合になりますが、注目されることを目的として制度を変えるわけですから、どんな展開になっても4試合実施を確保したほうがいいと個人的には思います。昔、2年連続して完全優勝を成し遂げたクラブが出て、チャンピオンシップが開催されなかった時は、どこか寂しい感じになりましたから。
中西大介 今回は同じクラブが両ステージで優勝した場合でも、プレーオフを実施するつもりです。ただ、状況によってセミファイナルがなくなる可能性があるので、年間勝ち点が上のクラブを参加させたり、最初から3位のクラブが出場できるようにするなど、すでにいろいろな意見が出ています。そこの見直しはあるかもしれません。詳細な大会方式はこれから詰めていくことになります。
――先ほどもおっしゃっていましたが、これはあくまでもJリーグを右肩上がりにする手段の一案で、リーグを取り巻く状況が変わって資金面や人気にメドが立ったら、1リーグ制に戻す可能性もあるということですよね?
中西大介 もちろんです。1リーグ制が理想であることは、全員の共通認識ですから。まずそれだけの力を蓄えたい。その基準をどの数字にするかも、ちゃんとファンの皆さんに共有したいと思っています。例えば、2万人以上の平均入場者数がJ1で3年続いたら、ちゃんと安定軌道に乗ったことになりますし、それは世界の5大リーグに決して劣らない。Jリーグでは今でも重要な試合は大きなスタジアムが満員になっているので、可能性は十分にあります。「そういう状況が生まれた時には1リーグ制に戻そう」という方向性を最初から共有して、基準を決めてスタートするのもありかもしれません。
――Jリーグ全体の総意としても、そこを目指してやっていこう、というわけですね。
中西大介 これから作りたいのは、今回の大会形式変更における目標のKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)です。簡単に言うと、目指すべき数字をどこにするのか。それはJリーグが持つ数字と各クラブが持つ数字を共有して、サポーターの皆さんにもできる限り共有してもらって、どうなれば成長の軌道に乗ったと言えるのかの目標を立てたいと考えています。そのためにサポーターの皆さんには一人でも多くのファンを連れてきてもらいたいですし、そういった呼びかけもしていきたいですね。
――そこがまさに一体だと思います。実行委員会後のメディア説明会でもおっしゃっていたとおり、大会システムだけを変えても本当の意味では変わらないですからね。Jリーグとして、その他にも取り組もうと思っていることがあるのでしょうか。先ほどの説明では各クラブにおける広報のスタンスも重要になってくると話していましたが、広報のスタンスだけでなく、強化部や選手のスタンスも変えていく必要があるかと思います。
中西大介 危機感の共有レベルをそういうところまで高めていきたいと思っています。リーグの人気がなくなれば、クラブの収入が減る。そうなれば強化部の仕事も難しくなってしまいかねません。Jリーグとしては、そうならないようにしたい。来場者データをきちんと取って、クラブにおける顧客のデータ化と、プッシュ型のマーケティングをできるような仕組みを作りたい。日本サッカー協会と協力してやらなければならないこともこれからいっぱいあります。それから何と言っても若手の育成です。ここは絶対に途絶えさせてはいけない。一番大事なことだと考えています。
――そういう意味では2020年の東京オリンピックの開催決定はすごく大きいですよね。なかなか先が見えない世の中で、7年後に明確な目標ができました。選手の強化もしなければならないと思います。
中西大介 東京オリンピックの誘致決定は本当に大きいです。ものすごい目標ができましたから。今までで最高の黄金世代を作れる可能性があるし、そうしければいけないですよね。そこを担うタレントを預かっているのはJクラブなわけです。選手育成は指導方法や試合環境を整えることも大事ですけど、それにはやはり一定のお金がかかります。ドイツはそこにすごく予算を割き、いろいろな工夫をしました。予算と工夫の両方が必要なわけです。そういう視点からしても、日本は育成に関わるお金を絶対に絶やしてはいけないし、むしろ増やさなければならない。ドイツよりも育成環境が遅れているならば、我々には、より一層の努力が必要になります。日本は今まで増やしたお金でレフェリーをプロ化したり、育成年代の13歳、14歳のリーグを作ったりしてきました。どちらも相当な予算が必要だったわけですが、そういうことに優先してお金を使ってきたことが今の日本サッカーの成長につながっているわけだから、それは忘れてはいけないですよね。育成に関しての投資はリーグ全体のものと個々のクラブのものがあるので、今はその両方が必要となります。育成においても競争は競争なので、クラブが必要だと思うような環境を整えることはJリーグの仕事。そのための原資が必要なわけです。
――実行委員会後の説明会で、スーパーステージ制の導入に伴って、10億円以上の収入増が期待できるとおっしゃっていました。大会方式の変更は今後への原資を作ることが大きな目的だと思いますが、それは放映権料とスポンサー料、入場料収入から推測される金額ですか?
