日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年9月2日日曜日

◆2018明治安田生命J1リーグ 第25節(オフィシャル)



安部裕葵 Hiroki.Abe




明治安田J1 第25節

首位の広島に3失点。鹿島、逆転で惨敗。

4つの大会を並行して戦う、9月の幕開け。首位相手のアウェイゲームで、鹿島が逆転負けを喫した。J1第25節、サンフレッチェ広島戦。エディオンスタジアム広島に乗り込むと、セルジーニョのJ1初得点で先制したものの、セットプレーから2失点を喫して逆転を許す。後半立ち上がりにも追加点を奪われ、反撃の得点を挙げることはできず、1-3と屈辱の結果に終わった。

4日前、鹿島はアジアの頂へ続く道を力強く進んだ。ACL準々決勝第1戦、2-0と完封勝利。聖地での“前半90分”で天津権健を圧倒し、アウェイゴールを許すことなく先勝してみせた。前半は決定機を逃し続けてしまったものの、60分にレオ シルバの強烈なボレーがゴールネットを揺らす。さらに72分、セルジーニョに待望の初得点。敵陣中央でボールを持った背番号18が迷うことなく得意の左足を振り抜くと、ワールドクラスのミドルシュートがゴールに突き刺さった。「チームメートや自分が真摯に取り組み続けたことが、結果につながった」。新戦力はそう言って笑顔を見せ、カシマスタジアムを後にした。

8月は7試合を戦い、4勝1分2敗という結果に終わった。来たる9月は4つの大会を並行して突き進み、8試合に臨むこととなる。鹿島の歩みが止まることはない。8月最終週の鹿嶋は真夏の再来を思わせる暑さに見舞われたが、選手たちはひたむきに準備を進めていった。29日には伊東が負傷により、長期離脱を強いられることが発表された。「メンバー外の代表というわけじゃないけど、みんなの顔が浮かんだ」と、久々の先発で勝利を掴んだ8月15日の長崎戦後に明かしていた背番号24。ピッチに立てない無念、険しき道のりに挑む仲間への思いとともに、一丸で突き進んでいかなければならない。

試合前日、青空のクラブハウス。リカバリー中心のメニューを経て、大一番に向けた最終調整に臨んだ。フル稼働を続ける犬飼が充実を滲ませ、負傷からの復活を遂げた安部が明るい表情でボールを追う。大幅な先発変更を繰り返しながら連戦に臨んでいる指揮官は「全ての試合で勝つつもりで、状況を踏まえて選手を選んでいる。控えている選手がいい状況でいてくれる」と、チーム全体への信頼を語っていた。



前日練習を終え、三竿健斗は「広島は全員がハードワークをするし、球際が強い印象がある」と、警戒を口にした。3月10日、ホームでの激突では痛恨のミスから決勝ゴールを招いてしまった背番号20がリベンジを誓う。長崎戦以来の試合メンバー入りとなった安部も「準備はできている」と静かに闘志を燃やしていた。



中3日でのアウェイゲームへ、大岩監督が施した先発変更は1名のみだった。右サイドバックに西を起用し、31歳を迎えた背番号22にゲームコントロールを託す。その他、GKはクォン スンテ、センターバックはチョン スンヒョンと犬飼がコンビを組み、左サイドバックは山本。ボランチはレオと健斗のペアで、2列目には遠藤と安西が並んだ。そして前線では、セルジーニョと鈴木が虎視眈々とゴールを狙う。ベンチにはGKの曽ケ端、内田、町田、永木、安部、土居、金森が座る。



前夜には雷も轟いていた広島だが、大一番の土曜日は秋の訪れを感じさせる穏やかな気候となった。曇り空に覆われたエディオンスタジアム広島に、アントラーズレッドが続々と足を運んでいく。人数では及ばなくとも、ビジタースタンドから注がれる情熱は紫を凌駕していた。首位と対峙するアウェイゲームで、鹿島の矜持を示してみせる――。ウォーミングアップに向かう選手たちに大きなチームコールが送られ、ボルテージが高まっていった。そして19時3分、ホイッスルが鳴り響いた。

