9月1日、明治安田生命J1リーグ第25節が行われ、サンフレッチェ広島と鹿島アントラーズが対戦した。
■均衡を破ったのは鹿島だったが…
4日前、ホーム・カシマスタジアムで中国の天津権健に2-0の完封勝利を飾り、悲願のアジア制覇へ向けて勢いをつけた鹿島アントラーズだったが、リーグ戦では再び首位・サンフレッチェ広島に力の差を見せつけられた。
エディオンスタジアムでのアウェイゲームは序盤、FWセルジーニョが先制ゴールを決めたが、その後、広島のエース・パトリックに2ゴール、そして日本代表に初選出されたDF佐々木翔のゴールで1-3と逆転負けを喫した。この敗戦で、鹿島は暫定8位に順位を落とした。一方の広島は首位の座を堅守、この日ガンバ大阪に0-2と敗れた2位・川崎フロンターレとの勝ち点差も暫定ながら9に広げた。
「ホームでは負けているが、それは自分のミスから。今度は勝たせられるようなプレーをしたい。絶対に勝ち点3を取るという気持ちを見せる」
9月最初のゲームを前に、MF三竿健斗は力強く「打倒広島」を誓っていた。キリンチャレンジカップに臨む日本代表にも選出され、首位広島に対し、自らの力をアピールする絶好の機会だった。
三竿の言葉に象徴されるように、鹿島は序盤から積極的にボールを奪う姿勢を見せる。立ち上がりから激しいボディコンタクトの応酬となり、中盤でルーズボールの奪い合いが繰り返される展開となった。なかなか前線でボールを収めることができずにいたが、FW鈴木優磨が体を張って基準点になろうと腐心し、セルジーニョもパスの経由点としてしっかりと機能していた。
少しずつ縦パスが通るようになり、15分、その前線の2人の働きで待望の先制点が生まれる。素早いカウンターからセンターサークル左側で鈴木がボールを収め、右側を走っていたセルジーニョへ。背番号18は縦へと加速して敵陣を切り裂き、対面する相手を引きつけてから左前方へスルーパスを送る。走り込んでいた鈴木は、ペナルティーエリア左側から丁寧なラストパス。鮮やかなパス交換、その終着点はもちろんセルジーニョ。右足ダイレクトで正確にインパクトされたボールが、広島のゴールネットを揺らした。
1-0。セルジーニョの公式戦2試合連続得点で、鹿島が均衡を破ってみせた。
会心のゴールで先手を取った鹿島は、勢いに乗って追加点を狙う。しかしその後はまたルーズボールを奪い合う展開となり、少しずつ広島がペースを握るようになった。
すると26分、MF柴﨑晃誠のFKからパトリックに豪快なヘディング弾を決められ、1-1。前半終了間際の43分には、またもやFKから佐々木に詰められ、逆転を許してしまった。
こうなるとホームの広島が優位にゲームを進める。後半開始直後の50分にはカウンターからパトリックに独走を許し、この日2点目を奪われる。1-3と鹿島は2点のビハインドを背負った。
その後まずは同点に追いつこうと前線の鈴木にボールを集めた鹿島だったが、3失点目から5分後のセルジーニョの芸術的な左足ボレーシュートはポストに阻まれ、71分、鈴木が放ったバイシクルシュートは惜しくも枠をとらえられずと、1-3のまま、試合終了のホイッスルを聞くこととなった。
「チームとして戦うのは、大前提としてある。でも1対1で勝てる選手が多いほうがいいことは間違いない。パトリック選手にレベルの違いを見せつけられた」
試合後、悔しさをかみ殺しながら語ったのは、鈴木。90分間、勝利のために前線で体を張ったが、”ゴール”という結果は得ることができなかった。「自分は点が取れず、パトリック選手は決めた。勝たせられる選手としての比較として、完敗だった」と相手エースの力量に脱帽した。
しかし歩みを止めることは許されない。次戦は4日後、5日のJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝第1戦だ。カシマスタジアムで再び迎える“前半90分”で、川崎Fと激突する。
タイトル獲得への道のり、新たな扉を開くホームゲーム。三竿を日本代表、そしてDFチョン・スンヒョンを韓国代表へと送り出すが、鹿島はこの屈辱を胸に新たな戦いに入る。
◆鹿島FW鈴木優磨「レベルの違いを見せつけられた」。広島に惨敗、相手エースの力に脱帽(GOAL)