中西大介 そうですね。ここからJリーグとしての価値を高めて、その収入増をさらにプラスに転じさせる必要があります。
――2ステージ制にすることで、J1の優勝争いが注目を集めたり、優勝を経験するクラブの数も増える可能性があります。
中西大介 J1のクラブ数を18のままキープして、3クラブの入れ替えを続けることは、1部リーグを経験できるクラブ数を増やしたいという目的があります。ドイツではブンデスリーガ1部を経験したことのあるクラブが50以上もある。それがクラブの実績になるわけです。優勝の喜びについても同じことが言えます。Jリーグが開幕当初に2ステージ制を導入した理由の一つに、最初は地元に優勝の喜びを味わえる機会を増やしたほうがいいという発想がありました。それはチーム数が増えて優勝することが難しくなった今でも共通していることじゃないかなと思っています。今シーズンであれば、大宮アルディージャがファーストステージを取っていたかもしれないですよね。
――そういった栄光を手にすることによって、次に向けて頑張れる部分はありますよね。
中西大介 それもあります。例えば、大分トリニータは昨シーズン終盤、J1昇格への条件にクラブ経営の改善が求められた際、「6位に入ればまたJ1に昇格できるかもしれない」という状況になったところで大分県民からの募金で約1億円が集まった。ヤマザキナビスコカップの優勝やJ1での思い出がなかったら、募金は集まっていなかったかもしれません。タイトルの価値を安売りすることにつながるんじゃないかという批判もあるかもしれないですが、一度のタイトルがホームタウンにとってどれだけ重いかを感じさせられる事例でした。そういった経緯もあって、より多くの地域で優勝の喜びを味わえるようにしたいと考えたわけです。結果的にはどうなるかは分かりませんが、チャンスがあるということは大切なことのようにも思えます。大会方式に100パーセントのものはなくて、それぞれにいいところと悪いところがあるけれども、今はいいところをたくさんの方々に一緒に楽しんでもらいたいですね。
――毎週末、足を運ぶような熱心なファン・サポーターの皆さんにも現状を理解し、危機感を共有してもらって、一緒にJリーグの価値を適性なものに高めるために大会方式の変更を受けて入れてもらい、一緒に盛り上げていきたいということですね。
中西大介 そうですね。ファンの皆さんが愛しているものは、もっと多くの人に愛されていいはずなのに、今の状況に留まっているわけですから。決して今まで一緒に歩んできたファン・サポーターの皆さんを裏切るわけではなく、新しいファンを迎え入れてもらって、さらに大きなものにしていきたいと考えています。そのためには、まず皆さんが愛しているJリーグへの過小評価を適性に戻すというプロセスが必要であることを理解していただきたい。それが将来的な発展につながると思っています。そこが適正になれば、1リーグ制に戻したいと我々Jリーグ関係者も皆、考えているわけですから。
――今のうちに手を打っておかなければ、間に合わなくなるという危機感があると。
中西大介 そういうことです。本当に苦しくなって首が回らなくなってからでは遅いですから。近年、営業収入の微減が続いていますが、一気にダメになるビジネスがいっぱいあったわけです。Jリーグはそうなりたくないし、現状の分析数字を各クラブの実行委員に見てもらって、危機感を共有することができたからこそ、大会方式の変更がほぼ全会一致で承認されたのだと感じています。
――まだ詳細を詰める必要がありますが、各Jクラブにはしっかりと危機感が共有されたわけですね。
中西大介 各クラブの実行委員にはご理解いただけましたが、先ほども申し上げましたように、今後は各クラブの強化スタッフや選手にも理解してもらう必要があります。各クラブの選手会も、日本プロサッカー選手会会長の佐藤寿人選手あたりと話すと相当理解してもらえているようですが、もっと広く分かってもらえるようにするために、彼らと一緒に行動していくことも必要になると思います。選手たちにもしっかりと理解してもらって、ピッチでも今まで以上に全力のプレーを見せてもらいたい。Jリーグも、Jクラブも、クラブスタッフも、選手も、みんなでしっかりとして覚悟を持ってJリーグを盛り上げていく必要がある。サポーターの皆さんには、ぜひともその後押しをお願いしたいと思っています。
