言葉の端々にあふれ出すクラブへの愛着や情熱
[J1第24節]鹿島0-2広島/8月6日/県立カシマサッカースタジアム
チームの誰もが不安を隠せなかったといって差し支えないだろう。選手の間では、あえて話題にしてこなかった節もある。むしろピンチをチャンスに変えるべく、今いるメンバーで、何とか改善しようと意気込んでいた。
だが、やはりというべきか。懸念されていた課題が顕在化してしまった。
チーム一の得点源であるFWの上田綺世がサークル・ブルージュ(ベルギー)に移籍して以降、Jリーグ6試合を消化した時点で、1勝3分2敗。一時は首位に立っていた鹿島の歩みは明らかにスローダウンし、優勝争いどころか、ACLの出場権がかかる3位以内からも脱落してしまった。
“上田ロス”の影響は予想以上に大きい。決定力不足が何しろ深刻だ。直近6試合における数字がその事実を浮き彫りにする。1試合平均得点が1点に過ぎず、また、半分にあたる3試合が無得点に終っている。勝ちきれない主たる要因はここにある。
チャンスは作る。だが、ゴールが決まらない。そんな苦しい現状から、いかに脱出しようとしているのか。獅子奮迅のパフォーマンスで攻撃陣をけん引し、ときには足を痙攣させながらもピッチに立ち続ける鈴木優磨が覚悟を口にする。
「攻撃が機能するために、いろいろ考えながらプレーしているけれど、(結果が出ていないだけに)もっと工夫しなければいけない。ここからチームが浮上できるか、どうか。自分次第かなと思っている。チャンスを作る。ゴールを決める。全部、オレがやるくらいの覚悟で戦う」
サッカーはひとりでは成り立たない。もちろん、そんなことは百も承知ながら、結果のすべてを背負い込もうとしている。クラブ生え抜き選手としてジュニア時代から長きにわたり鹿島に世話になってきたそれが鈴木の矜持でもあるのだろう。言葉の端々にあふれ出すクラブへの愛着や情熱がヒシヒシと伝わってきた。
前節の横浜戦(0-2)に敗れたあとは「今日は勘弁して」と、取材ゾーンを足早に通り過ぎたが、24節の広島戦の敗戦後は立ち止まり、グイッと顔を上げながらタイトル奪還に向けての変わらぬ思いも打ち明けた。
「今日の試合は、最後に自分のミスから失点してしまい、本当に申し訳ない。優勝の可能性が正直、小さくなったのは確か。オレらが勝ち続けても上が負けてくれないと届かない。そういう状況ではあるけれど、あきらめずに戦い続けることで、間違いなく自分たちの成長につながると信じている。最後に、良いシーズンだったねと言えるよう、自分ができることを100パーセント出し切りたい」
今季、およそ2年半ぶりに鹿島に復帰。シーズン開幕前の新体制会見で、「チームを勝たせるために帰ってきた」と所信表明したが、その姿勢を貫く。
Jリーグは泣いても笑っても残り10試合。ACLの出場権がかかる天皇杯はベスト8まで勝ち上がっているので、最多で3試合。佳境を迎えつつあるシーズンラストへ、キャプテンマークを巻き、背番号40を身にまとう大黒柱は思いのたけをぶつける。
取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)
◆停滞気味の鹿島が浮上できるかどうかは「自分次第」。結果のすべてを背負い込む鈴木優磨の覚悟「全部、オレがやる」(サッカーダイジェスト)