
日刊鹿島アントラーズニュース
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2019年4月13日土曜日
◆アントラーズがサッカー場の席数減を考える訳(東洋経済オンライン)

4万人収容スタジアムから大幅に減らしたい
人口が減少する中でも成長を続ける鹿島アントラーズFC。売上高100億円に向けて着実に歩を進めるが、なんとスタジアムの収容人数を4万人から2万5000人に減らしたいという。どういう意図なのか。引き続き同社の鈴木秀樹取締役事業部長に聞く。
レアル・マドリードに2回負けて見えてきたもの
中原:前回のお話では、地方の企業経営のお手本になる秘訣をお伺いしました。田舎でやればやるほど、デジタルを駆使しないといけないということ、それから、経験と勘を裏付けるデータを収集するために、マーケティングに時間とコストをかけているということを教えていただきました。
今回まず伺いたいのは、いわゆるスタッフの数です。一般的にいえば、Jリーグでは「選手が30人いたらスタッフも30人必要」という話を聞いたことがあるのですが、実際にアントラーズはどうなのでしょうか。
鈴木:昨年はAFCチャンピオンズリーグの決勝に行ったり、クラブワールドカップに行ったりしましたが、実はFIFA(国際サッカー連盟)はこれらの大会に参加する各チームにパッケージとして、50人分のお金を出しているんです。
試合に出る選手が11人で、控えを入れても多くて18人くらいじゃないですか。それなのに、パッケージでは合計50人もいるんですね。それが世界のサッカーの常識であって、選手のほかにもメディカルスタッフや用具係などいろいろな役割の人がいて、それで僕らも60人くらいになっているんです。
少し話がそれるかもしれないですけど、僕らはレアル・マドリードとクラブワールドカップで試合をして見事に負けました(1-3、昨年12月20日の準決勝)。その2年前の2016年にもレアルに負けたわけなんですが、あの時見えていたレアルと今回見えていたレアルはまったく違っていました。2016年の時のレアルはその中身がわからなかった。ところが今回は、大会の期間中ずっと一緒にいたので、ある程度いろいろなことが見えてきたんですよ。
例えば、レアルは選手を勝たせるための周辺のスタッフだって、FIFAがパッケージとしている50人どころじゃない数を連れて来ているんです。うちのチームはメディカルのスタッフを3人連れて行ったんですけど、レアルを見たら9人もいるわけですよ。ドクターだってうちは1人なんだけど、レアルは3人もいたんですよね。
そのほかに、メディアスタッフなんかは1桁多くなるんだけど、僕らはデジタル担当を2人連れて行ったんです。ところがレアルを見てびっくりしたのは、こうしたその関係のスタッフを30人くらい連れて来ているんですよね。
レアルの売り上げはアントラーズの12~13倍、選手の人件費は20倍くらいなんですよ。それを考えると、僕らがレアルを目指すなんて簡単に言えないなって話になるじゃないですか。レアルに追いつきたいと思ったって、そこを埋めるのは簡単じゃないってことがよくわかった。
お金をかけるべき場所に「どれだけかけるか」がわかった
中原:でも、お話のニュアンスからすると、光明は見えたわけですよね?
鈴木:そのとおりです。僕らの売り上げが約70億円、レアルが約870億円という差があるわけだけど、チームを勝たせるという意味で考えるお金のかけ方っていうのを比較していくと、「あれっ、全然12倍、13倍にはならないよね」って話になるわけです。

勝つためにやっていることは基本的に同じであり、あとはスタッフの数や選手の技術の問題だったりするので、売り上げを10倍にしたり人件費を20倍にしたりするのはできないけど、感覚的に、ここに今の3倍はお金をかけることはできるようになるだろうってことになるわけです。
そうすると僕らも、レアルが選手を勝たせるためのいろんな手法を持っているんだけど、それに近づくことはできるよねっていうことです。でもこれは、レアルと一緒にいなければわからない話なんです。ごめんなさい。話がそれてしまいましたけど……。
中原:いえいえ。そこがわかっているのか、わかっていないのか、すごく重要だと思います。
鈴木:そうなんです。どのチームも漠然と「J1で優勝します」とか「アジアでNO1になります」「世界に行きたいです」って言うんですが、具体的に何をもってそこに近づいていくかっていうことがわかっているか、わかっていないかって、すごく大きいと思うんです。
デジタルだって同じ話なんですね。何のためにデジタルをやるのかっていったら、これをやったらこういう結果が出るということが予想できるからです。予想と違ってダメな結果だったら、次はやめればいいわけです。デジタルはコスト上のリスクがいちばん少ないじゃないですか。
中原:おっしゃるとおりです。
デジタルを使えば、すべてが「見える化」できる
鈴木:ずいぶん前の話になりますが、スポンサーにチラシをまいてほしいと言われて、チラシを数万枚印刷して何十人という要員で配っていました。その結果、ほとんどが捨てられました。チラシはゴミとして回収し、その焼却代までかかりました。そのようなことを延々とやってきたのがプロスポーツであって、本当にチラシの効果なんてあるのかと思いつつも、お決まりの約束事だからやらなければならなかったんですね。
でもデジタルを使うようになってからは、今はそういうことはやめて、デジタルクーポンを配りましょうよって提案できるようになった。例えば、関彰商事(※茨城最大の商社:事業はガソリン卸売りほか多岐にわたる)さんに「デジタルクーポンでお客さんにガソリン券をプレゼントしたいから、1試合当たりで500リットルのガソリンをちょうだい」ってお願いしたりして……。
