日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年11月18日土曜日

◆上田綺世の「図抜けた才」とは? 「積み重ねた4年間」とサッカー日本代表で見せる成長【コラム】(フットボールチャンネル)



上田綺世


 それでも開始早々の4分に谷口の縦パスを堂安がヒールで流し、鎌田がペナルティエリア(PA)内に力強く侵入するなど、相手の背後やギャップを突こうというアクションを積極的に行い、攻略の糸口を探り続けた。

「相手に引かれてボールを持てる分、あまりリスクを冒さずに仕掛けないでボールをずっと握っちゃって、気が付けば45分経ってるみたいな展開が一番ストレスが溜まる」と堂安も前日にコメントしていたが、その悪循環を打破するには、早い時間帯の先制点が是が非でも必要だった。

 それを奪ったのが、エースFW候補筆頭の上田。11分、PA左外の位置から南野が浮き球のパスを送った瞬間、背番号9は背後に流れながらヘディングでボールを流し込み、ついにゴールをこじ開けた。

「スペースがない中でも背後の動きでわずかなスペースを作る。自分が受けるのもそうだけど、それを継続的にやる意識を持っていた。真ん中でいい形でボールをもらえましたし、(南野の)ボールがよかった」と彼はチームを楽にさせた一撃を振り返った。

 上田のヘディングの滞空時間の長さや高さというのは、11月7日のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)・ラツィオ戦終了間際の決定機を見ても分かる通り、世界トップクラスと言っても過言ではない。

 鹿島アントラーズのレジェンド・柳沢敦も「スピード感やパワフルさ、ボールを受けてすぐにゴールに向かえる体の向きという点で、綺世は本当に頭抜けている。(小笠原)満男も『自分が見てきた中で一番ヘディングのうまいFWだ』と絶賛していました」と語ったほどで、ミャンマー相手には十分すぎる迫力があった。


サッカー日本代表のエースへ


「個の力で違いを作る」という仕事を確実に遂行した上田はさらにゴールを重ねる。前半終了間際のクイックリスタートから堂安のスルーパスに反応して相手の背後に抜け出し右足を振り抜いた2点目。南野のラストパスに合わせてDF2枚の間に侵入して右足アウトに瞬間的に持ち替えて決めた50分の3点目と、多彩な得点パターンは見る者を大いに魅了した。日本は最終的に5-0で勝利したが、上田の得点能力の高さが光ったゲームだったのは紛れもない事実である。

「格下のミャンマー戦でハットトリックをしたところで頭抜けた点取り屋になれるわけではない」といったネガティブな意見も聞こえてくるかもしれないが、公式戦のハットトリックはやはり意味が違う。2019年のコパ・アメリカ(南米選手権)、同年のEAFF E-1サッカー選手権、2022年のカタールW杯・コスタリカ代表戦と何度か重圧のかかる舞台に立ちながら、ゴールという仕事のできなかった上田にしてみれば、大きな一歩に他ならないだろう。

 代表50ゴールの岡崎慎司や25ゴールの大迫勇也ら先輩FWたちもアジアの格下相手に固め取りし、通算得点数を引き上げた。上田の所属先のライバル、サンティアゴ・ヒメネスも今季は格下相手に凄まじいゴールラッシュを示し、存在感を一気に高めている。FWにとってゴールという結果がどれだけ重要かというのは、上田自身が痛感しているはずだ。

 この日のハットトリックで彼も代表通算5得点と数字を伸ばし、日本の得点源に名乗りを挙げた。まだまだ先人たちのレベルには遠く及ばないが、確固たるFWの出現を待ち望んでいる森保監督にとっても朗報と言えそうだ。


目覚ましい成長の証


「4年前は点を取れずに苦しんだ? 今は環境も違うし、成長している自負もある。当時から積み重ねた4年間があると思っています」と本人も神妙な面持ちでコメントした。

 過去の中山雅史や前田遼一らを見ても分かる通り、FWというのはそもそも完成までに時間がかかる選手が多い。上田も法政大学時代から得点感覚には定評があったが、好不調の波が大きかった。昨夏のベルギー移籍、今夏のフェイエノールトへのステップアップを経て、ボールを収めて起点を作る仕事にも精力的にトライ。プレーの幅を広げている今は彼にとって一番成長できる時期なのだろう。2023年に入ってから代表5ゴールという実績、前線での存在感が目覚ましい前進の証拠ではないか。

「予選とか公式戦は勝つことが最重要。難しい試合もあると僕は思っている。今日も前半に点を取れなかったらちょっとややこしい試合になっていたかもしれない。そうならないきっかけを作れたことは僕の中では評価できると思います」と安堵感を吐露した上田。だが、これはあくまで序章に過ぎない。

 次戦・シリア戦では浅野拓磨が左サイド起用される可能性もあり、上田が2試合連続でスタメン出場することも考えられる。よりレベルの高い相手にも同様の仕事ぶりを見せられれば、指揮官のチームメートの信頼も高まるはず。ここから一気に突き抜けてほしいものである。

(取材・文:元川悦子)




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