日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年5月3日月曜日

◆19歳の背番号13が鹿島アントラーズ復調の原動力に。新体制で輝きを増す荒木遼太郎のプレーとは?【コラム】(フットボールチャンネル)






明治安田生命J1リーグ第12節、横浜FC対鹿島アントラーズが1日に行われ、0-3で鹿島が勝利した。相馬直樹監督が就任した鹿島はこれでリーグ戦2勝1分と復調しつつある。新体制でセカンドトップを務める荒木遼太郎は注目に値するパフォーマンスを見せている。(取材・文:元川悦子)


手薄な攻撃陣で抜擢された19歳の2トップ


 4月14日にザーゴ前監督が解任され、クラブレジェンドの相馬直樹コーチが監督に昇格する形で、鹿島アントラーズは再建に乗り出した。

「『常勝』といっていただいているが、我々は今下位に低迷している。その事実を受け入れて、チャレンジャーとして戦わなければいけない」と新指揮官は強調したが、原点回帰を図った彼らは着実に結果を出している。

 新体制初戦となった4月17日のJ1・徳島ヴォルティス戦を伝統の”ウノゼロ”(1-0)で勝利し、20日のYBCルヴァンカップ・北海道コンサドーレ札幌戦も3-0で圧勝。続くJ1・ヴィッセル神戸戦とルヴァンカップ・サガン鳥栖戦は連続ドローに終わったものの、「負けない鹿島」を取り戻しつつあるのは確かだ。

 迎えた5月1日のJ1・横浜FC戦。最下位に沈む相手からは絶対に勝ち点3を奪わなければいけなかった。しかし、エヴェラウド、上田綺世をケガなどで欠いた。攻撃陣が手薄になる中、期待を寄せられたのが染野唯月と荒木遼太郎の19歳2トップだった。

「染野につねに言っていることは、一番先頭の選手は相手の背後をしっかり取りに行くこと。それで他の動き出しが決まってくる」と相馬監督が言うように、染野に託されたのは敵の最終ラインの裏に抜け出すこと。セカンドトップの荒木はその動きに呼応しつつ、いい距離感を保ちながら虎視眈々とゴール狙っていくことが強く求められた。


鹿島は新体制で5戦無敗


 2人の好連携が明確な形となって表れたのが、前半12分の先制点。中央の土居聖真が右サイドを上がってきた常本佳吾に展開する。この折り返しをニアサイドにいた荒木が右足を振り抜くと、DFに当たってこぼれたボールを白崎凌兵がヘッド押し込んだ。

 土居がスルーパスを出した時点で染野はDF陣を引っ張り、荒木のスペースを空けていた。こういった動きがチームを活性化するのだ。

 同期のライバルに刺激を受ける荒木は、前半終了間際のPK奪取のシーンでも躍動する。染野とのワンツーからドリブルで抜け出した背番号13はペナルティエリアに侵入。3人に寄せられる中、強引な突破で田代真一のファウルを誘った。最終的に決めたのは土居だが、事実上、荒木のゴールと言ってもいい。ここまでJ1・4得点とチーム得点王に君臨する19歳は、自身の数字にならなかったことで、少なからず悔しさも覚えたのではないか。

 2-0で折り返した後半は横浜FCに押し込まれながらも、組織的な守備と球際や寄せの激しさを取り戻した鹿島の守備が安定。終盤には町田浩樹のダメ押し弾も飛び出し、3-0で勝利をつかむことができた。これで相馬体制5試合無敗。リーグ戦に限って言えば、2勝1分で順位も暫定10位に浮上。復活の兆しが見え始めている。


輝きを増す19歳の背番号13


 その原動力の1人が荒木だというのは、誰もが認めるところ。新体制移行後からセカンドトップに入ったことで、彼の得点感覚とシュート技術の高さがより強く押し出されるようになった。

 左サイドから中央へとポジションを移した直後、背番号13はこんな話をしていた。

「トップ下? 綺世君と自由に連携を取りながらできるのでやりやすい。監督からは特に指示は受けてないですけど、守備だったら自分と綺世君のところ2枚で2トップみたいになって守備をかけていくというのは言われています」

 前線の関係性は最前線のパートナーが染野に代わっても同じ。守備時は2トップのように高い位置からプレスをかけてボールを奪いに行き、攻撃時はタテ関係になって染野が空けてくれたスペースを活かしてゴールを奪う。ときには自身が中盤に下がってつなぎ役をこなしながら、最終的にはゴール前に飛び出していく。

 こういったプレーを自由自在に出せるようになったからこそ、荒木は輝きを増しているのだ。リーグ戦では8試合得点から遠ざかっているものの、1つきっかけをつかめれば、ゴール量産も十分可能だろう。


悔しい1年目から飛躍の2年目へ、ブレイクを期す荒木遼太郎


 高卒2年目で攻撃の大黒柱に君臨する選手というのは、常勝軍団の長い歴史を振り返ってもそうそうないこと。Jリーグで主力級の働きを見せたのは25試合出場8得点という数字を残した柳沢敦くらい。小笠原満男にしても高卒2年目は15試合出場4得点とフル稼働したわけではないし、本山雅志も18試合出場無得点とゴールがない。今季の荒木には先輩たちを超えるチャンスが大いにある。それだけのポテンシャルが今の彼には感じられるのだ。

「プロ1年目の去年は100%のパフォーマンスを出せないことが多くて、悔しい年になったし、チームが勢いを出したいときに役割を果たせなかった。だからこそ、今年はやらないといけない。チームの同世代に負けたくないのはありますけど、(ファン・)アラーノとかにも負けたくない。とにかく試合に出続けること。今年は自分のポジションの競争がすごいので、その中で結果を出し続けて、試合に出続けることが大事だと思ってます」

 今季開幕当初にこう語気を強めた荒木は今のところ言葉通りの歩みを見せている。ただ、鹿島がさらに順位を上げ、上位争いに割って入ろうと思うなら、さらなるブレイクが必要不可欠だ。

 柳沢、興梠慎三という偉大な先人が背負った背番号13を自ら譲り受けた以上、重責を果たさなければいけないという自覚は強いはず。その覚悟と決意をここからのパフォーマンスと結果で力強く証明してもらいたい。

(取材・文:元川悦子)

【了】




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