2018年11月06日(火) 19:03キックオフ 三協フロンテア柏スタジアム
【入場者数】9,255人 【天候】雨、弱風、 気温17.8度、 湿度90.0% 【ピッチ】全面良芝、水含み
【主審】松尾 一 【副審】勝又 弘樹 【副審】聳城 巧 【第4の審判員】岡部 拓人
マッチレビュー
明治安田J1 第32節
鹿島の未来が再び輝いた!金森、町田、そして山口のJ1初得点で柏を撃破!
中2日、先発全員変更で臨んだアウェイゲームで、鹿島の未来が再び輝いた。雨の火曜日、三協フロンテア柏スタジアムに乗り込んだJ1第32節。柏レイソルと激突すると、金森のゴールで先制し、逆転を許した後に町田がヘディングシュートを決めて2-2の同点に追い付く。そして後半、山口がJ1初得点を決め、チーム一丸でリードを守り切った。3-2と逆転勝利を収め、暫定3位に浮上した。
3日前、ファイナルの誇りを纏った聖地は青空の下で燦然と輝いていた。ついにたどり着いたACL決勝、ペルセポリスFCを迎え撃った第1戦。極めて重要な“前半90分”で、鹿島は力強く完封勝利を収めてみせた。スコアレスで迎えた58分、レオ シルバが鮮やかなパス交換から左足シュートを突き刺すと、70分には三竿健斗のパスからセルジーニョが左足ボレー。王国育ちの2人がスコアを刻み、アウェイゴールを許すことなく90分を走り抜いた。
「この結果はサポーターが作ってくれた雰囲気のおかげ。背中を押してくれた結果が、無失点という結果になった」。昌子はそう言って、ともに戦うファミリーへの感謝を口にした。アントラーズレッドのスタンドは歓喜を爆発させた後、次なる戦いへと出港する決意を歌声に乗せた。敵地での“後半90分”は1週間後、舞台はテヘランのアザディスタジアム――。過酷な環境であらゆる要素を跳ね除け、そして頂へと昇り詰める。選手たちの背中を押すように、大きなコールが聖地の夕空に響き渡っていた。
だが、鹿島の目前には、テヘランでの決戦と双璧の重要度を備えた90分が待っている。中2日で迎えるアウェイゲーム、柏との激突。「アントラーズは、誰が出ても強くなければならない。勝たなければならない」。10月末の聖地で体現した決意、C大阪戦を相手に演じてみせた会心のウノゼロを、再び――。息つく間もなく、チームは準備を進めていった。
日曜日、そして試合前日の月曜日も、指揮官は午後練習を実施した。前日練習を午後に行うのは極めて異例の措置だが、週末にイランで控えた決戦を見据え、時差調整を進めながらも日立台での90分に照準を合わせていく。大岩監督は「選手たちに『チームとしてやることを意思統一しよう』と話をした。出場した選手で勝ち切りたい」と、再びピッチへと送り出す若武者たちに期待と信頼を託していた。
3戦連続で断行された、大幅な先発変更。今夜は何と、全11選手が入れ替わる形となった。大岩監督はゴールマウスを曽ケ端に託し、最終ラインには小田、犬飼、町田、安西を起用。百戦錬磨の小笠原と永木がボランチの位置でミドルゾーンを制圧し、攻撃陣はフレッシュな面々に。C大阪戦で輝きを放った久保田、ゴールへの貪欲な姿勢を見せた山口、そして金森が虎視眈々とゴールを狙う。そして2列目には遠藤が復帰。その左足でチームを牽引する背番号25が、4試合ぶりにピッチへ帰ってきた。ベンチにはGKの川俣、昌子、山本、三竿健斗、安部、田中、鈴木が座る。
朝から土砂降りとなった火曜日、三協フロンテア柏スタジアムも肌寒い一日となった。夕方には雨脚が弱まったものの、キックオフが迫るにつれて再び勢いを増していく。そんな悪天候でも、アントラーズレッドは続々とビジタースタンドを埋め尽くしていった。ウォーミングアップへ姿を見せた選手たちに、大きなコールが注がれる。1週間前に掴んだ自信を強く揺るぎないものへするために――。
19時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。ビクトリーホワイトに身を包んだ若武者たちは、雨中のアウェイゲームで果敢な姿勢を打ち出してみせる。開始1分足らず、中盤右サイドで久保田が激しいタックルを仕掛けてボールを奪うと、遠藤が左サイドへ展開。安西がスピードを上げて深い位置まで突破してクロスを送る。シュートには至らなかったが、前への意識を強烈に印象付けるファーストアタックだった。
鹿島は立ち上がりからボールポゼッション率を高め、両サイドを使った攻撃で柏を押し込んでいった。すると6分、待望の先制点を挙げる。敵陣右サイドから遠藤が蹴ったFKはクリアされたものの、ペナルティーエリア内でこぼれ球を拾った金森が左足を一閃。強烈な一撃は相手GKの手を越え、そびえたつ黄色の壁の目前で豪快にネットを揺らした。1-0。「必要なのは勝つこと」と決意を刻んでいた背番号14がファインゴールを決め、鹿島がリードを奪った。