立ち上がりから激しいボディコンタクトの応酬となり、中盤でルーズボールの奪い合いが繰り返される展開となった。主導権を握るべく、互いの意地がぶつかり合う。鹿島はなかなか前線でボールを収めることができずにいたが、鈴木が体を張って基準点になろうと腐心し、セルジーニョもパスの経由点としてしっかりと機能。広島が最終ラインでパスを回す場面ではブロックを組み、縦パスを入れてきたところで激しいプレスをかける。拮抗した展開で、開始10分が経過した。







少しずつ縦パスが通るようになっていた鹿島。15分、前線の2人が鮮やかなカウンターでゴールを陥れてみせる。センターサークル左側で鈴木がボールを収め、右側を走っていたセルジーニョへ。背番号18は縦へと加速して敵陣を切り裂き、対面する相手を引き付けてから左前方へスルーパスを送る。走り込んでいた鈴木は、ペナルティーエリア左側から丁寧なラストパス。鮮やかなパス交換、その終着点はもちろんセルジーニョ。右足ダイレクトで正確にインパクトされたボールが、広島のゴールネットを揺らした。1-0。セルジーニョの公式戦2試合連続得点で、鹿島が均衡を破ってみせた。









会心のゴールで先手を取った鹿島は、勢いに乗って追加点を狙う。20分にはレオがペナルティーエリア左側から中央へラストパス。走り込んでいた遠藤が左足ダイレクトで狙ったが、枠を越えてしまった。20分経過後は再びルーズボールの奪い合いが続き、互いにカウンターを狙い合う展開に。ボールが落ち着かない中、少しずつ広島に押し込まれる時間が長くなっていった。





すると26分、セットプレーから同点ゴールを許してしまう。スンヒョンが打点の高いヘディングでクリアしたプレーでファウルを取られると、ペナルティーエリア左手前からファーサイドへ飛んだボールをパトリックに頭で決められた。1-1。痛恨の失点で、試合は振り出しに戻った。

リードを失った鹿島は攻勢を強め、勝ち越しのスコアを狙いに行った。30分経過後はセカンドボールを確保する回数も増え、ボールポゼッション率を高めていく。しかし、なかなか決定機を作れずにいると、次の得点もホームチームのものだった。43分、ペナルティーエリア左側へ飛んだ相手のFK。競り合いからエリア左手前へこぼれたボールをゴール前へ入れられると、スンテが競り合いながら弾いたものの、詰めていた佐々木に押し込まれた。1-2。セットプレーから2失点を喫し、逆転を許した。ビハインドを負ったまま、ハーフタイムへ突入することとなった。



ビジタースタンドへ向かって攻撃を仕掛ける後半、意地を示さなければならない。しかし、次のスコアも広島のものだった。50分、カウンターに対応した犬飼がボール奪取を試みたものの、背後を取られて独走を許す。スンテが立ちはだかったが、パトリックのシュートがゴールネットを揺らしてしまった。1-3。重い失点で、鹿島のビハインドは2点になってしまった。

それでも、まだ40分以上が残されている。失点から5分後、波状攻撃を仕掛けると、クロスに反応したセルジーニョがペナルティーエリア左奥からボレーシュート。テクニックの結晶が枠を捉えたが、無情にも右ポストを直撃してしまった。こぼれ球に詰めたレオのシュートも枠を越え、1点差に迫ることができなかった。









大岩監督は61分、復帰を果たした安部を投入。攻撃陣の活性化を図る。65分には相手のセットプレーをクリアしてカウンターを仕掛け、中盤右サイドでの競り合いからレオがこぼれ球を拾って背後のスペースへ。しかし、競り合いでの広島のファウルで笛が鳴り、プレーが止まってしまった。レオは独走してペナルティーエリアに入ることができる状態にあったが、アドバンテージの判定は下されなかった。





2点差のまま、残り20分を切った。大岩監督は金森を前線に配してゴールへの希望を託すが、広島の守備を崩すことができない。71分、鈴木が放ったバイシクルショットは枠の左へ。77分に仕掛けた波状攻撃、ペナルティーエリア内での密集から西が放ったシュートも相手GKに阻まれた。終盤には内田を投入して西を2列目にあげ、スンヒョンが前線に残るパワープレーも敢行。しかし、最後までゴールは生まれなかった。