現在のJ1は全18クラブがホーム&アウェイの2回戦総当たりによる年間1リーグ制を戦い、最も多くの勝ち点を得たクラブが頂点に立つというシステムを採用している。これは欧州のトップリーグにおけるベーシックな大会方式でもある。
Jリーグは1993年の開幕当初、サントリーシリーズ(ファーストステージ)とニコスシリーズ(セカンドステージ)という2ステージ制を採用し、それぞれの優勝チームがチャンピオンシップで対戦。その勝者が年間王者に輝いていた。
しかし、2ステージ制にはいびつな事例も発生していた。1999年の清水エスパルス、2000年の柏レイソル、2001年のジュビロ磐田、2004年の浦和レッズはシーズン最多勝ち点を獲得しながら年間王者になることはできず。2000年の柏に至ってはステージ優勝を果たせず、チャンピオンシップの出場権すら得ることもできなかった。2001年の磐田は年間勝ち点で2位に17点という大差をつけながら涙を呑んだ。また、2002年にはジュビロ磐田が、2003年には横浜F・マリノスがステージを連覇し、チャンピオンシップが開催されないシーズンもあった。
そして2005年から、各チームに平等な大会フォーマットで真のチャンピオンを決めることができる現在の1ステージ制が導入された経緯がある。
では、なぜ今、Jリーグは再びフォーマットの見直しを進めているのだろうか。今回の報道を受け、Jクラブのサポーターはスタジアムで大会方式変更に反対する横断幕を出すなど、全国各地で議論が巻き起こっている。改革を推し進める理由と真意を探るべく、Jリーグの中西大介競技・事業本部長を直撃した。
――Jリーグのファンやサポーターの皆さんは、各種メディアからの報道で大会方式の変更を目にしていると思います。まず、今回の変更にどんな意図が込められているのかを説明いただけますか?
中西大介 僕らはJリーグの試合クオリティに一定の自信を持っています。いい試合をたくさんできるようになりましたし、東アジアカップの優勝を見ても分かるように、Jリーグでプレーする選手のクオリティは相当高い。世界各国のリーグと比較しても、戦術的に相当練られているゲームをしている。実際に試合を見てもらえれば、非常に喜んでもらえるゲームが多いと思います。ただ、最近はいい試合を繰り広げていることを多くの皆さんに伝えたり、分かっていただける機会が少なくなってきていました。今回の変更は、そういった機会を増やすためのきっかけになればと考えたのが一番の理由です。Jリーグを応援してくれているファン・サポーターの皆さんや毎週報道しているメディアの方々からは、「Jリーグのレベルは上がっているよね」と言われますが、Jリーグに普段接していない方に聞くと、選手の海外移籍でJリーグのクオリティが落ちたり、レベルがむしろ下がっていると思われているのではないかと。しかし、決してそういうことはないと思っていて、これだけ多くの選手が海外へ移籍しても、次々にいい選手が出てくるリーグのほうが珍しいと思っています。とにかくJリーグの試合が面白いということをもっと多くの方に分かってもらいたいところが一番大きいですね。
――現在、多くの日本人選手がヨーロッパへ移籍して、高い確率でチームの主力になって成功しています。それが日本人選手のレベルの高さを証明していますが、その一方でさらに新しい選手たちがJリーグで活躍しています。ただ、スタジアムに毎週末、足を運んでいるファンの満足度は高くなる一方、伸びしろがなくなってきているところに危機感を感じているのでしょうか。
中西大介 まさにそうですね。以前、ブラジルやアルゼンチンの選手が次々にヨーロッパへ移籍するにもかかわらず、どんどん新しい選手が出てくることを本当にすごいと思い、憧れの目で見ていました。そして今、徐々に日本がそういう形になってきています。育成部門の努力や環境整備の成果はすごいと思います。その成果を多くの方々に知ってもらいたいですし、今のJリーグから満足度を得ているファンの皆さんの仲間にも良さを知ってもらって、スタジアムへ足を運んでいただければ、もっとスタジアムが埋まる。そうなれば今のファンももっと楽しめますよね。そういった空間作りを含め、新しくJリーグを見てくれる方を増やすことが、新しいファンにとっても今のファンの両方にとっても幸福なことだと思います。ですから、そのための政策を長い間、考えてきました。
――それで今回の大会方式変更に至ったわけですが、2ステージ制とプレーオフを実施することの一番の目的はどこにあるのでしょうか。