開始早々に先制点を奪った鹿島だが、以後は柏に押し込まれる展開が続いた。得点からわずか4分後、ペナルティーエリア内でのポストプレーから瀬川に左足シュートを決められて1-1の同点に。まだ開始間もないとはいえ、同点に追い付いたことでホームチームは勢いに乗った。鹿島は両サイドの背後にあいたスペースを何度も狙われ、深い位置からのクロスでゴールを脅かされる。セカンドボールの攻防を制しても、効果的なカウンターを仕掛けることができなかった。失点から10分以上、我慢の時間が続いた。
そして24分、2つ目のスコアを許してしまった。右サイドの背後へスルーパスを通されると、前方へ抜け出されながらも粘ってプレスに戻った小田がスライディングで突破を阻止。しかしこぼれ球を拾われ、ペナルティーエリア中央から瀬川に右足シュートを決められてしまった。1-2。雨中のアウェイで、前半のうちに逆転を許してしまった。
だが、鹿島は踏みとどまってみせた。失点の直後に選手たちを激しく鼓舞し、中盤の支配者として鋭いスライディングでパスカットを連発した闘将とともに、反撃へと転じてみせた。28分、左CK。小笠原が繰り出した正確無比のボールに、ゴール前の密集から背番号28が頭一つ抜け出す。「狙い通り」という会心のヘディングシュートがネットを揺らした。2-2。セットプレーを活かしてスコアを刻み、鹿島が再び試合を振り出しに戻した。
前半残り20分強も、ゴール前での攻防が繰り返される激しい展開となった。鹿島はなかなか決定機を作れずにいたが、安西と小田が両サイドでのマッチアップで粘り強い対応を続け、時計の針を進めていった。自陣でのパスミスからピンチを招いた場面もあり、そして前半終了間際にはカウンターから1対3と数的不利の状況を作られて絶体絶命の危機に陥ったが、相手のシュートミスに救われた。2-2。苦しみながらも何とかしのぎ、タイスコアでハーフタイムに突入した。
アントラーズレッドへと攻める後半を前に、大岩監督はサイドの攻防における「選手の立ち位置とアプローチに修正を加えた」。それでも立ち上がりの51分、左サイド深くまで突破を許して決定的なピンチを迎える。至近距離から打たれた伊東純のシュートが枠へ飛んだが、小田が起死回生のシュートブロックを見せた。
鹿島は以後も両サイドから押し込まれたが、ゴール前の攻防で粘り強い応対を続けた。すると61分、敵陣でのボール奪取でカウンターを発動。金森のパスをペナルティーエリア右側で受けた遠藤のループはクロスバーに当たったものの、こぼれ球に山口が詰めていた。C大阪戦では9本ものシュートを放ちながらもネットを揺らせず、悔しさと向き合っていたルーキーは「何も考えずに」右足を振り抜く。気迫を込めた一撃は、コースを消そうと体を投げ出した柏の面々の思いを打ち砕くようにゴールへ一直線。背番号19が疾走し、アントラーズレッドの前で叫ぶ。直後に歓喜の輪ができる。プロフットボーラーとして初めて刻んだスコアが、鹿島を再び前進させた。3-2。山口のJ1初得点で鹿島が逆転に成功した。
再び奪ったリードを、明け渡すことはなかった。次第に早いタイミングでクロスを入れる回数が増えた柏に対し、犬飼と町田のセンターバックコンビが粘り強く対応。カウンターでは久保田が果敢なチャレンジを見せ、終盤に投入された健斗が中盤に立ちはだかり、田中と安部は果敢な突破とボールキープで時計の針を進めていった。全員が勝利のために戦い抜き、そして歓喜のホイッスルが鳴り響いた。
3-2。日立台まで駆け付けた背番号12は先週に続いて、若武者たちの奮闘と百戦錬磨の面々が示した献身を称え、勝利の誇りを歌い上げた。そして、テヘランでの決戦へと向かう選手たちの背中を押すようにチームコールが送られる。次戦は4日後、ついに迎える決戦だ。日本時間10日24時キックオフ、ペルセポリスFCとのACL決勝第2戦。チームは明日、テヘランへと発つ。アジアの頂を懸けて、チーム一丸で突き進む。
・今季のJ1柏戦で2連勝を果たし、昨季の第17節から4戦負けなしとなった。
・J1でのアウェイ柏戦は昨季に続いて2連勝となった。
・遠藤が10月20日のJ1第30節浦和戦以来の先発復帰。公式戦出場は4試合ぶりとなった。
・山口がプロ初得点となるJ1初得点を記録した。
・金森と町田が今季のJ1で2得点目を記録した。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・全体の形をコンパクトに保つために、相手に動かされすぎないこと。
・守備の場面では、後手に回らずゴール前の判断をしっかり。
・状況を見ながら、落ち着いてボールを動かそう。
柏レイソル:加藤 望
・相手の背後へのランニングを後半も続けていこう!
