日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年2月7日金曜日

◆オフはたったの6日間? サッカー界に「働き方改革」が必要な理由(Forbes)






まもなく開幕する2020シーズンを前に、日本サッカー界に衝撃が走った。1月28日に開催されたFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフで、Jリーグを代表する常勝軍団の鹿島アントラーズがメルボルン・ビクトリーFC(オーストラリア)に敗れ、ACL本大会への出場権を失ったからだ。

アントラーズは、元日に新国立競技場で開催された天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝で、ヴィッセル神戸に敗戦した。振り返ってみれば、そのあとのシーズンオフの期間もあまりに短かった。選手たちが心身を休ませ、新たな戦いへの鋭気を養ううえで、果たして十分だったのか。数年来のアントラーズのフル稼働ぶりを含めて、Jリーガーにも求められる「働き方改革」を考えてみる。

過密スケジュールの前に敗れたアントラーズ

最も長いクラブは51日、最も短いクラブはわずか6日しかない。何の数字かと言えば、まもなく開幕する2020シーズンに臨むJ118クラブのシーズンオフの日数だ。

日数をカウントするにあたっては、昨シーズンの公式戦を終えた翌日から始動日前日までを「オフ」と定義した。各クラブの公式戦終了日、始動日、オフをそれぞれ順に記すと下記のようになる。




公式戦終了日で最も多い「12月7日」は、明治安田生命J1リーグ最終節を指す。自動昇格組の柏レイソルと横浜FCは明治安田生命J2リーグ最終節の「11月24日」で、J1参入プレーオフ決定戦に回った湘南ベルマーレは残留を決めた「2月14日」で、それぞれ昨シーズンを戦い終えた。

残る3つは、天皇杯全日本サッカー選手権大会でベスト4に勝ち残っていたクラブで、清水エスパルスは準決勝で敗退した「12月21日」を、新国立競技場の杮落としマッチとなった決勝で対戦したヴィッセル神戸と鹿島アントラーズは「2020年1月1日」をシーズン最後として、オフに入っている。

18クラブのオフを平均すると32.5日。それだけに、アントラーズの6日というのは異例の短さだ。国内の公式戦に先駆けて、1月28日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフが組まれていた日程と関係しているが、ここには複雑かつ特殊な事情が絡んでいる。

2020シーズンにおいては、昨シーズンのJ1王者と天皇杯覇者が、アジアの王者を決めるACL本大会への出場権を獲得。アントラーズは3位で一発勝負のプレーオフへの出場権をまず獲得していた。

さらに勝ち残っていた天皇杯で、アントラーズが頂点に立てばACL本大会への出場が決まり、その場合はJ1で4位だった川崎フロンターレがプレーオフへ出場することになっていた。シーズンオフの多寡を考えれば、まさに天国と地獄とを隔てる天皇杯決勝で、アントラーズはヴィッセルの前に敗れてしまったわけだ。

そして、始動から20日後に迎えたACLプレーオフでも、メルボルン・ビクトリーFCに0-1で苦杯をなめさせられた。国内3大タイトルを含めた4冠独占を掲げて臨んだ2020シーズンの初陣で、いきなりその可能性が消滅することになってしまった。

対照的に、天皇杯の優勝で、クラブ創設以来初のタイトルを獲得したヴィッセルは、J1勢で最も遅い1月22日に始動。20日間のオフを取って今月8日の横浜F・マリノスとのFUJI XEROX SUPER CUP、そして12日のジョホール・ダルル・タクジムFC(マレーシア)とのACLグループリーグ初戦に臨む。

両クラブの状況を鑑みると、天皇杯決勝で負けたアントラーズに、まるで「罰ゲーム」が科されたかのようにも映る。プレーオフで勝てばよかった、天皇杯で優勝していたら問題なかった、そもそも、J1で優勝していればよかったなど、さまざまな声があがるなかで、アントラーズも忸怩たる思いを抱いている。

「昨シーズンの終盤戦を見ていると、フィジカル的にまるでオーバートレーニング症候群のような状態になり、メンタル的にも集中力を欠いて、パフォーマンスが上がらなかったところがあった」

無冠に終わった昨シーズンをこう振り返るのは、1996年から強化の最高責任者を務めてきた鈴木満取締役フットボールダイレクターだ。実際、昨年9月上旬の時点では、アントラーズは前人未踏の4冠制覇を視界にとらえるほど、快調な戦いぶりを見せていた。

しかし、連覇を目指したACLで広州恒大(中国)の前に準々決勝で屈すると、YBCルヴァンカップでは優勝した川崎フロンターレに準決勝で敗れた。一時は首位に立ったJ1リーグでは正念場の11月になって大きく失速し、最後のチャンスとなった天皇杯決勝でも精彩を欠いた戦いに終始した。

勝負どころで、肉体的にも精神的にも高ぶってこない。ライバル勢の追随をまったく許さない、通算20個ものタイトルを獲得し、いつしか常勝軍団と呼ばれたアントラーズらしくない戦いを演じてしまった背景は、心身両面で蓄積されてきたダメージを抜きには語れない。