中西大介 最終的な目標は、継続的な日本サッカーの成長です。それは試合のクオリティとファンに見ていただける観戦環境、つまりスタジアムの整備が重要だと思っています。ただし、一気にそこへ行けるわけではありません。まず、成長が鈍化している現状をいったん止めることで、更なる成長を遂げるための原資を作りたい。そして優秀な選手を生み出し続けるための投資を続けることの2つが重要だと考えています。これは最終目的につながっていると思っています。決して大会方式の変更自体が目的ではなく、あくまでも成長を続けるための手段だと思っています。もちろん手段ではありますが、多くの方により楽しんでもらえる方法がいいと考えてきました。
――これまでと違った取り組みを実施することで、新たな楽しみを提供したいという思いがあるのでしょうか。
中西大介 新たな楽しみを作って、それを楽しんでいただきたいという思いは当然あります。例えば東アジアカップの日韓戦を思い出してもらいたいんですが、選手たちがあれだけ団結して、あの1試合に集中することで韓国の猛攻を耐えることができた。それはやはり、多くの人に見てもらっていたり、日の丸を背負っているからこそだと思います。それはクラブの選手でも同じですよね。たくさんの人に見られていて、クラブのエンブレムに誇りを持って応援してもらい、満員の観衆に囲まれて戦うという舞台をどれだけ作ってあげられるかも大切だと思っています。ただ、今のJリーグで大きなスタジアムが埋め尽くされることは、ほとんどなくなっています。満員のスタジアムで、ものすごく熱い試合を見てもらえれば、Jリーグは素晴らしいコンテンツですし、それに値するレベルは持っています。それを実現するためには、Jリーグのクオリティが高いと分かるモデルケースの試合が必要だと感じているので、今回の改革が必要だと思います。
――そういった前提を踏まえて、Jリーグ各クラブの意見をヒアリングし、現状への危機感を共有しながら、戦略会議などでJリーグのあり方や将来について議論を重ねてきたわけですよね。そして9月11日に行われたJ1・J2合同実行委員会で、2015シーズンから前後期の2ステージ制移行とスーパーステージ導入が同意されました。ただ、現在、各地のサポーターからは2ステージ制に反対する声が上がっています。平等なリーグ戦の大会方式を考えると、1リーグ制が理想的だと思いますが、実行委員会ではJクラブから反対意見は出なかったのでしょうか。
中西大介 もちろん1リーグ制が理想であることは、JリーグもJクラブも共通認識として持っています。ただ、先ほどから申し上げているように、Jリーグ全体が更なる成長を遂げるために、新しい取り組みを導入することが必要であると考えました。今回の実行委員会においては、西日本の2クラブだけは1ステージ制を消化してのプレーオフを提案しましたが、プレーオフ制の導入については、全会一致で承認されています。確かに当初は反対意見が多かったですが、説明を続けてきたことで危機感を共有することができてきた。反対意見があるのは理解できますが、プレーオフ制の導入に反対するならば、現状を打破するだけの代案が必要になりますよね。いろいろな意見がある中で、我々も「じゃあどうすればいいのか」という議論を続けてきました。ここは覚悟を持って臨み、成功させるしかないわけです。これまでは、できる限り、Jクラブにも選手たちにも危機感を共有することなく進んできましたが、何かを変えなければならないという危機感は、現時点ではクラブとは共有できていると感じています。もちろん、これまで一緒に歩んできたサポーターの皆さんとも危機感を共有しながら、Jリーグを前向きな形で大きくしていきたいので、どこかでそういう場を作りたいとは考えています。
――全国各地のサポーターがスタジアムで2ステージ制導入反対の横断幕を出しています。Jリーグとして今回のポストシーズン制導入に際し、コア層を含むファンの声を集めたりはしたのでしょうか。
