今度こそ勝てるかもしれない。サッカーのクラブ世界一を決める『クラブW杯』UAE大会でJ1鹿島(アジア代表)が4強入り。準決勝(日本時間20日午前1時30分開始予定)で超名門レアルマドリード(欧州代表)と対戦する。一昨年大会の決勝でレアルを相手に延長戦にもつれ込む大善戦を演じた鹿島に、今年は勝利の条件がそろっているとの見方が強まっている。今年7月に鹿島のテクニカルディレクター(TD)に就任した元日本代表監督、ジーコ氏(65)が帰国予定を取りやめチームに付きっきりになっているのも、その表れだ。(夕刊フジ編集委員・久保武司)
15日の準々決勝グアダラハラ(メキシコ=北中米カリブ海代表)戦は、鹿島にとって負けパターンだった。前半3分に守備陣の乱れから先制され、前半だけで10本以上のシュートを浴びて防戦一方。
しかし後半、大岩剛監督(46)が19歳FW安部裕葵を投入して流れが変わった。MF永木、FWセルジーニョ(23)、安部が立て続けにゴールを奪い逆転。結局グアダラハラを3-2で振り切った。
スタンドで胸を熱くしたジーコ氏は「すばらしい逆転劇」と試合終了直後に自身のインスタグラムで発信した。
今年7月、ジーコ氏がTDとして16年ぶりにチームに復帰してから、鹿島はガラリと変わった。
古参のクラブ関係者は「16年前にジーコから薫陶を受け、いまもチームに残っているのはGK曽ヶ端とMF小笠原の2人だけ。全体的にたるんだムードが流れ、フロントの選手編成もマンネリ化。観客動員も伸び悩んでいた。何よりジーコが来てから、それまで“手抜きプレー”が目立っていたレアンドロ、レオ・シルバらブラジル人助っ人の目の色が変わった。彼らにとってジーコは母国の英雄であり、頭が上がらない怖い存在だからね」と証言する。
8月、そのジーコ氏の推薦でサントス(ブラジル)からセルジーニョを獲得すると、大車輪の働きでチームは急上昇。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を初制覇し、2年ぶりのクラブW杯出場を決めた。
ジーコ氏は1991年に選手として鹿島の前身の住友金属に加入し、Jリーグを草創期から盛り上げた。94年の現役引退後も2002年に日本代表監督に就任するまで、フロントで鹿島を支えた。
実は、創設25周年を迎えたJリーグの年間表彰式(Jリーグアウォーズ=18日、横浜アリーナ)に功労者として招待され出席する予定だったが、「急きょ取りやめた。UAEに残って、鹿島のために全精力を傾けたいとのこと。それだけ打倒レアル、さらにはクラブW杯制覇に手応えを感じているということだよ」と前出の鹿島関係者が明かす。
いまの鹿島はFW鈴木優磨、MF三竿健斗をケガで欠いているが、それを感じさせないほどの充実ぶり。大岩監督をはじめ、黒崎久志FW担当コーチ、羽田憲司DF担当コーチ、佐藤洋平GKコーチ、里内猛フィジカルコーチと全員ジーコ氏の薫陶を受けた鹿島OBで固めているところが、伝統に裏打ちされた安定感を生み出している。ジーコ氏が「全員プロフェッショナル」と絶賛するスタッフだ。
また、現在鹿島には日本代表専属シェフの西芳照氏(56)が帯同している。04年3月、サッカー日本代表初の専属シェフとして西氏を招いたのが、当時監督のジーコ氏。「アウェーの海外遠征では何を食べさせられるかわからない。僕は現役時代に下剤を入れられたことさえある。お抱えのシェフは絶対に必要」との思いからだった。その西氏がいま鹿島の台所を守っている。
一方のレアルは、世界的ストライカーのクリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)が抜けた今季、ロペテギ前監督を就任からわずか14試合で解任。ソラーリ監督の下で立て直しをはかっているが、例年のような強さはない。
今年の欧州年間最優秀選手賞「バロンドール」に輝いたクロアチア代表MFモドリッチは健在だが、15日のスペインリーグ・バジェカーノ戦でMFアセンシオ、FWベンゼマが相次いで負傷途中交代。鹿島戦に新たな不安を抱えた。
鹿島は一昨年、横浜で行われたクラブW杯決勝で“クリロナ”がいたレアルと対戦し、一時はリードする大善戦。延長の末に2-4で惜敗した。鹿島の状態は一昨年よりも上だけに、「今年は勝てる」というムードが俄然盛り上がっている。
「世界的レジェンドのジーコが加わったことで、レアル側は余計危機感を強めているそうですよ」と前出鹿島関係者はほくそ笑む。番狂わせが起こってもおかしくない条件がそろっている。
◆「今年はレアルに勝てる」鹿島、大風呂敷のワケ “ジーコ効果”でチーム発奮 サッカークラブW杯(zakzak)