天皇杯決勝の元日開催はもはや意味がない


例えば、アントラーズの2016シーズンは、大逆転の連続で8度目のJ1王者になり、元日に大阪のパナソニックスタジアム吹田で開催された天皇杯決勝も制した。その間には日本で開催されたFIFAクラブワールドカップでも快進撃を続け、敗れたものの決勝戦で名門レアル・マドリードと死闘を演じている。

一転して2017シーズンは連覇へ王手をかけていたJ1最終節でフロンターレにまさかの大逆転を許し、精神面で大きなショックを引きずった。そして、クラブの悲願だったACLを制した2018シーズンは、中東の地でFIFAクラブワールドカップを戦った関係で、最後にオフに入ったクラブになった。

「こうした状態が3年も4年も続いてきたなかで、どこかでメリハリをつけなければいけないとずっと考えてきた。なので、今年は思い切って休ませる、という決断をしました。選手たちも人間なので、フィジカルにもメンタルにも相当のダメージを負っていることを考えてあげなきゃいけない」

こう語る鈴木ダイレクターは、先月8日の始動日に招集する選手たちを、新加入組と昨シーズンのプレー時間が短かった組に限定した。天皇杯決勝まで戦った主力選手たちには、Jリーグ統一契約書内で明記されている「最低でも2週間のオフを取る」を優先させた。

主力選手たちが合流したのは、宮崎市内で行われていたキャンプが終盤を迎えた先月の16日。天皇杯決勝をもって2年半指揮を執ってきた大岩剛監督が退任し、ブラジル人のザーゴ監督が新たに就任したなかで、28日に待つACLプレーオフに間に合わないのではというリスクも当然ながらあった。

「最初から順調にというのは難しいというか、今年はちょっと覚悟しなきゃいけないと思っている。スタートダッシュというよりも、今年はチームをゆっくりと、少しずつつくり上げていって、秋口から勝負をかけられる感じになればいかな、と。もちろん序盤戦も何とかやり繰りしながら勝って、次へつなげていかなければいけないこともわかっていますけど」

始動にあたっては今シーズンの指針を、鈴木ダイレクターはこう説明していた。しかし、抱いていた不安は的中し、ACLプレーオフで初めて敗退するJクラブとなった。メルボルン戦の先発メンバーに6人の新戦力が名前を連ねていたことからも、その時点でチームづくりが手探り状態であったことがわかる。

いざピッチに立てば、選手たちは必死にプレーする。充分なオフを取れず、その結果としてダメージが蓄積されてきた心身を奮い立たせるほどに、不慮の大けがを負うリスクも高まる。財産である大事な選手たちを守るためにも、勇気をもって立ち止まったと、鈴木ダイレクターは力を込める。

「何年もこういう状況になっていると、どこかに必ずしわ寄せがくるし、実際に昨シーズンもけが人が続出した時期があった。なので、これを踏まえて、『いろいろなこと』を考えていかなければいけない。ちゃんと休養を取って、リフレッシュした状態で再びサッカーをして、クオリティーを高めていく、そういうしっかりとしたサイクルにしていかないといけない」

鈴木ダイレクターが言及した「いろいろなこと」とは、元日に開催される決勝戦を含めた、天皇杯全体のスケジュールにほかならない。冒頭で記したクラブ間で生じるオフの多寡も、天皇杯決勝をJ1リーグの最終節前後へ前倒しすれば、完全ではないにせよ、それでも劇的に改善されることがわかる。

初詣で明治神宮を訪れる参拝客の1パーセントでもいいから、スタンドへ呼べないだろうか──。人気低迷にあえぐ日本サッカー界を盛り上げるための起爆剤として、歴史ある天皇杯の決勝戦を旧国立競技場で、しかも元日に初めて開催したのは1968年度の第48回大会だった。

集客面だけでなく興行面でも狙いは的中し、天皇杯決勝は元日の風物詩として定着した。しかし、半世紀以上の時間が経過したなかでJリーグが産声をあげ、当時には存在しなかったACLやFIFAクラブワールドカップなどの国際大会も創設された。もはや天皇杯決勝の元旦開催は時代にそぐわなくなった感は拭えない。


今回はACLプレーオフが1月中に開催されたがゆえの例外だという声もなかにはある。それでもアントラーズに限らず、元日に天皇杯の決勝が開催される限りはシーズンオフの期間で必ずチームによって多寡が生じ、不公平感を生む源になる。働き方改革が叫ばれる状況の前に、伝統の二文字が立ちはだかる形となっている。

2020年度大会もすでに、天皇杯の決勝戦の元日開催が決まっている。しかし、天皇杯の日程変更を検討するうえで障壁となってきたFIFAクラブワールドカップも、毎年12月中旬に開催される現状の方式から、2021年には夏場に、しかも4年に一度の開催となることがすでに決まっている。

つまり、すべてのJリーガーがほぼ同時にオフへ入れるスケジュールが、2021シーズンから可能になるのだ。天皇杯決勝戦の元日決戦を実現させた先人たちの叡智への敬意も理解できるが、天皇杯を主催する日本サッカー協会とJリーグには、いまこそプレイヤーズファーストの視点に立って、試合スケジュールを考え直す姿勢が求められる。

◆オフはたったの6日間? サッカー界に「働き方改革」が必要な理由(Forbes)





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