中西大介 Jリーグでは観戦回数による「ポストシーズン制に対する評価」に関して、インターネット調査を実施しました。6万110人に対する調査です。観戦頻度が多いほど反対の傾向が強くなり、年間10回以下の方では統計的に賛成が多くなっています。一番右端の数字が各クラスターの回答者数で、これを合計すると6万110人になります。11~20回、21回以上の観戦回数に当てはまる方ですと、アウェイにも行っているコア層が多くなるので反対数は増えますが、この観戦頻度に入ってくるお客様は、2つの今回の調査では544人。つまり全体の0.9パーセントとなります。このコア層がJリーグとともに歩んでくれているファン・サポーターと言えますが、絶対数が少ないからといって反対意見を無視しているのではなく、「興味を持たなかった」や「知らなかった」という層が圧倒的大多数であることをサッカー界全体としての大きな問題だと捉えたわけです。これまでの1リーグ制がベストであることは、Jリーグ側もクラブも共通認識として持っています。ただ、本当の意味で日本サッカー界全体を発展させていくためには、興味を持たなかった圧倒的大多数にアプローチしていくことも必要で、この調査結果から抱いた危機感も、今回の改革案を進める一因になっています。
年間観戦回数知らない賛成反対どちらでもない人数1回 49.2% 13.0% 13.2% 24.6% 2,242
2~3回 30.9% 20.7% 20.2% 28.1% 2,260
4~6回 18.8% 30.5% 27.5% 23.1% 1,072
7~10回 13.6% 32.3% 29.4% 24.7% 477
11~20回 10.8% 22.0% 39.4% 27.9% 287
21回以上 7.4% 21.0% 51.4% 20.2% 257
観戦しようと考えたが、結局一度も観戦せず 43.4% 13.6% 12.4% 30.6% 6,184
観戦しようとまでは考えなかったが、興味あり 60.4% 6.6% 6.5% 26.5% 10,894
興味も持たなかった 84.1% 1.2% 1.1% 13.7% 36,437
――今後、9月17日のJリーグ理事会での承認を経てポストシーズン制導入が正式決定となるわけですが、「分かりにくい」という声もあるので、ここで大会方式を確認させてください。リーグ戦を前後期の2ステージに分け、各ステージで2位以内に入ったクラブがスーパーステージへ進出。そこで優勝したクラブが、年間勝ち点1位となったクラブとチャンピオンシップを行い、年間チャンピオンを決めることになります。ただ、年間勝ち点1位クラブがスーパーステージ進出の権利を得ていた場合の代替案や、AFCチャンピオンズリーグの出場権、賞金額等に関しては、今後も継続して議論していくことになっています。まずは2ステージ制とスーパーステージを導入する方向性を固め、ここから詳細を詰めていくわけですね。2ステージ制とは言え、2004シーズンまで採用していた形式とは異なり、世界中のリーグを参考されたと聞きました。
中西大介 今回のスーパーステージ導入にあたって、まずは世界50カ国のリーグの形式を改めて調べました。何かを基準にしないといけないので、FIFAランキングで上位50カ国のやり方を全部調べて、なぜその国がこういう方式を取っているのかまで考察しました。そうすることで、いろいろなことが見えてきたのも事実です。今回、日本はどこかの国を真似するのではなく、これまでにない形にトライしようとしています。今の日本サッカーが置かれている環境や、過去の2ステージ制の反省、あるいは日本のメディア環境などを考慮した上で、オリジナルのもので進めようと考えました。
――それがスーパーステージであり、チャンピオンシップということですね。確かにプレーオフを含めて山場が増えますし、2ステージ制にすることで年間に2度、優勝争いが生まれますから、必然的に注目度の高い試合は増えると思われます。
中西大介 そうやって、より注目を集めることで、選手たちの力を今まで以上に引っ張り出すことができ、選手としての可能性も高められる舞台を作ることも非常に大切な仕事だと感じています。昔の2ステージ制とチャンピオンシップの大会方式が良かったかどうかではなく、例えば鹿島アントラーズとジュビロ磐田の選手たちには、チャンピオンシップを戦ったことで成長した選手がたくさんいると思いますし、実際にプレーした選手からも同様の声を聞いています。重圧を背負って戦う日本代表戦が選手の成長を促すことはありますが、クラブシーンであっても満員の県立カシマサッカースタジアムで小笠原満男選手や中田浩二選手がどれだけ成長したかは計り知れないものがあると思います。そういったクラブにおける晴れ舞台みたいな試合があることで、日本サッカー全体の成長や選手にとってもプラスになると感じています。
