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ウズベキスタン戦の予想スタメン
ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督のもとで臨む新生日本代表の第2戦、ウズベキスタン代表との国際親善試合が31日午後7時25分に味の素スタジアムでキックオフを迎える。
30日の夕方からは試合会場で公式練習を実施。それに先駆けて公式会見に臨んだハリルホジッチ監督は、2対0で快勝した27日のチュニジア代表との初陣に先発したメンバーからほぼ全員を入れ替えることをあらためて明言した。
「ちょっとリスクがありすぎるかもしれないが、すべての選手に対する知識を深めたいと思っているので」
フォーメーションはおそらく「4‐2‐3‐1」のままで固定。その上でチュニジア戦に途中出場してゴールに絡んだFW本田圭佑(ACミラン)、FW岡崎慎司(マインツ)、MF香川真司(ドルトムント)が先発に名前を連ねる一方で、注目されるのがMF陣とDF陣の最年少選手たちも満を持して出場する点だ。
MF柴崎岳とDF昌子源。ともに1992年生まれの22歳で、高校卒業後の2011年シーズンから鹿島アントラーズでプレーする同期生でもある2人は、前者がハビエル・アギーレ前監督体制の船出となった昨年9月から、後者も追いかけるように同11月の国際親善試合からA代表に名前を連ねてきた。
もっとも、柴崎がすでに6試合に出場して2ゴールをあげているのに対し、昌子はベンチで先輩選手たちの戦いを目に焼きつける日々を強いられてきた。
ウズベキスタン戦を前に「今度こその思いがあるのでは」と問われた昌子は、「全然焦りはない」と笑顔で自然体を強調した。
「他の選手が出ているのに自分は、という思いはないですね。常に100%の準備をして、与えられたチャンスをものにすることがいまの自分にとっての仕事。そのチャンスがウズベキスタン戦になるのか、もっと先の戦いになるのかの違いだけだと思っています」
柴崎は入団2年目の2012年シーズンから、昌子は昨シーズンからアントラーズの主軸を担ってきた。視野の広さと長短の正確なパスで淡々と攻撃を組み立てるボランチの柴崎と、ピッチ全体に響き渡る声と常にポジティブな性格、的確なカバーリングで最終ラインを統率するセンターバックの昌子。プレースタイル同様に性格も対照的だ。
たとえるならば柴崎がクールな「氷」であり、昌子が真っ赤に燃える「炎」となる。ハリルホジッチ体制への移行に伴い、代表から外れたMF遠藤保仁(ガンバ大阪)の代名詞でもあった背番号「7」を引き継いだ形になっても、柴崎の反応は素っ気ないものだった。
「(背番号に)特にこだわりはないので。何回も質問されていますけど、答えは毎回同じですね」
ハリルホジッチ監督が選手全員に求める「アグレッシブな守備」を自分の言葉で表現するときも、柴崎と昌子では180度異なるから面白い。
「人によって守備の表現方法が変わってくると思うので、僕なりのアグレッシブさを出してしっかりとボールを奪えるように意識したい」
柴崎が質問をかわすように淡々と語れば、昌子は指揮官の要求を真正面から受け止める。
「ピッチに立てば、人格を変えるくらいの気持ちでやっていく」
大分市内で行われたミニキャンプ3日目の25日。海外組と国内組とに分かれて、ハリルホジッチ監督によるグループ面談が実施された。海外組に対して「厳しい環境でレギュラーをキープできるように頑張れ」と檄が飛ばされたのに対し、国内組に対してはフィジカルコンタクト、相手との駆け引きにおける狡猾さなどを含めて「ダメ出し」が連発された。
通訳を介して浴びせられた厳しい言葉の数々。昌子は「なるほどな」と思わずうなずくとともに、意識次第で変えられる、という指揮官からのメッセージをひしひと感じていた。
「外国人の方には日本人の体は細くて弱いと映るだろうし、その上でアジアカップなどの映像などを見た監督は『日本には優しさがあった』と言っていた。要は相手に当たることに対してリスペクトしすぎている、優しく当たりにいって逆にひじ打ちを食らっていると指摘されました。常に強気で、そのなかにリスペクトの精神を持てと言われました」
球際の激しさを問われたときに、遠慮していたという自覚があったのだろう。指揮官から伝授された「ある言葉」が昌子の脳裏からは離れず、いまでは「ピッチの上では人格を変える」とまで言わしめるまでに大きな支えになっている。
「試合が終わってから相手に謝ればいい。試合中は全員が敵だ」
新体制になってからの練習では、アギーレ前政権時代とは変わった光景が続いている。開始前に全員が参加するランニングで、常に先頭に立って後続をけん引していたのが柴崎だった。
「先頭でやるやらないは関係ないですし、自分としてはしっかり意欲を持って、高いモチベーションでやりたいとは思っています」
本音を覆い隠すように務めて冷静に語っても、A代表に対する熱い思いが時折顔をのぞかせる。チームを新陳代謝させていく決意を問われた柴崎は、静かな口調ながらこう語っている。
「若い世代がさらに出てくる時期なのかなと思いますし、僕たちはその中心としてしっかり代表に、それも中心として残っていけるようにしたい」
アントラーズにおいても、柴崎はMF小笠原満男をはじめとする「黄金世代」からバトンを託される新世代の象徴を担ってきた。今シーズンはキャプテンを務めることの多い柴崎の背中を必死に追いかけ、急成長をとげてきた昌子によれば、クールに映る柴崎の内側にはマグマのような情熱がほとばしっているという。
「岳があそこまで走るから、僕たちも走れる。アイツは鹿島の心臓。アイツがいるから、僕たちも『しんどい』とか『疲れた』と言えないんです」
ワールドカップ日韓共催大会の日本代表では実に6人を数えたアントラーズの所属選手は、昨夏のブラジル大会ではついに誰もいなくなってしまった。ようやく名前を連ね始めた2人は、アントラーズだけでなく日本代表に生き残り、3年後のロシア大会へ向けた世代交代をも担っていく役目をも背負う。
「地域と国の違いがあるかもしれないけど、鹿島を背負うのも国を背負うのもどちらも重い。出場したら国際試合だということを特に意識せずに、Jリーグと変わらない(試合への)入りができれば」
昌子の熱い思いは柴崎のそれともシンクロするはずだ。J屈指の名門の屋台骨を支えるプライドと代表戦へかける高揚感とを交錯させながら、22歳のアントラーズコンビはウズベキスタン戦のキックオフを待つ。
(文責・藤江直人/スポーツライター)