僕らはそのデジタルクーポンで「ガソリン券が当たります」と宣伝するわけです。100リットル券、50リットル券、20リットル券とプレゼントするんだけれども、お客さんも当たったら嬉しいじゃないですか。おまけに、当たった人が関彰商事のガソリンスタンドに行ってそのあとリピーターになったかどうかっていうことも、デジタルだからわかるわけなんです。
そういうことをやりましょうって次々とやっていくと、スポンサー側も「意外と面白いな」っていうことを言ってくれる。たぶん、デジタルをどんどん使っていかないと、スポンサーも僕らもマーケットを維持できないかもしれないって思うんですよね。
中原:やはり結果がわかるから、成功も失敗も面白いと思える。コストが安いから失敗してもまた次へいこうって、前向きな話になっていくわけですね。
鈴木:そうそう。僕らの具体的な調査の事例って、きちんと数字で残していて、あとはスポンサーに面白い提案ができるように、独特な方法でセグメントしたりして……。
例えば、カシマスタジアムに来るお客さんは、意外と女性客が多いんですよ。Jリーグではうちは女性比率がトップなんですね。その結果を基にして、例えばLIXIL(リクシル)さんに「女性のためのトイレを作りませんか」「1カ所だけでもいいから、写真を撮りたくなるような、ものすごいトイレを作りませんか」という提案をしたりして……。
中原:観光にとってトイレは大事な要素ですが、それはスポーツ観戦にも当てはまると思います(笑)。
鈴木:「コンシェルジュがいるようなトイレを作りましょうよ」「スタジアムにあったらおかしいようなトイレを作りましょうよ」って提案すると、LIXILさんも「面白いね」って言ってくれて……。それでは、どうやって作るのか、費用はどこが持つのか、スタジアムは県の施設だから県をどうやって説得するのか、という話になっていって……。
とにかく、いろいろな調査をして数値化していくと、新しいことが次々とできるようになるんですね。
鈴木:「コンシェルジュがいるようなトイレを作りましょうよ」「スタジアムにあったらおかしいようなトイレを作りましょうよ」って提案すると、LIXILさんも「面白いね」って言ってくれて……。それでは、どうやって作るのか、費用はどこが持つのか、スタジアムは県の施設だから県をどうやって説得するのか、という話になっていって……。
とにかく、いろいろな調査をして数値化していくと、新しいことが次々とできるようになるんですね。
「SUITE BOX」が変われば、もっとすごいことに
中原:そういえば、スタジアムで思い出したのですが、鈴木さんもご存じの私の友人から十数年前にスタジアムのSUITE BOX (鹿島のVIP席)に招待されたことがあったんですよ。あの席は今もあのまま変わっていないですか?
鈴木:残念なことに、変わっていません(苦笑)。
中原:鈴木さんはすでに私が何を言いたいか、わかっているみたいですね。実はあの時、率直に思ったのは、とてもVIP席といえる仕様ではないし、座ると試合が見えない……はっきり言って外で観戦したほうがマシだということです。
VIP席という位置づけであればもっと豪華な造りにして、茨城はおろか首都圏の経営者たちが集まるようなサロンみたいにすればいいのに……そのほうが収益は上がるのに……と当時思ったことを今思い出しました。
鈴木:確かに、そのとおりなんですよね。そのような考え方はヨーロッパのサッカーでは当たり前になっているんです。経営者などのエグゼクティブである2割の人たちの入場料収入が全体の収入の8割を占めるという考え方なんですね。これは2・8の理論と呼ばれていますよね。だから、ヨーロッパのスタジアムに行ったりすると、こうした人たちが満足するような豪勢なつくりになっている。
ヨーロッパのVIP席って、エアラインのビジネスラウンジみたいな雰囲気がある中で、美味しいビュッフェがあって、試合が終わっても楽しく飲み続けているわけですね。僕らも同じことをやりたいんだけど、日本のスタジアムは公共の施設だから、変えるのは大変ですね。
中原:新しい知事(大井川和彦氏)は賛同してくれますよ。彼はけっこう変わった人ですから(笑)。
2万5000人にしたほうが満足度も利益も極大化できる
鈴木:どうかなあ。許可してくれるかなあ。でも、スタジアムとは別のところでは、今でもある程度自由にできていて、病院をやったりフィットネスをやったりしています。それから今、温浴施設を造っているんだけど、僕らはそこまで投資しないとお客さんのニーズに応えられないんですね。
実は、これからやりたいのは、スタジアムのキャパシティを大幅に落としたいということ。僕は今の4万人のキャパシティは非現実的だと思っていて、2万5000人まで落としたいのです。
中原:それはいい考えですね。人口減少社会に対応した戦略として、これからの時代にマッチしていると思います。
鈴木:そうそう。もうワールドカップはやったし、今度はオリンピックもやるし、世界の大会を開催するっていう1つの目的はもう果たしたから、ワールドカップやオリンピックを開催するキャパシティをずっと維持しなくてもいいと思っています。そのうえで、鹿島アントラーズが最大利益を得るための形を考えていく必要があります。
中原:そのとおりですね(笑)。
後編に続く。後編「アントラーズが「観光業」までやってしまう理由」は4月14日配信の予定です。
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