――近年、日本ではプロ野球もプレーオフを導入しています。モデルケースとして参考にされたのでしょうか。
中西大介 例えば、イングランドはテレビに依存せずにサッカーが根づいている期間が長かったりします。テレビに依存しないで基盤を築き、その後にテレビでさらに成長しました。最初からメディアを意識して成長してきたアメリカのスポーツとは違いますよね。日本はもともと無料多チャンネルのテレビがあって、プロ野球はたくさんの方に楽しんでもらうことをベースに成り立ってきました。Jリーグはそれに準じるのではなく、スタジアムに足を運んでくれるファンを一番重要視してきましたが、日本のメディア環境では地上波で放送されなくなると、すごく価値が落ちるように思われてしまうことも事実です。裾野を拡大しなければいけないJリーグにとって、その価値が落ちてしまうことは得策ではないと思っています。日本のメディア環境を考え、現在のファンのことも大切にしようと意識した上で考えたシステムではあります。
――これまでの2ステージ制では、一つのクラブがステージを連覇した場合、チャンピオンシップは開催されませんでした。詳細はこれから決定するとのことですが、たすき掛けで各ステージの1位と2位が戦い、その勝者同士が対戦するスーパーステージを経て、年間最大勝ち点を獲得したクラブとのチャンピオンシップを開催することになります。これだと最大4試合になりますが、注目されることを目的として制度を変えるわけですから、どんな展開になっても4試合実施を確保したほうがいいと個人的には思います。昔、2年連続して完全優勝を成し遂げたクラブが出て、チャンピオンシップが開催されなかった時は、どこか寂しい感じになりましたから。
中西大介 今回は同じクラブが両ステージで優勝した場合でも、プレーオフを実施するつもりです。ただ、状況によってセミファイナルがなくなる可能性があるので、年間勝ち点が上のクラブを参加させたり、最初から3位のクラブが出場できるようにするなど、すでにいろいろな意見が出ています。そこの見直しはあるかもしれません。詳細な大会方式はこれから詰めていくことになります。
――先ほどもおっしゃっていましたが、これはあくまでもJリーグを右肩上がりにする手段の一案で、リーグを取り巻く状況が変わって資金面や人気にメドが立ったら、1リーグ制に戻す可能性もあるということですよね?
中西大介 もちろんです。1リーグ制が理想であることは、全員の共通認識ですから。まずそれだけの力を蓄えたい。その基準をどの数字にするかも、ちゃんとファンの皆さんに共有したいと思っています。例えば、2万人以上の平均入場者数がJ1で3年続いたら、ちゃんと安定軌道に乗ったことになりますし、それは世界の5大リーグに決して劣らない。Jリーグでは今でも重要な試合は大きなスタジアムが満員になっているので、可能性は十分にあります。「そういう状況が生まれた時には1リーグ制に戻そう」という方向性を最初から共有して、基準を決めてスタートするのもありかもしれません。
――Jリーグ全体の総意としても、そこを目指してやっていこう、というわけですね。
中西大介 これから作りたいのは、今回の大会形式変更における目標のKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)です。簡単に言うと、目指すべき数字をどこにするのか。それはJリーグが持つ数字と各クラブが持つ数字を共有して、サポーターの皆さんにもできる限り共有してもらって、どうなれば成長の軌道に乗ったと言えるのかの目標を立てたいと考えています。そのためにサポーターの皆さんには一人でも多くのファンを連れてきてもらいたいですし、そういった呼びかけもしていきたいですね。
――そこがまさに一体だと思います。実行委員会後のメディア説明会でもおっしゃっていたとおり、大会システムだけを変えても本当の意味では変わらないですからね。Jリーグとして、その他にも取り組もうと思っていることがあるのでしょうか。先ほどの説明では各クラブにおける広報のスタンスも重要になってくると話していましたが、広報のスタンスだけでなく、強化部や選手のスタンスも変えていく必要があるかと思います。
