明治安田J1 第10節
内田のクロスから鈴木が同点弾も、勝利には届かず。鹿島、神戸と引き分け。
聖地で勝ち切ることはできなかった。J1第10節、ヴィッセル神戸をカシマスタジアムに迎え撃った鹿島は前半から攻勢をかけながら、34分に一瞬の隙を突かれて先制点を許す。ビハインドで迎えた後半、55分に内田のクロスから鈴木がヘディングシュートを決めると、逆転を目指して攻め続けたものの、2得点目は生まれなかった。1-1。勝ち点1を得るにとどまった。
5月20日まで続く怒涛の連戦は、早くも折り返しを迎えた。14日の名古屋戦では2-0と完封勝利を収めたものの、17日は水原三星に0-1、そして21日には川崎Fに1-4と大敗。等々力の90分は屈辱としか形容し得ないものだった。開始早々にオウンゴールで先制を許し、後半立ち上がりにも失点。永木が意地のFKを決めたものの、ミスも絡んで2点を追加された。昌子は2枚の警告で退場となり、鈴木や金崎の奮闘も実らなかった。
不甲斐なき大敗。だが、失意の選手たちを包んだのは沈黙でも怒号でもなかった。心を震わせる、大きなチームコールが鳴り響く。90分間、アントラーズレッドの情熱を注ぎ続けた背番号12は、ともに戦い続ける意志を熱く強く送り届けてくれた。土居は「ホームで気持ちを見せて勝たないと」と、聖地で迎える次戦へと視線を向けていた。
心身のリフレッシュを図ったチームは、23日にクラブハウスに再集合した。リカバリーメニューを消化してコンディション調整に努め、前日練習ではセットプレーの確認に加えて紅白戦を敢行。大岩監督は「しっかりと敗戦を受け止めること、映像を観て改善すること、自分たちがやるべきことを再確認すること」とテーマを掲げ、攻守における連係と精度の向上を図った。幾多もの横断幕がチームを鼓舞するクラブハウスで、選手たちは勝利だけを目指して集中力を高めていった。遠藤、レオ シルバ、安西、ペドロ ジュニオールと、離脱を強いられていたメンバーの帰還もまた、グラウンドに新たな風を吹き込んでいた。
ケガからの復活を遂げ、臨戦態勢を整えた面々について指揮官は「刺激を与えてくれる存在」と信頼を語っていた。選手起用に注目が集まる中、4日前からの先発変更は3名。出場停止の昌子に代わって犬飼が入り、ミドルシュートにはレオと遠藤が帰ってきた。その他、GKはクォン スンテ、最終ラインでは犬飼とともに植田がセンターバックを務め、両サイドは内田と小田が並ぶ。ボランチの一角は三竿健斗、そして前線でフル稼働を続けてきた鈴木が左サイドハーフに配された。2トップは金崎と土居のコンビだ。またベンチには、GKの曽ケ端、西、永木、小笠原、中村、そして帰還を遂げた安西とペドロが座る。
ミッドウィークの鹿嶋は朝から激しい雨風に見舞われたが、カシマスタジアムが開場する頃には雨が止んだ。水曜日のナイトゲームでも、背番号12は勝利への決意を胸に携えて続々とスタンドへ足を運んでいく。復活を遂げた遠藤への信頼を歌い上げるチャントが、聖地の夜空に響き渡った。体に熱を注いでいく選手たち、そこへ降り注がれるチームコール。キックオフが迫るにつれて、聖地はボルテージを高めていった。
19時3分、キックオフ。鹿島は立ち上がりからゴールへの意欲を体現していった。まずは開始4分、土居がペナルティーエリア手前のレオへ鋭いパスを通すと、左側で待っていた鈴木が前を向く。背番号9は迷うことなく右足を一閃。強烈なシュートを飛ばすと、相手GKに弾かれたところに金崎が詰めていた。左足シュート、揺れるゴールネット。しかし、次の瞬間に副審の旗が上がった。際どい判定でオフサイドとなり、得点は認められなかった。
刹那の沸騰は落胆へ変わったが、開始早々に決定機を作り出した鹿島は以後も流動的な攻撃で神戸を押し込んでいく。前線の一角に配された土居が持ち前のスペースメイクとギャップを突く動き出しで相手を翻弄し、攻撃の中心として輝きを放った。左サイドハーフを務める鈴木も力強い突破と正確なサイドチェンジで存在感を示し、復帰を果たした遠藤は安定感抜群のボールキープでチームの基準点となっていた。
20分経過後も、鹿島がボールポゼッション率を高めて神戸を押し込んでいった。ミドルゾーンでは健斗とレオが鋭いボディコンタクトでセカンドボールを確保。機を見た攻撃参加でアクセントを加えていた。25分には遠藤の左CKから犬飼がヘディングシュート。カシマでの勝利へ決意をみなぎらせていた背番号39が得意の空中戦から神戸を脅かしたが、惜しくもボールは相手GKの正面を突いた。
以後も変わらず、鹿島が積極的にボールを動かして攻撃を繰り出す展開が続いた。だが、この日最初のスコアはアウェイチームのものだった。34分、ペナルティーエリア手前から不意を突いたループパスを出されると、最終ラインの背後へ走り込んだ三田にヘディングシュートを決められてしまった。結果的に、神戸が前半に放った枠内シュートはこの1本のみ。痛恨の失点で、鹿島はホームでビハインドを負った。
反撃を期す鹿島は42分、レオが敵陣中央から思い切りよく右足を振り抜く。強烈な弾道のミドルシュートが飛んだが、わずかに枠を越えた。0-1。ビハインドを負ったまま、ハーフタイムを迎えることとなった。