1-3。逆転での惨敗で、鹿島が今季9敗目を喫した。首位との差は19ポイント、残りは9試合。暫定8位に転落した。次戦は4日後、5日のルヴァン杯準々決勝第1戦だ。カシマスタジアムで再び迎える“前半90分”で、川崎Fと激突する。タイトル獲得への道のり、新たな扉を開くホームゲームだ。チームは明日、鹿嶋へ帰還する。屈辱を胸に刻んで這い上がるしかない。





【この試合のトピックス】
・J1でのアウェイ広島戦で、2012年以来の敗戦を期した。
・セルジーニョがJ1初得点。公式戦2試合連続得点を記録した。
・西が公式戦2試合ぶりの先発復帰を果たした。
・安部が8月15日のJ1第22節長崎戦以来の試合メンバー入り。途中出場でピッチに立った。





監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・相手の守備のアプローチに対し、サイドの幅を使って、もっと相手を広げること。
・一人ひとりの運動量をもっと上げよう。
・集中して試合に入り、絶対に逆転しよう!

サンフレッチェ広島:城福 浩
・攻撃はボランチがタイミングよくボールを受けてやること。
・守備はボールサイドで厳しくいくこと。
・ここからだぞ!

[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半の入りは非常に良かったが、前半のうちにセットプレー2つで失点をして相手に勢いを与えてしまったことが非常に残念だった。後半立ち上がりの失点も含めて、相手に勢いをつけさせてしまった。失点の仕方が非常に残念だった。

Q. ACLの天津権健戦から先発をほとんど変更しなかったが、理由は?

A. ACLで非常にいい形で勝利をしたこともあって、本人のコンディションを判断しながら決めた。少し重いだろうと想定していたが、後半になって流れが来ることを予想しながら起用した。前半のうちに失点をしてしまったので、プラン通りにはいかなかった。

Q. 前半から相手のタイトなマークに苦しんだが、どのような経路でボールを運ぼうとしていたのか?そして選手交代の意図は?

A. ビルドアップについては、相手のハイプレッシャーに対してサイドを使いながら、サイドの選手をおびき出す形を狙っていた。交代については、失点をして点差が開いていたので、積極的に背後を狙おうとした。背後を突くことで相手のラインを下げようと考えていた。




サンフレッチェ広島:城福 浩
最近、ホームで勝てていなかったので、このスタジアムに応援に来てくださったサポーターの方々と喜び合いたいと思っていた。それは選手たちも同じ。日本代表に選ばれた2人も、この試合に集中しているという証が欲しかったと思う。いい形で送り出したかったので、結果が出て良かった。最初の失点は相手のストロングポイントが出たが、プレスに強く行けなければあのような形になる。抑えきれずに反省しなければいけない。ただその後、試合の中で修正できたことは非常に大きい。得点は流れるようなパスワークではなかったが、今日は裏(を狙うパス)と足下(へのパス)のバランスが非常に良かった。何よりも、相手が前掛かりになった時にしっかり中を閉じて、2失点目をせずに勝ち点3を取れたことは非常に自信になる。これを続けていきたい。


選手コメント

[試合後]

【山本 脩斗】
前半は先制した後も自分たちのペースでプレーできず、ボールの失い方も悪かった。カウンターで押し込まれてしまった。低い位置での守備でパワーを使ってしまった。後半は逆転しようという気持ちで臨んだけど、悔しい負けになってしまった。

【安西 幸輝】
ボールを受けた回数が少なかった。4-4-2でブロックを組む相手に、もっとサイドで起点を作ることができれば良かった。ボールに触る回数を増やしてリズムを作っていければ良かった。

【鈴木 優磨】
パトリック選手にレベルの違いを見せ付けられた。自分が点を取れず、パトリック選手は決めた。勝たせられる選手としての比較で、完敗だった。

【犬飼 智也】
相手の圧力が強いことはわかっていた。セットプレーから2失点をして、取り返すチャンスはあったけど、自分の対応の悪さで3点目を失ってしまった。もっとやり方があったと思う。

【安部 裕葵】
個人でプレーするわけではないけど、そこを突き詰めることでチームプレーにつながると思う。自分がやれば、周りのみんなもついてくる。そこは年齢などは関係ない。




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