残り6カ月となったロシアW杯。果たしてハリルホジッチ監督はどんなメンバーで臨むのか。2017年末時点のメンバー23人を検証する。
EAFF E-1 サッカー選手権 2017(E-1)の韓国戦(16日・味の素スタジアム)で1-4の歴史的惨敗から2日後の18日、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が2018年日本代表年間スケジュール発表記者会見に姿を現し、改めて2018年ロシアワールドカップ本大会への続投を宣言した。
「まずは3月に向けて、30~35人くらいのラージリストを作りたい。3月の試合に挑んだら、30人くらいのリストになる。そこから23人のリストが生まれていくという流れになると思う」と今後の日本代表メンバー選考について言及した。
指揮官としては今回のE-1で国内組の奮起を促していたが、結果的に韓国戦では「合格者ゼロ」と言ってもいい厳しい現実に直面した。そうなると、指揮官の欧州組至上主義にはより拍車がかかると見られる。国内組が滑り込めるのは手薄なポジション、あるいは来シーズン開幕直後に凄まじい活躍ぶりを示した選手だけかもしれない。そんな現状も踏まえ、2017年末時点でのロシア大会メンバー23人を検証してみることにしたい。
<GK=3人、川島◎、西川○、中村○、東口△>
まずGKだが、川島永嗣(メス)の3大会連続代表入りはほぼ確定に近い。もう2枠を最終予選5試合出場の西川周作(浦和)、足掛け7年間の代表帯同で4試合出場にとどまっている東口順昭(G大阪)、22歳の中村航輔(柏)の3人が争っている構図だ。
11月の欧州遠征(ブラジル&ベルギー)の時点では西川、東口という30代GKが揃ってメンバーに入りそうな雲行きだったが、E-1初戦の北朝鮮戦で中村が存在感を発揮。韓国戦の先発もつかんだことから、序列が上がったのは間違いない。このままだと東口が落選の憂き目に遭う可能性が高く、来季G大阪でのパフォーマンスがこれまで以上に大事になってくる。E-1で代表復帰した権田修一(鳥栖)やこれまで何度か呼ばれている林彰洋(FC東京)らも一縷の望みを賭けて来季に挑むしかない。
<CB=3~4人、吉田◎、槙野○、昌子△、森重△、植田△>
一方、センターバック(CB)だが、2014年ブラジル大会では吉田麻也(サウサンプトン)、森重真人(FC東京)、今野泰幸(G大阪)、伊野波雅彦(神戸)の4人が選ばれている。ただ、本職CBを中澤佑二(横浜)、田中マルクス闘莉王(京都)、岩政大樹(東京ユナイテッド)の3枚にして、阿部勇樹(浦和)や今野のようなユーティリティな選手で補った2010年南アフリカ大会の例もあり、3~4人と考えるのが打倒だろう。
現時点で当確なのは予選全試合にフル出場した吉田。そのパートナーとして槙野智章(浦和)が一歩リードしている。最終予選終盤は昌子源(鹿島)がピッチに立ったが、E-1の韓国戦でのキム・シンウク(全北現代)への対応などを見る限りでは、やや不安は拭えない。若い三浦弦太(G大阪)も経験不足を露呈しただけに厳しそうだ。ケガと不調で今季を棒に振った森重が来季トップフォームを取り戻せば代表復帰も十分あり得る。吉田、槙野、森重、昌子の4人を選ぶという考え方が無難ではあるが、本職CBを3枚にして、1枚は植田直通(鹿島)のような万能型にする手もある。特に植田はE-1で右サイドバックとしての可能性を垣間見せている。セネガル戦を想定し、日本人離れした身体能力を誇る男を入れた方がいいという意見もあるだけに、興味深い。
<SB=3~4人、酒井宏◎、長友◎、酒井高○、車屋△、植田△>
サイドバック(SB)に関しては、ブラジル大会は内田篤人(ウニオン・ベルリン)と長友佑都(インテル)、酒井宏樹(マルセイユ)、酒井高徳(ハンブルガーSV)の4人だったが、南アフリカでは内田、長友、駒野友一(福岡)の本職3人に、万能型の今野を加えた陣容となっていた。今回も本職4人とするなら、当確組の酒井宏、長友に、両SBをこなせる酒井高、左利きの車屋紳太郎(川崎F)を加えるのが、現状のベストではないだろうか。
ただ、CBとSBをこなせる植田や槙野を入れるいう考えもある。であれば本職は酒井宏、長友、酒井高の3人だけでいい。彼ら3人は欧州で傑出した実績があるだけに、ハリルホジッチ監督にとっても必要不可欠な人材。右ひざ負傷を機に代表から長期間離れている内田も戻ってこない限り、この3人の牙城を崩す選手は見当たらない。
<MF=6~7人、長谷部◎、山口蛍○、今野○、井手口○、香川○、長澤△、清武△、森岡△、小林祐△>
ハリルホジッチ監督は4-2-3-1と4-3-3のシステムを併用している。中盤はダブルボランチの前にトップ下を置く三角形型と、アンカーの前にインサイドハーフ2枚を置く逆三角形型がある。