ホーム側スタンドへ向かって攻める後半。鹿島は開始1分足らずでチャンスを作り出した。犬飼のクロスに反応した金崎が敵陣左サイドを縦へ突破し、ペナルティーエリア左角からグラウンダーのクロスを供給。飛び込んだ土居には合わなかったが、同点ゴールへの意志を示してみせた。さらに50分にはハイプレスから遠藤がボールを奪い、土居へ鋭い縦パス。背番号8はトラップから右足で狙ったが、相手GKにキャッチされてしまった。
立ち上がりに迎えた2つのチャンスは結実しなかった。だが、鹿島は神戸を押し込み続けていた。そして55分。待望の瞬間がついに訪れた。中盤左サイドから鈴木が右サイドへ展開すると、レオが2人のマークを引き付け、大外へとスルーパスを通す。オーバーラップしていたのは内田だった。背番号2が蹴り込んだ低空クロス、バウンドしたボールは相手GKの手をかすめてコースが変わる。待っていたのは背番号9。ヘディングシュートを突き刺し、1-1の同点に追い付いた。
怒涛の連戦、次なる戦いは中3日でのアウェイゲームだ。4月最後の90分は、オリジナル10として対峙を続けていた横浜FMとの激突。10試合を終えて14位という現実と向き合い、悔しさを燃料に変えて這い上がらなければならない。日産スタジアムで3ポイントを奪い取るために、明日の午後練習から準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・鈴木が今季のJ1で2得点目を挙げた。
・遠藤が先発メンバーに名を連ね、3月3日の第2節G大阪戦以来の復帰を果たした。
・レオ シルバが先発メンバーに復帰。4月3日に行われたACLグループステージ第4節の上海申花戦以来の試合出場を果たした。
・安西が途中出場し、3月10日の第3節広島戦以来の実戦復帰を果たした。
・ペドロ ジュニオールが4月3日に行われたACLグループステージ第4節の上海申花戦以来の試合メンバー復帰。ベンチスタートで、今節の出番はなかった。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・前半のようなアグレッシブな戦いを後半も続ける事。
・相手のビルドアップに対し、全体をコンパクトにして積極的にプレスをかけていこう。
・もっとシュートを打ち、クロスに対しても人数をかけて入っていこう。
ヴィッセル神戸:吉田 孝行
・自信を持つこと。
・守備の時間が長いからボールを奪った時に前に出る選手がいない。
・考えすぎてボールを持ち過ぎないように。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半いい形で入ったが失点してしまった。後半はしっかり自分たちで立て直して、できた部分があったが、最後の一押しが足りず残念な結果になってしまった。しっかり次に切り替えて、リカバーして準備したい。
Q. ケガ人が復帰した。連戦のなかで明るい材料か?
A. 心強く感じている。チームをもう1ランク上げてくれる選手たちだと思う。しっかりコンディションを見極めながら、次のゲームへの準備を進めたい。
Q. 小田選手が90分プレーしたが、その評価は?
A. 今日だけではなく、この3試合、非常にいいパフォーマンスを続けている。評価は変わらず高い。しかし、連戦のなかで高いパフォーマンスを維持しなくてはいけない。彼だけではなく、しっかりリカバリーして、次への準備を怠らないでほしい。
ヴィッセル神戸:吉田 孝行
アウェイで勝ち点1を取れたことは評価したい。しかし、90分を通してアントラーズのペースだった。連動した動きもできず仕方ない結果だったと思う。ある程度対策を立てて臨んだが、それ以前に1人ひとりが顔を出さない状況で、もっと自信を持ってプレーしなくてはいけないと感じた。
選手コメント
[試合後]
【遠藤 康】
どこまでできるかわからない中で、最低限の仕事はできたかなとは思う。次はメンバーがどうなるかわからないけど、誰が出ても戦えるチームだと思うし、準備をするだけ。
【安西 幸輝】
どのポジションで出ることになってもいいようにイメージをしていた。やれるということを示すために、勢いを出せればと思っていた。もっとコンディションを上げて、プレーの精度を高めていきたい。
【小田 逸稀】
先制点を狙っていて、流れも良かった中で失点してしまった。自分がしっかりとした状況判断をできていれば対応できていたと思う。経験をプラスに変えられるように日々の練習からやっていくしかない。
【植田 直通】
内容的には相手を圧倒している部分が多かったけど、勝つことができなかった。こういう試合をモノにできるかどうかで、後に響いてくる。この戦い方を継続して、次は勝利を掴めるようにしないといけない。
【犬飼 智也】
失点の場面では一つ前のプレーで潰しておかなければいけなかった。アグレッシブにプレーすることはできていたし、みんなが前に行く姿勢は必要だけど、それを結果で示さなければいけなかった。
【土居 聖真】
内容が良くなっても結果が出ていない。攻守両面でアグレッシブに、ダイナミックにプレーできていたけど、だからこそもったいなかった。個人的にも、ギアをもっと上げたかった。
2018明治安田生命J1リーグ 第10節