日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年11月28日火曜日
◆優勝お預けでも、鹿島の軸はブレず。 昌子「俺が決めてやる、じゃなくて」(Number)
内容は決して悪くなかった。柏レイソルのビルドアップに対して鹿島アントラーズは高い位置から積極的にプレッシャーをかけて、クリスティアーノやディエゴ・オリヴェイラに良い形でボールを渡さない。特に後半は攻守の切り替えの早さで柏を圧倒し、計23本ものシュートを放った。
でも、0-0の結果はやっぱり悔しい。
いやいや、11月29日の浦和レッズvs.川崎フロンターレ戦で川崎Fが引き分け以下ならば優勝が決まる。もし川崎Fが勝ったとしても、まだ首位。最終節でジュビロ磐田に勝てば、文句なしで優勝できる。
でも、やっぱり満員のホームで決めたかった。
東城穣主審がタイムアップの笛を鳴らした直後、3万6080人の観衆で埋まったカシマスタジアムは、鹿島アントラーズの選手とサポーターの複雑な心境を表すように、しんと静まり返った。いつもなら選手は場内を1周してロッカールームに引き上げるが、この日はホーム最終戦。試合後すぐにセレモニーが予定されていた。
最初に挨拶をすることになっている選手会長・昌子源は、セレモニー開始までのわずか数分の間で、懸命に考えていた。優勝に足踏みした状況で、目の前のサポーターと、背後に並ぶチームメイトに、どんな言葉で自分の思いを伝えるべきか。
模範的な挨拶の後に続けた、刺激的な発言。
場内アナウンスで名前が呼ばれ、スタンドマイクの前に立ったディフェンスリーダーは、まっすぐに前を向いて語り始めた。まずは、1年間チームを支え続けてくれたファン・サポーターと、スポンサーへの感謝。続いて、アウェーでの最終節・ジュビロ磐田戦で「必ず勝ちます」という決意。
ここまでは“模範的”な挨拶だった。スタンドから大きな拍手を受けると、表情が一層引き締まった。意を決したような顔で、言葉を続ける。
「俺が守ってやる、俺が決めてやるじゃなくて、このチームが勝てばいい。このファミリーが勝てばいい。この気持ちでジュビロ戦、必ず勝ちます。こうして口で言うのは簡単です。ピッチの上でその姿勢を見せたいと思います」
「俺が決めてヒーローに」と思うと決まらない。
自分の思いを素直に表現する昌子らしい直球勝負の挨拶。ただし捉え方によっては、この日のチームの戦いぶりへの不満にも聞こえる。だから、試合後の取材エリアで真意を尋ねた。
「あの挨拶の内容で、僕が何か言われるのは全然問題ないんで。だから、あえて言いました。とにかくチームが勝ってくれればいいんです。今日のように勝てば優勝が決まる試合ともなると、点を決めた人がヒーローになる。だけど、『俺が決めてヒーローになってやる』とか、そういう気持ちばかりだと勝てない。そういうときに限って入らないんですよ。いつもならフリーの選手にパスをしている選手が、強引に打ったりすると」
昌子が具体例として挙げたのが、66分のプレーだった。ペナルティーエリア手前でパスを受けたレアンドロが、鋭い切り返しで4人の選手を次々とかわしてゴール前に進入。しかし、シュートの角度はわずかしかない。
中央には、金崎夢生、土居聖真、遠藤康の3人がフリーで待っている。それでもレアンドロは左足シュートを選択し、GK中村航輔に弾き出された。
セットプレーの好機も、有効に使えなかった。CKをゾーンで守る柏は、明らかにゴール前に飛び込んでくる鹿島の選手たちを捕まえ切れていなかったが、レオ・シルバのキックは何度もニアサイドの相手に跳ね返される。ショートコーナーや、ファーサイドに大きく振って折り返すなどの工夫もなく、13度ものCKのチャンスをフイにした。
「フォア・ザ・自分」を抑えてチームのために。
大岩剛監督が「非常に良いゲームをした」と語ったとおり、悲観する内容ではない。三竿健斗のセカンドボールへの出足、レアンドロのプレスバック、相手センターバックとサイドバックの間でパスを引き出して起点になる金崎の動き出しなど、今季の鹿島の長所を象徴する場面は随所にあった。
ところがフィニッシュの局面では、徹底的に相手の嫌がることを繰り返す、鹿島らしい効果的な判断ができなかった。昌子はそこに「フォア・ザ・チーム」ではなく、大一番での「フォア・ザ・自分」の意識を感じたというわけだ。
「とにかくチームが勝てばいい。変な話、ソガさん(GK曽ヶ端準)がゴールを決めてヒーローになってもいいんです。そういうことを伝えたかった。セレモニーでも言いましたけど、口で言うのは簡単なんで、ピッチで、それを見せられるように頑張ります」
12月2日、ヤマハスタジアム。有言実行を目指す男の手に、優勝シャーレは戻ってくるか。
優勝お預けでも、鹿島の軸はブレず。昌子「俺が決めてやる、じゃなくて」
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