・相手に入れ替わられたり、ボールを失っても足を止め!に、すぐに守備に切り替えること。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
先制をしてすぐに追いつかれたところで、相手にボールを持たれる時間が長かったが、粘り強く戦った結果が逆転につながったと思う。非常に素晴らしいパフォーマンスと姿勢、立ち振る舞いを見ることができた。非常に評価している。
Q.若い選手が多く出場して、勝ち切ったことへの評価は?
A.このゲーム間隔の中でそれぞれが出場に向けて準備をしていくが、練習に向けたものも含めて姿勢や立ち振る舞いを示してくれている。試合に出る、出ないに関わらず、そして若い選手だけでなくベテランの選手、普段は出場機会がない選手も含めて、全ての選手がしっかりと準備をしていた。若い選手も当然頑張っているが、一体感が試合を追うごとにさらに大きくなっている実感がある。それを非常に嬉しく思いつつ、評価している。
Q.サイドから崩される場面が多かったが、ハーフタイムでの修正は?
A.柏のボールの動かし方は洗練されていて、前半は非常に苦労した。サイドバックやサイドハーフの立ち位置やアプローチの距離、タイミングを修正した。後半はよく対応してくれたと思う。守備だけでなく、攻撃につながる立ち位置でプレーしてくれて、狙いのあるカウンターにつなげることができたと思う。
Q.ベテラン選手への評価は?
A.柏の現状も把握しているし、勢いを出してくるだろう中、それを自分たちが受けるのではなく、アグレッシブにやろうという話をしていた。それを小笠原、曽ケ端、遠藤、永木がプレーで表現してくれた。若手を引っ張ってくれる存在なので、今日だけを見ても非常に頼りになる。頼りになるという表現は失礼だが、非常に評価している。彼らの経験も関わってくる部分。若手がそれを吸収していることが、成長できている要因、自信を持てている要因だと思う。
Q.公式戦3連勝と、いい状態でACL決勝第2戦に臨めるが
A.いい状態なのかどうかは、これからの3日間の準備次第だと思う。しっかりと準備をしたい。シーズンを通して言っていることではあるが、決勝第1戦、柏戦、決勝第2戦と、目の前の試合ごとに一つになって、一体感はさらに強くなったと思う。自信を持ってテヘランに乗り込みたいが、絶対に難しい試合になる。しっかりと準備をしたい。
柏レイソル:加藤 望
ホームで勝たなければいけない試合で負けてしまって、平日のこのような天候の中でたくさんの方が熱い応援をしてくださったのにも関わらず、返すことができなくて申し訳なく思う。選手たちは試合の入りからいい形で、最後まで諦めずに戦っていたと思う。自分の至らないところがたくさんあり、選手に申し訳ないし、応援してくださっている方にも本当に申し訳ない。
選手コメント
[試合後]
【山口 一真】
点を取れてホッとしている。試合前から剛さんに「サイドハーフはこぼれ球を狙っていけ」と言われていた。気持ちで押し込んだシュートだった。ゴールは求められていると思うし、これからもこだわってやっていきたい。
【町田 浩樹】
満男さんがいいボールをくれたので、決めるだけだった。2失点してしまって納得のいく内容ではなかった中で、自分で取れたことはよかった。満男さんが蹴りに行く前に「この辺に欲しい」という話をしていた。いいボールをくれて決めることができたので、喜びに行きました。
【金森 健志】
ファーストタッチでうまくボールを置けたので、あとは思い切り振り抜いた。イメージ通りだった。ベンチを見たら、みんなが喜んでくれていたのでよかった。でも、自分が決めたというよりもチームが勝ったことがよかった。
【小田 逸稀】
自分の背後を狙われていたのはわかっていた。少し考えすぎてしまった部分があった。ハーフタイムに話し合って解決できたけど、試合の流れの中でできるようにならないといけない。(シュートブロックは)来ると思っていたので、コースを切りながら、パスが出たら寄せるつもりでいた。反応できてよかった。
【安西 幸輝】
一真が攻撃でガンガン行けるように考えていた。一真のよさを出させるために話をして、背負って受けるより、やりやすいように角度をつけてプレーをした。守備陣は経験の少なさも出たけど、逆転されてからは最後のところでやらせなかったのでよかったと思う。
【曽ケ端 準】
前半はボールを回される場面が多かった。逆転されてからも集中してプレーできたと思う。ハーフタイムでも特別に何かを変えるという話はなかった。右サイドはヤス、逸稀がバランスよくうまく守れていた。
◆2018明治安田生命J1リーグ 第32節(オフィシャル)