日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年12月27日木曜日

◆内田篤人と昌子源、クラブ関係者が クラブW杯で感じた鹿島と世界の差。(Number)






 年間60試合を戦ったのち、中3日、中2日という日程で欧州王者レアル・マドリー、南米王者リーベルプレートと対戦した鹿島アントラーズ。1-3、0-4で連敗という結果は当然、受け入れがたいものではあるが、それ以上にピッチに立った選手たちの衝撃も小さくはなかっただろう。

 2016年クラブW杯では南米王者を破って決勝まで進み、レアル・マドリー相手に延長戦にまで追い込んだ。その2年後、また違う形で彼らを刺激したに違いない。

 若い選手が衝撃と刺激を得たのは言うまでもないが、ベテランや監督にとっても、考えるべき課題や気づきは多い。


内田が語った「歴史」の違い。


 3位決定戦後、内田篤人は欧州との違いを「歴史」だと語った。

「10代の頃にヤナギ(柳沢敦)さんに欧州と日本の違いについて訊いたとき、『歴史』だと言っていた。それは僕自身シャルケへ行って痛感したこと。その歴史とか時間とかを埋めていくにはどうしたらいいのか? シャルケのユースなんてさ、すごい化け物がたくさんいた。ああいう選手を作れる環境というのは、まだまだ日本では時間がかかると思う。

 いろんな問題や課題がある。それはひとつではないと思うんだよね。プレーヤーとして、向こうへ行ってこういうところが違うな、足りないなって思うところはいっぱいあるから。一度は勝つことがあるかもしれないけど、南米やヨーロッパのクラブと肩を並べたいなら、ひとつの問題ではないし、短期間で埋まるものではない。でかい規模の話をしちゃってるけど。その差っていうのはみなさんが思っている以上に大きい」

 シャルケ時代とは違い、鹿島アントラーズのユニフォームを着て、日本やアジアを代表してその舞台に立ったからこそ、思うところがたくさんあった――そう内田は話した。


昌子が話したトップへの意欲。


 負傷のため、3位決定戦に出場できなかった昌子源もこう言う。

「言い方は悪くなるかもしれないけど、世界の10番目、20番目の相手を知るより、いきなりトップを知るというのはいいことだと僕は思う。この大会のトップチームは本気ではなかったかもしれないけれど、トップを知ったからこそ、そのトップを目指していける。

 中くらいのチームに勝ったとしても、まだ上にある場所は未知のままだから。トップとの差を少しでも埋めることができて、初めて向こうは1秒目から本気になってくれるかもしれない。そういうふうにやっていきたいと思う。そのためにも環境を含めて、チーム全体を変えていく必要があるんじゃないか。

 もちろんJリーグではアントラーズが強いし、常勝軍団ということで新しい子が入る。2年目の(安部)裕葵がこうやって堂々とプレーできるのは、鹿島だから。ただそれは、あくまでも日本での話。これが仮に裕葵とか僕とか、誰かがレアルで1年間練習をしたら、絶対にもっとうまくなる。鹿島ではBチームで紅白戦を戦っているだけでうまくなれると言うけど、それをアジア基準から世界基準へとどんどん上げていく必要がある。

 鹿島もアジアを獲ったけど、初めてじゃないですか? 次から連覇だったり、2回、3回とアジアを獲って、鹿島で練習したらアジアで勝てるというようになっていかなくちゃいけない」


レアル相手に味わった絶望感。


 昌子自身も鹿島で成長したひとりだ。しかし、日本代表として戦ったW杯も今回のクラブW杯でも「通用しなかった」という想いが強いという。

「世界のレベルを知って、レアルとやって絶望感を味わって、そうやって強くなっていく。やっぱり、鹿島にいる選手が数多くW杯を戦えば、自然と目線は世界に向かうだろうし、そうやってチームとしての基準を上げていく必要がある。そのうえで大事なのが環境ですよね。そういう練習からの雰囲気もそうだし、もしかしたら施設などにも関係していく話かもしれない。

 トレーニング施設にしても、25年前はJリーグでも群を抜いている、画期的な施設を持っていた。でも、他のクラブも新しい施設を作ったと聞くからね。伝統というのを大事にしていくのと同時に、変化していくことも大事だと思う。選手もクラブの雰囲気も、施設も、あらゆることすべてを日本のレベルに合わせる必要はないと思う」


世界トップという「大きさ」。


 世界の名門クラブを前にしたとき、やはり過剰なリスペクトがあったと昌子は振り返る。

「今回は選手だけじゃなくて、クラブとしても相手に対して、リスペクトしすぎるようなところがあったと思う。だから個人だけの問題じゃない。たったひとりずば抜けた選手がいたら、レアルに勝てますかというと、 勝てないと思う。試合に出る11人だけじゃなくて、チームとしてもクラブとしても、世界と引けを取らない存在に思われるようにならなくちゃいけない。アントラーズとして、そういうのを感じた大会だった」