中西大介 危機感の共有レベルをそういうところまで高めていきたいと思っています。リーグの人気がなくなれば、クラブの収入が減る。そうなれば強化部の仕事も難しくなってしまいかねません。Jリーグとしては、そうならないようにしたい。来場者データをきちんと取って、クラブにおける顧客のデータ化と、プッシュ型のマーケティングをできるような仕組みを作りたい。日本サッカー協会と協力してやらなければならないこともこれからいっぱいあります。それから何と言っても若手の育成です。ここは絶対に途絶えさせてはいけない。一番大事なことだと考えています。
――そういう意味では2020年の東京オリンピックの開催決定はすごく大きいですよね。なかなか先が見えない世の中で、7年後に明確な目標ができました。選手の強化もしなければならないと思います。
中西大介 東京オリンピックの誘致決定は本当に大きいです。ものすごい目標ができましたから。今までで最高の黄金世代を作れる可能性があるし、そうしければいけないですよね。そこを担うタレントを預かっているのはJクラブなわけです。選手育成は指導方法や試合環境を整えることも大事ですけど、それにはやはり一定のお金がかかります。ドイツはそこにすごく予算を割き、いろいろな工夫をしました。予算と工夫の両方が必要なわけです。そういう視点からしても、日本は育成に関わるお金を絶対に絶やしてはいけないし、むしろ増やさなければならない。ドイツよりも育成環境が遅れているならば、我々には、より一層の努力が必要になります。日本は今まで増やしたお金でレフェリーをプロ化したり、育成年代の13歳、14歳のリーグを作ったりしてきました。どちらも相当な予算が必要だったわけですが、そういうことに優先してお金を使ってきたことが今の日本サッカーの成長につながっているわけだから、それは忘れてはいけないですよね。育成に関しての投資はリーグ全体のものと個々のクラブのものがあるので、今はその両方が必要となります。育成においても競争は競争なので、クラブが必要だと思うような環境を整えることはJリーグの仕事。そのための原資が必要なわけです。
――実行委員会後の説明会で、スーパーステージ制の導入に伴って、10億円以上の収入増が期待できるとおっしゃっていました。大会方式の変更は今後への原資を作ることが大きな目的だと思いますが、それは放映権料とスポンサー料、入場料収入から推測される金額ですか?
中西大介 そうですね。ここからJリーグとしての価値を高めて、その収入増をさらにプラスに転じさせる必要があります。
――2ステージ制にすることで、J1の優勝争いが注目を集めたり、優勝を経験するクラブの数も増える可能性があります。
中西大介 J1のクラブ数を18のままキープして、3クラブの入れ替えを続けることは、1部リーグを経験できるクラブ数を増やしたいという目的があります。ドイツではブンデスリーガ1部を経験したことのあるクラブが50以上もある。それがクラブの実績になるわけです。優勝の喜びについても同じことが言えます。Jリーグが開幕当初に2ステージ制を導入した理由の一つに、最初は地元に優勝の喜びを味わえる機会を増やしたほうがいいという発想がありました。それはチーム数が増えて優勝することが難しくなった今でも共通していることじゃないかなと思っています。今シーズンであれば、大宮アルディージャがファーストステージを取っていたかもしれないですよね。
――そういった栄光を手にすることによって、次に向けて頑張れる部分はありますよね。
中西大介 それもあります。例えば、大分トリニータは昨シーズン終盤、J1昇格への条件にクラブ経営の改善が求められた際、「6位に入ればまたJ1に昇格できるかもしれない」という状況になったところで大分県民からの募金で約1億円が集まった。ヤマザキナビスコカップの優勝やJ1での思い出がなかったら、募金は集まっていなかったかもしれません。タイトルの価値を安売りすることにつながるんじゃないかという批判もあるかもしれないですが、一度のタイトルがホームタウンにとってどれだけ重いかを感じさせられる事例でした。そういった経緯もあって、より多くの地域で優勝の喜びを味わえるようにしたいと考えたわけです。結果的にはどうなるかは分かりませんが、チャンスがあるということは大切なことのようにも思えます。大会方式に100パーセントのものはなくて、それぞれにいいところと悪いところがあるけれども、今はいいところをたくさんの方々に一緒に楽しんでもらいたいですね。