このフォーメーションを想定した場合、ボランチとアンカーの両方をこなせる人材として、長谷部誠(フランクフルト)、山口蛍(C大阪)、今野の3人が候補者として挙がる。ドイツで11シーズン戦っている長谷部の卓越した国際経験値と統率力は今の日本代表に必要不可欠。右ひざの状態が不安定であっても当確は揺るがない。
ブラジル大会経験者の山口蛍も最終予選全試合出場と指揮官から絶大な信頼を得ている。ボール奪取後の展開力は課題だが、やはり当確と言っていい存在だ。今野もE-1で復調をアピール。守備で全てのポジションを担える万能性から選びたい人材ではある。同じ枠を争うのが遠藤航(浦和)だが、攻撃の組み立てやゴールに絡める迫力を考えると今野の方が上。守備的MFの3枠目に滑り込むのが妥当だ。
攻撃的MFの方は選択が非常に難しい。デュエルを武器とする井手口陽介(G大阪)、長澤和輝(浦和)のようなタイプがいる一方、トップ下として長年やってきた香川真司(ドルトムント)、清武弘嗣(C大阪)、柴崎岳(ヘタフェ)、森岡亮太(ワースラント・ベフェレン)、小林祐希(ヘーレンフェーン)のようなタイプもいて、どういうバランスがベストなのか指揮官も頭を悩ませているに違いない。
このうち「ハリルの秘蔵っ子」と位置付けられる井手口はロシア行きの確率が最も高いが、今冬に踏み切ると言われる欧州移籍の結果いかんでは、代表での位置づけが変わるかもしれない。長澤もまだ代表招集1回と未知数な選手で、香川、清武、柴崎、森岡、小林はハリルホジッチ監督が求めるデュエルの部分で物足さがある。とはいえ、本番を考えると攻撃のスイッチを入れる人間は絶対に必要。そういう意味でも復調傾向にある香川は必要ではないか。リスタートの部分でも清武が本調子を取り戻せば入れておきたい。今、オフェンシブの4枚を選ぶとしたら、井手口、長澤、香川、清武だろうか。
<サイドアタッカー=4~5人、原口◎、乾◎、浅野○、久保○、伊東△、本田△、小林悠△、倉田△>
サイドアタッカーも激戦ではあるが、すでにある程度のメドは立っている。まず右は最終予選終盤に決定的な仕事をした久保裕也(ヘント)と浅野拓磨(シュツットガルト)の2人がリード。そこにFIFAクラブワールドカップ(CWC)でキレを取り戻した本田圭佑(パチューカ)、E-1選手権で異彩を放った伊東純也(柏)、トップもできる小林悠(川崎)が絡む構図と言える。久保はヘントではトップ下、浅野も左右のサイドなど複数ポジションをこなしており、右のスペシャリストではないが、どちらもハリルホジッチ監督のサッカーには必要な駒だ。
そこに続くのがドリブル突破が売りの新スピードスター・伊東だろう。ただ、国際経験が皆無に近く、欧州組と共演した経験もない。そこは気がかりとなる。本田と小林は複数ポジションをこなせる存在だが、いざという時に頼れるのはやはり強靭なメンタルを誇る本田だ。インサイドハーフもできることを考えると、長く日本の看板に君臨した男もぜひ加えておきたいところだ。
左に関しては、原口元気(ヘルタ)と乾貴士(エイバル)が大きくリードしている。原口が冬の移籍市場で新天地を見出せなければ、コンディション的に厳しくなるが、最終予選4試合連続ゴールの実績は非常に大きな意味を持つ。彼のような運動量とスプリント力を備えた選手は日本人にはなかなかいない。その長所はやはり大きい。乾にしてもスピードと打開力を兼ね備えた数少ない選手。そこは特筆すべき点と言える。
ダイナミックさとインテンシティーを発揮できる倉田秋(G大阪)も今年10月以降、コンスタントに呼ばれており、攻撃的MFもこなせる万能型として一定の評価はある。しかし、他2人に比べると国際経験値が弱い。韓国戦でもその課題を露呈してしまっただけに、現時点での23人入りは厳しそうだ。
<トップ=2~3人、大迫◎、岡崎○、本田○、武藤・杉本・川又・小林悠△>
トップは大迫勇也(ケルン)が当確。最前線でタメを作れる彼の存在はハリルホジッチ監督の戦術の根幹をなす部分。「大迫ありきのロシア」といっても過言ではないほど重要度が高い。その大黒柱と異なる特性を持つ岡崎慎司(レスター)、武藤嘉紀(マインツ)、杉本健勇(C大阪)、川又堅碁(磐田)に、複数ポジションをこなせる本田、小林も加わり、残り1~2枠は大混戦。
国際経験を取るなら岡崎、高さなら杉本など何にポイントを置くかで選考結果は違ってくる。大迫のようにタメを作ることを重視するなら、2016年10月の最終予選・オーストラリア戦でその仕事をしっかりとこなした本田、E-1で成長ぶりを示した川又も視野に入ってくる。いずれにしても、良いコンディションを維持し、結果を残し続けなければ、すぐに候補者から外れる。それがFWだ。そこは全員がしっかりと認識しておくべきところだ。
◎=当確、○=有力、△=微妙
文=元川悦子
ロシアW杯へハリルが選ぶ23人は?“合格者ゼロ”のE-1を踏まえたポジション別通信簿