日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年12月23日金曜日

◆「鹿島は賢い」スペインサッカーの重鎮が、 クラブW杯を詳細に分析(Sportiva)


https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2016/12/23/post_1184/

スペイン人指導者が見た鹿島アントラーズ(1)

 クラブワールドカップ準決勝。鹿島アントラーズは南米代表のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)を3-0で下している。快挙だった。これによって上げ潮に乗ったことが、決勝レアル・マドリード戦の奮闘にもつながった。そもそも、鹿島はいかにして南米の雄を倒したのか?

「鹿島には運があった。ポゼッションは4対6で分が悪く、多くの決定機を作られ、ポストが2度、シュートを防いでくれた。スコアはどう転んでもおかしくなかった。しかし鹿島は自分たちの限界をよく知り、賢く立ち回っている。FW、MF、DF、GKの各ラインがグループとして連帯し、実にソリッドな守りだった」



 ミケル・エチャリは端的に説明している。エチャリはリーガエスパニョーラの名門、レアル・ソシエダで約20年にわたり強化部長やコーチなどを経験。スカウティング力に定評があり、ウナイ・エメリ(現パリ・サンジェルマン)、ガイスカ・ガリターノ(現デポルティボ・ラコルーニャ)、ファン・マヌエル・リージョ(ジョゼップ・グアルディオラが師と仰ぐ存在)らトップレベルの指導者にも大きな影響を与える。

「勝負の分岐点は、後半の選手交代とシステム変更だろう」

 そう語るエチャリの分析は鋭かった。

「鹿島は4-4-2、ナシオナルは4-2-3-1の形で組み合っている。鹿島の2トップは、数的不利の中でも前線を走り回り、ボールの出どころにフタをした。FWは90分間を考えず、ガソリンがなくなるまで走るプランだったに違いない。2トップの猛追によって、鹿島の守備ブロックは安定を得ていた。

 劣勢ながらも鹿島は攻防を繰り返し、最初にチャンスを作っている。前半5分、CKから山本脩斗が際どいヘディングシュート。山本は守備ではチーム一脆かったが、攻撃センスで挽回していた。また、前半18分には柴崎岳が相手の裏を取るようなドリブルでバックラインの隙間を突破。高い技術を用い、鮮やかなプレーだったが、GKとの1対1は防がれている」

 前半24分、ナシオナルは左サイドからフオン・モスケラの左足シュートがバーを叩き、それを拾ったオルランド・ベリオもシュートを枠に入れた。

「鹿島のディフェンスはこの場面でも、集中を切らしていない。昌子源はGKが出た後のポジションをカバーし、ヘディングでクリア。出色のディフェンスだった」

 そして前半30分すぎ、鹿島はビデオ判定によってPKを得て、土居聖真が先制点を決めている。

「PKのシーンは、ナシオナルの選手が西大伍を引っかけたという判定だが、西自身はオフサイドの位置にいた。その直前までボールに関与していない、という公式見解だが、彼がボールを追っているのは間違いない。微妙なジャッジだった。そもそも得点を阻止した反則なら、ナシオナルの選手にカードが出されるべきだが、出ていない。審判にも迷いがあったのだろう」

 運を味方にした鹿島だが、ナシオナルのさらなる圧力に晒(さら)される。

「鹿島はナシオナルのMFマテウス・ウリベの攻め上がりに苦しんだ。右ボランチの位置から2列目に積極的に侵入、これをつかまえきれない。さらに、ベリオのヘディングシュートがポストを叩き、追い詰められている。

 しかし後半になって、選手交代で流れが変わった。

 鹿島は54分に赤崎秀平→金崎夢生、58分に小笠原満男→永木亮太と、疲れの見えた同ポジションの2人を交代。一方、ナシオナルはアレハンドロ・ゲラ、クリスティアン・ダホメと攻撃色の強い交代カードを切った。鹿島はシステムを変えなかったが、追いつく必要があるナシオナルは片方のSBが高い位置を取って、FWの枚数も増え、3-4-3、あるいは3-3-4のような不規則な陣形になる。

 ここが潮目だった。

 相手が前がかりになって、雑にボールを入れるようになると、鹿島は中盤で数的優位となり、落ち着いてボールが持てるようになる。鹿島DFは大勢のアタッカーと向き合わざるを得なかったが、そこにパスが供給されない。逆に敵陣で枚数が少なくなった相手にプレスを仕掛け、パスを引っかけ、カウンターを発動するようになった。

 2点目は柴崎がフリーで遠藤康に合わせている。3点目も金崎夢生がマーカーを振り切ると、ファーサイドでマークを外した鈴木優磨に流し込んだ。カウンターは精度もスピードも完璧に近い逆襲だった。

 交代で登場した金崎は攻撃ラインに幅を与えつつ、右に流れて速攻の気配を漂わせた。同じく交代の鈴木がダメ押しゴール。石井正忠監督の采配が大きなターニングポイントだったことは間違いない。小笠原に代えて永木を入れ、堅実さとパワーを加える(技量では劣るが)タイミングも抜群だった」

 そして最後に、エチャリは鹿島の「番狂わせ」をこう祝福している。

 勝敗のポイントは、やはり鹿島の賢明さにある。知性的な試合運びで、組織力、連係力を顕示した。苦しさが募るとリトリートしながら、ラインをコンパクトにして防御。技術的には、両足を使える選手が多いことも局面におけるアドバンテージになっていた。鹿島にはおめでとう、と言いたい。偉大な勝利だった」
(つづく)

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