――毎週末、足を運ぶような熱心なファン・サポーターの皆さんにも現状を理解し、危機感を共有してもらって、一緒にJリーグの価値を適性なものに高めるために大会方式の変更を受けて入れてもらい、一緒に盛り上げていきたいということですね。
中西大介 そうですね。ファンの皆さんが愛しているものは、もっと多くの人に愛されていいはずなのに、今の状況に留まっているわけですから。決して今まで一緒に歩んできたファン・サポーターの皆さんを裏切るわけではなく、新しいファンを迎え入れてもらって、さらに大きなものにしていきたいと考えています。そのためには、まず皆さんが愛しているJリーグへの過小評価を適性に戻すというプロセスが必要であることを理解していただきたい。それが将来的な発展につながると思っています。そこが適正になれば、1リーグ制に戻したいと我々Jリーグ関係者も皆、考えているわけですから。
――今のうちに手を打っておかなければ、間に合わなくなるという危機感があると。
中西大介 そういうことです。本当に苦しくなって首が回らなくなってからでは遅いですから。近年、営業収入の微減が続いていますが、一気にダメになるビジネスがいっぱいあったわけです。Jリーグはそうなりたくないし、現状の分析数字を各クラブの実行委員に見てもらって、危機感を共有することができたからこそ、大会方式の変更がほぼ全会一致で承認されたのだと感じています。
――まだ詳細を詰める必要がありますが、各Jクラブにはしっかりと危機感が共有されたわけですね。
中西大介 各クラブの実行委員にはご理解いただけましたが、先ほども申し上げましたように、今後は各クラブの強化スタッフや選手にも理解してもらう必要があります。各クラブの選手会も、日本プロサッカー選手会会長の佐藤寿人選手あたりと話すと相当理解してもらえているようですが、もっと広く分かってもらえるようにするために、彼らと一緒に行動していくことも必要になると思います。選手たちにもしっかりと理解してもらって、ピッチでも今まで以上に全力のプレーを見せてもらいたい。Jリーグも、Jクラブも、クラブスタッフも、選手も、みんなでしっかりとして覚悟を持ってJリーグを盛り上げていく必要がある。サポーターの皆さんには、ぜひともその後押しをお願いしたいと思っています。
◇ホームゲーム観戦時、ペットボトルのスタジアム持込可能に変更(磐田オフィシャル)
http://www.jubilo-iwata.co.jp/newslist/detail/?nw_seq=3313
大変な猛暑の中、観戦していただく皆様の暑さ対策ならびに、スタンド内飲食時の利便性向上として、8月24日(土)のホームゲームより、ペットボトルのスタジアムへの持込みを、可能に変更いたします。
引き続き“安全で快適なスタジアム”を提供するべく皆様とともにスタジアムの環境づくりに努めてまいりたいと考えておりますので、何卒ご理解とご協力をお願い致します。
*今回の変更に伴い、スタジアム内の飲食売店で販売するソフトドリンクについては、ペットボトルでの販売も行います。
変更する事項
ペットボトルのスタジアムへの持込みを、可能にいたします。
※引き続き、ビン、缶、危険物は持ち込めません。ご協力ください。
◆【鹿島】青木「一つ勝てれば状況変わる」(ニッカン)
http://www.nikkansports.com/soccer/news/f-sc-tp1-20130917-1190765.html
鹿島が17日、鹿嶋市内で約2時間半、みっちりと体を動かした。
練習前のミーティングで、完敗した甲府戦(14日)のビデオを見たDF青木剛(30)は「修正点を明確にして、意識して切り替えていかないと。アウェーでこんなに勝てないのは経験したことないが、一つ勝てれば状況は変わってくると思う」と話した。
現在アウェー7連敗。悪い流れを、次節の磐田戦で断ち切る。
◆鹿島野沢「勝ち点3を」敵地7連敗脱出だ(ニッカン)
鹿島がアウェー7連敗中だが、平常心で次戦に臨む。14日の甲府戦で0-3の完敗を喫し、21日の次戦は再びアウェーで17位磐田が相手。現在4位と逆転優勝へ向け、負けられない戦いが続く。MF野沢拓也(32)は「下位チームも必死なのは分かる。でも僕たちはタイトルのために勝ち点3を取って帰るだけ。過去には5連敗もしたし、ここから9連勝したこともあるしね」。伝統クラブが、反撃ののろしを上げる。
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