日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年10月4日水曜日

◆U22日本代表、北朝鮮との“激闘”制し4強へ! 「苦しい前半」を経て、大岩監督がハーフタイムに伝えたこととは(サッカーキング)



大岩剛


 アジア版オリンピックとして位置付けられるアジア競技大会。そのうち、男子サッカーは9月19日に開幕し、10月1日の準々決勝を経て4強が出そろった。

 大会の年齢制限より2歳年少のU-22日本代表は、準々決勝でU-24北朝鮮代表と対戦。3人まで起用できるオーバーエイジ選手も活用してこの大会に臨んできた相手と激戦を展開しつつ、2-1と勝利。4強へと駒を進めた。

 この試合、ゲームの中身よりも終了後に起こった北朝鮮の選手たちによる審判への猛抗議、あるいは試合中に日本のスタッフから給水ボトルを奪うシーンなどばかりに注目が集まってしまった(当該スタッフは散々ネタにされているようである)。

 試合後、記者会見に臨んだ大岩剛監督はこの準々決勝について「ノーマルな試合だったと思っている」と回答している。試合中に北朝鮮の選手が見せたラフプレーについても含めての問いだっただけに、海外メディアには凄まじく豪胆な監督という印象を与える回答だったが、当の本人は「何かを引き出そうという意図を感じる質問だったからね」と笑って言いつつ、こう付け加えた。

「どうしても試合後のことに注目がいってしまうし、それについて言わせたい方がいるのもわかっている。北朝鮮のプレーに激しさは確かにあったし、それに対して前半の我々が自分たちのやりたいことをできなくなっていたのは事実。ただ、試合を通じて観てもらえば、やり方を修正しながら対応していけるようになった試合でもあると思っている」(大岩監督)

 この試合、日本の選手は序盤から明らかに戸惑っていた。指揮官が「選手たちの想像以上の圧力があったのだと思う」と語ったように、開始と同時に前線から激しいプレスをかけ、強い当たりを繰り返してきた北朝鮮に対して、「アップアップになってしまった」(DF吉田真那斗=鹿屋体育大学)面は否めない。ボールを持っている選手も持っていない選手も、明らかに普段のプレーを出せなくなっていた。

「取るべきポジションを取れていないし、色々な部分で普通にやるべきことをやれなくなっていた。『ちょっと怖がりすぎているな』と感じていた」(大岩監督)

 実のところ、北朝鮮の激しいプレッシングを受けることも、それに選手たちが戸惑うであろうことも想定はしていた。ただ、「思いのほか、(対応できるようになるまで)長い時間がかかってしまった」のは指揮官にとって誤算だった。コンタクトプレーでの苦戦が続き、あわや失点という場面も作られ、逆に日本のチャンスはほぼ生まれない。「苦しい前半になっていた」(大岩監督)。

 この点について大岩監督は「もっと整理しておいてあげれば良かったかもしれない」と言いつつ、「ただ、与え過ぎてしまっても彼らのためにならないので」とハーフタイムにあらためて立ち位置を修正し、サッカー的な要素でチームを立て直す。

「立ち位置を変えて、相手のプレスをどういなして、どう攻撃するか。その変化をできた。今日(試合翌日)に選手たちには伝えましたけど、『これって普通のことだよね』ということ。相手のやり方があって、それを把握しながら必要であれば、自分たちから変化する。後半、選手たちはそれをしっかりやって上回ってくれた。その流れはサッカーとして『ノーマル』だと思っているということです」

 後半立ち上がりの51分、ロングフィードを使って相手の急所をえぐるDF馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)のプレーを起点に、MF佐藤恵允(ブレーメン)が抜け出してクロス。これをFW内野航太郎(筑波大学)が押し込んで先制点。その後、北朝鮮のミドルシュートで同点に追い付かれる窮地もあったが、佐藤とMF西川潤(サガン鳥栖)の鮮やかなコンビネーションプレーから得たPKを、MF松村優太(鹿島アントラーズ)が蹴り込んで勝ち越しに成功。そのまま逃げ切っての勝利となった。

「苦戦はしましたけど、そもそもうまくいくことばかりじゃないのは当たり前。勝ち上がれば上がるほど、レベルが上がれば上がるほど、そこで何をするかが問われてくる」(大岩監督)

 国際試合の経験が少ない選手たちも多い今回の代表だけに、あらためて「この大会の経験は本当に貴重」とも感じていると言う。

「日本にはないテンションで向かって来るチームとの試合を味わえる。鹿島アントラーズの監督としてAFCチャンピオンズリーグを戦っているときにも感じていましたが、日本の感覚のままだと危うい試合になってしまう。だから本当に大事な時間を過ごしているとは言えますね」(大岩監督)

 4強進出でメダルまであと1勝という形になったU-22日本代表。今回のチームの目的は単に大会で結果を出すことだけではないが、結果を出したからこそ体感できる経験というのもある。北朝鮮とのシビアな激戦を制し、準決勝へ。さらなる特別な経験を積み重ねられるであろう決勝へ向け、若き日本の選手たちの挑戦は続く。

取材・文=川端暁彦




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