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昨シーズン限りで柳沢敦(現鹿島コーチ)、中田浩二(現鹿島クラブリレーションズオフィサー=CRO)、新井場徹という2000年代の常勝時代を支えた30代のベテランたちが次々とユニフォームを脱ぎ、1つの時代に終止符が打たれた印象の強かった鹿島アントラーズ。2015年は新たな黄金期を築くために力強い一歩を踏み出さなければならない。
彼らと同世代の小笠原満男、本山雅志、曽ヶ端準の79年トリオはまだまだ健在だが、柴崎岳、昌子源、植田直通の3人が2015年アジアカップ(オーストラリア)メンバー入りするなど、若い力の躍進は目覚ましい。近い将来の日本国籍取得を目指すカイオや、植田と同じU−22日本代表メンバーの豊川雄太らもいるうえ、今週に入ってから元日本代表の金崎夢生も加入することになった。
金崎は大分トリニータ時代の2009年に岡田武史監督率いる日本代表に抜擢され、アルベルト・ザッケローニ監督就任直後の2010年10月のアルゼンチン(埼玉)・韓国(ソウル)2連戦でもメンバー入りしていた。その後、2013年1月にドイツのニュルンベルクへ移籍したが半年間で契約解除となり、ポルトガル2部のポルティモネンセへ移籍。13−14シーズンは30試合出場7得点、今季もシーズン半分の時点で9得点を奪い、チーム得点王に君臨していた。今回の鹿島入りの経緯は代理人を通して「Jリーグに復帰したい」という申し入れがあり、獲得に至ったという。鹿島の鈴木満常務取締役強化部長は「金崎は滝川第二高校にいた時に取りにいった経緯があり、もともと目を付けていた選手。ドリブルができて点も取れるいいアタッカーだ。ポルトガルでもチーム得点王になるくらいゴールを量産していた選手。十分、ウチの戦力になってくれると思う」と太鼓判を押していた。
金崎の加入によって、競争が一段と激化したのが2列目のポジションだ。昨季は右に遠藤康、真ん中に土居聖真、左にカイオ、あるいは豊川らが先発し、試合の流れ次第で本山や中村充孝ら出るというパターンが多かった。昨季10ゴールを挙げた遠藤と8点を取った土居は完全な攻撃の軸で、トニーニョ・セレーゾ監督がこの2人を外すことは当面、考えにくい。金崎が出るとしたら遠藤と土居が担う右か真ん中のいずれかで、彼ら以上にゴールに直結する仕事を見せることがスタメン定着の条件となる。ポルトガルで培ってきた突破力やシュートの精度に加え、鹿島のアタッカーは守備にも献身的に絡むことが求められるだろう。そんなハードワークができるフィジカルコンディションを備えているかがまずは気になるところだ。
ベテラン・本山や、京都サンガ時代には傑出した点取屋として活躍していた中村も、昨季と同じジョーカー的な役割で満足しているはずがない。特に中村は市立船橋高校時代から潜在能力の高い選手として注目されており、今までの状態をよしとはしていないはずだ。昨季の彼は2ゴールと同じ2列目を担うライバルたちより数字的には物足りない部分があっただけに、持ち前の決定力を発揮してほしいところ。これだけ充実した2列目要員を抱えるチームはJ1の中でも鹿島くらいといっても過言ではない。誰が抜け出すかが非常に楽しみだ。
こうした2列目ばかりでなく、今季の鹿島は最前線要員として、徳島ヴォルティスから高崎寛之も補強した。昨季途中に左ひざ負傷で長期離脱を余儀なくされたダヴィが復帰までまだしばらく時間がかかると見られるため、当面は彼と赤崎秀平で1トップを回すことになりそうだ。
赤崎はルーキーイヤーだった昨季後半、ダヴィの穴をしっかりと埋め、最終的に5ゴールをマークした。その赤崎の成長によって、チームも最後まで優勝戦線に絡むことができたところは多分にあった。とはいえ、新人選手というのは2年目に壁にぶつかるケースもある。高崎の補強はこうしたリスクも考えてのことだろう。鹿島はいざという状況に備えた体制を作っているから、つねに大崩れしない。鈴木強化部長のチームマネージメント力が今季も結果に表れそうだ。
オズワルド・オリヴェイラ監督体制で2007から2009年にリーグ3連覇を達成して以来、彼らはJ1制覇から遠ざかっている。2010年以降は世代交代の時期を迎え、紆余曲折を強いられただけに、やむを得ない部分はあったものの、リーグ戦タイトルを5シーズン逃しているのは常勝軍団としては満足いかないだろう。小笠原らがフル稼働できるうちにもう一度、王者に輝きたい思いはチームとして強いはず。その悲願を今季はぜひ達成してほしいものだ。