日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年10月27日金曜日

◆Jリーグの空洞化とチーム作り(スポニチ)



大迫勇也


 南米の二大強国、ブラジルとアルゼンチンは選手輸出大国として知られている。そのため国内リーグは年齢的に働き盛りの層が薄くなる空洞化が起こっていたが、Jリーグもそうなりつつあるようだ。

 検討中のシーズン移行が実現し、欧州主要リーグとカレンダーを合わせるとなれば、これまで以上に欧州への流出は増えていくだろう。一時期の若年層の青田買い的な移籍は少し鎮静化しているものの、Jリーグを介さずに欧州クラブと契約するケースも出てきた。いずれにしても若手の欧州移籍の流れは止まらないと思われる。

 現在の日本代表のメンバーはJリーグを経験している。とはいえ、在籍年数はいずれも長くはない。川崎フロンターレでセンセーショナルな活躍ぶりだった三笘薫がJリーグでプレーしたのは1年半にすぎない。冨安健洋は高校生のときにアビスパ福岡でデビューして2年ほどプレーしたが、2年目にJ2へ降格していたので一般的には無名のままシントトロイデンへ移籍している。板倉滉は川崎Fから期限付き移籍したベガルタ仙台で活躍したが、それでも出場したのは24試合にすぎない。久保建英、堂安律、上田綺世、菅原由勢もJで活躍しはじめたと思ったら、欧州へ移籍してしまったという印象である。

 選手としてのピークを迎えたのはいずれも欧州へ移籍してからで、多くの日本のファンは代表戦でしか全盛期のプレーを直接見る機会はないわけだ。

 一方、欧州からJへ帰って来る選手もいる。中堅年齢層の空洞化が顕著だったアルゼンチンではエンソ・フランチェスコリ、フアン・ロマン・リケルメ、フアン・セバスチャン・ベロンといったスターが欧州から帰還して活躍、リーグを牽引した。Jでも今季優勝を狙うヴィッセル神戸の原動力となっているのは大迫勇也、武藤嘉紀の帰還組だ。セレッソ大阪では香川真司がボランチにポジションを1つ下げて新境地を拓いている。鹿島アントラーズも鈴木優磨、植田直通が欧州から戻って攻守の中心となった。

 今季、浦和レッズにシーズン途中で加入した中島翔哉、安部裕葵は負傷などで欧州では不完全燃焼だったが、Jリーグで復活するかもしれない。鹿島アントラーズには柴崎岳が戻ってきた。横浜F・マリノスで復活を果たした宮市亮の例もあるので期待したい。

 欧州から戻ってきた経験豊富なベテランと、これから欧州へ渡る気鋭の若手。異なる世代の組み合わせは、今後のJリーグにおいてチーム作りのカギになりそうだ。ただ、25歳前後の中堅層は外国籍選手に依存せざるをえないだろうから、そこに良い人材を確保できるかどうかも重要かもしれない。以前のように、若手を育てて数年後にチームのピークを設定する強化策は難しく、新たな現実に即した編成に成功したチームが有利になる。(西部謙司=スポーツライター)





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