底知れぬポテンシャルは誰もが認めるところ
喉から手が出るほどに待ち望んでいたJ1初ゴールがついに決まった。
プロ2年目を迎える鹿島アントラーズの松村優太は「目に見える結果が欲しいし、少しでも早く結果を出さないといけない。まだ若いからなんていっていられない」と公言してはばからなかった。持ち味である高速ドリブルよろしく、困難にぶち当たっても突き抜けていこうとするギラギラ感、意志の強さにあふれている。
これまでは試合途中からピッチに飛び出し、流れを変えるスーパーサブ的な役割が多かった。だが、5月9日、ホームでのFC東京戦では7試合ぶりのスタメン出場。密かに期するものがあった。
「監督から、打てる時はどんどん打っていこうという話があったので、(積極的に)狙っていこうと思っていた」
好機到来は前半終了間際のことだ。1点のリードを守る鹿島が左サイドでボールを動かす。それに呼応するかのように内側にポジションを取っていた松村に、左SBの永戸勝也から横パスが入った。
「前向きで、良い形でボールを受けられたので、あとは相手のタイミングを外すだけかなと。(迷うことなく)打ってみようと思った」
ペナルティエリア外から放たれた低弾道ショットは迫りくる相手をものともせず、左ポストの根元内側に当たってゴールの中に転がり込んだ。
まさに閃光一撃。「松村、右足だぁー!」。試合実況のアナウンサーも思わず叫び声を上げるほどだった。
スタメンに抜擢した相馬直樹監督は「昨シーズンから自分の良さを出せるようになってきたし、開幕前のキャンプの時からコンディションが良く、自信をつけていた。ただ、まだまだ自分を出し切れていないところもある。今日のゴールでひとつ殻を破ってくれたら、と。もっとできる選手だから」と、期待を寄せている。
Jリーグ通算21試合目での初ゴールに松村自身、喜びもひとしおだが、いつまでも浸っているわけではない。これはもう通過点にすぎない。
開幕前のオンライン会見で今季の目標を問われた時、「まだJリーグ初ゴールも決めていないので、具体的な数字を挙げるのは難しいけれど、5ゴール5アシストくらいで」と答えていた。だが、本心はこんなものじゃないはずだ。
「取れるだけ取る」
そう顔に書いてあった。ゴールに向かう貪欲さは人一倍で、「カットインからのシュート練習をオフシーズンから重点的に練習してきた」と明かしている。
高速ドリブラーとして鳴らすサイドアタッカーの松村。技術的に粗削りな面が散見されるし、ボールロストも少なくない。とはいえ、底知れぬポテンシャルは誰もが認めるところだろう。
Jリーグでの2点目はもうすぐに見られるかもしれない。
取材・文●小室 功(オフィス・プリマベーラ)
◆野心に燃える鹿島・松村優太の表情から読み取れた“取れるだけ取る”。指揮官は「もっとできる選手」と期待(サッカーダイジェスト)