 レアル戦の翌日。大岩剛監督は、世界と戦ったときに感じた違いを「差」という距離感ではなく、「大きさ」という言葉で表現している。

「試合後、選手たちに聞いても『いろいろなところに違いがあった』という話をしていた。そういう気づきというのは、サッカー選手にとって非常に大事なこと。自分のレベルを知ったり、プロフェッショナルとはどうあるべきかとか、いろんな気づきを得られた。

 そういうものプラス、もう少しチームとしても色んなバリエーションというか、チームとしての懐というか、幅というか……わからないけれど、いろんなものに対応できる大きさ、チーム力の大きさ、幅の大きさ。そういう大きさというものが、レベルが上がれば必要になってくる。これは選手だけじゃなくて、スタッフも含めてね。だからこそ無駄にしたくない」


監督人生のターニングポイント。


 2年前はコーチとして戦ったクラブW杯。監督として挑んだ今回はまったく違った。そしてレアル戦は指導者としての分岐点になるという。

「僕にとっても、多くの気づきがあったというか。この悔しさは、僕にとってはエネルギーになるから。今後の監督人生もそうだし、このチームを率いる上では絶対に忘れてはいけない試合のひとつになった。監督人生において、非常に大きいターニングポイントになる、と思います。レベルアップしなければならないという気にさせられた」


黒子らの力も凄かった。


 そんな気づきは、クラブを支える黒子たちにもあった。

「2度目の対戦ということで、1度目には見えなかった様々なものが見えた」

 鹿島クラブ関係者は語った。もちろん世界10指に入るビッグクラブの予算規模は大きい。それはピッチに立つ選手の顔ぶれを見ても歴然としている。

 しかし、それ以上に選手を支えるメディカルやメディアなど、黒子の存在の大きさを改めて痛感したということなのかもしれない。真剣勝負の舞台だからこそ、チームスタッフらの仕事、舞台裏を目の当たりにする機会は多いはずだ。

 視察へ行っただけでは見られない働きぶりを、対戦相手だからこそうかがい知れる。世界を知るのはピッチに立った選手たちだけでも、ベンチに座る指揮官だけでもない。クラブを運営する人間にとっても、世界を間近に体験できる。それがクラブW杯だった。

「2年前戦って、みんなが『行けるな』と思っていたとしたら、大間違い。W杯みたいじゃん。南アフリカ行って、行けるなと思ってブラジルで、ボン! でも、それはやらなくちゃわからないからね」

 W杯を例に出して語ったのは、内田だった。ベスト16進出を果たした南アフリカ大会。しかし、4年後のブラジル大会ではグループリーグで惨敗した。この事実だけをとっても、内田の言う「歴史」の重さを痛感せざるを得ない。代表でもクラブでも日本は同じことを繰り返しただけなのかもしれない。


クラブの土台を世界基準に。


 代表チームが戦うW杯は、世界の頂点を決める戦いだ。しかし短期決戦のため、出場チームの多くは即席チームでもある。だからこそ、より個の能力や即興性、国の土台が問われる大会だとも言える。

 かたやクラブW杯は、常設チームの戦いである。チームの組織力が大きな差として現れるのだ。そして、チームを形成するためのクラブの総合力も示される。

 どこでプレーするかは選手の自由だし、この大会を機に欧州のクラブへ挑戦したいという選手が出てくるのも納得はできる。

 しかし、同時に「日本サッカー界」という眼で見たとき、選手の流出を嘆く前に、クラブとしての土台を世界基準にすることは急務だと感じる。

 それはトッププレーヤーを加入させるだけで築けるものでもないし、指導者を短期的に招聘しただけでは解決できないことだとも感じる。南米の名門クラブも欧州への選手供給源となっているが、それでも彼らには変わらない格がある。 


ジーコの存在が基盤にあるから。


 では、鹿島アントラーズはどうか。ジーコの存在、思想はクラブの「カルチャー」であり、DNAの基盤となり、今も受け継がれている。

 2018年、25周年を機にクラブの核を再確認するため、ジーコをテクニカルディレクターとして招聘した。

「今の多くの選手たちにとって、ジーコの存在は誰かから教えてもらうだけのものだった。でも、実際ジーコが来て、ミーティングで話すのを聞くだけで大きく違う」と鈴木満強化部長は語る。

 クラブとしても生まれ変わろうとしている機運のなか、世界のトップを知ることができたクラブW杯が、鹿島アントラーズにとってもターニングポイントになってほしい。




◆内田篤人と昌子源、クラブ関係者が クラブW杯で感じた鹿島と世界の差。(Number)





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