霞ケ浦湖岸の清掃活動に取り組むNPO法人「水辺基盤協会」(美浦村)代表の吉田幸二さん(67)が、サッカーJ1鹿島アントラーズのDFで釣り好きの西大伍選手(31)の協力を得て、インターネットを通じて活動資金を募っている。昨年12月17日に2人の名でクラウドファンディング(CF)「53(ごみ)ピックアッププロジェクト」を創案すると、2日で目標金額の115万円が集まった。吉田さんは「釣り好きの有名人は多いが、環境面まで考えてくれる人は少ないのでうれしかった」と西選手に感謝しきりだ。
日本ブラックバス釣り界の第一人者でもある吉田さんは、1995年から釣り人による湖岸清掃活動「霞ケ浦クリーン大作戦」を実施している。年2回ペースで活動を続け、昨年末で45回目を数えた。毎回300人近くが集まる企画として定着している。
活動の大きな特徴は参加者が参加料を払い、回収したごみ処理費用に充てている点。霞ケ浦は12市町村に囲まれており、家電やゴムタイヤなどのごみ処理方法は各自治体で異なる。参加者が分別を気にせず清掃できるよう、ごみは全て産廃業者に有料で処理してもらっている。
毎回集まる約2トン超のごみ処理費用は約20万円。参加料だけでは賄えない場合もある。吉田さんは「毎回の資金繰りが大変」と実情を話す。
バス釣りが趣味の西選手は吉田さんの活動と苦労を知り、「縁あって霞ケ浦水系の地域にある鹿島アントラーズに所属しているので協力したい」とCFでの資金調達を申し出た。支援者には2人のイラストをデザインしたTシャツや、釣り好きのJリーガーのサイン入りスパイクなど魅力的なリターン(お返し)を用意するなど、CFの立ち上げに協力した。
西選手は強豪の鹿島で主力を担い、日本代表にも選ばれたこともある人気選手。短文投稿サイト「ツイッター」でプロジェクトを告知すると、サッカーファンの間で話題となり、瞬く間に支援の輪が広がった。吉田さんは「西さんの発想がサッカーファンと釣り人をつなげてくれた」と目を細める。
吉田さんは「50回目まで続けたい」と、今回の目標金額を5回分の清掃活動費と参加者の保険料の計115万に設定。すでに目標金額に達しているが、今月29日の期限まで支援金を募り、活動費のほかポスターなどのPRグッズの制作費に充てる。資金面の不安がなくなったこと以上に、吉田さんが喜ぶのは「自分たちの世界が(サッカーファンにまで)広がった」こと。西選手との出会いが、多くの人に活動を知ってもらう契機になった。
46回目の活動は5月12日を予定。日程が合えば西選手も参加を希望している。(藤崎徹)
◆活動資金集め 霞ケ浦湖岸清掃で協力 サッカーファンと釣り人 J1鹿島・西選手が橋渡し(茨城新聞)