日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年2月26日日曜日

◆佐野海舟が鹿島アントラーズにもたらす中盤の分厚さ。誰しも目指すサッカー日本代表へ【コラム】(フットボールチャンネル)



佐野海舟


明治安田生命J1リーグ第2節、鹿島アントラーズ対川崎フロンターレが25日に行われ、1-2で川崎が逆転勝利を収めている。この試合のキーマンとなったのは、鹿島の中盤に据えられた佐野海舟。J2からやってきた新進気鋭の守備的MFは国内最高峰の舞台で強いインパクトを残していた。(取材・文:元川悦子)


鹿島アントラーズのキーマン


 2015年を最後に7年間、鹿島アントラーズは川崎フロンターレに勝っていない。それだけに、2月25日のJ1第2節のホームゲームは絶対に乗り越えなければいけないハードルだった。今の川崎は昨季までの主将・谷口彰悟が去り、レアンドロ・ダミアンや小林悠らが負傷離脱中。さらに2月17日の横浜F・マリノスとの開幕戦で車屋紳太郎が負傷交代し、ジェジェウも退場処分を受けてこの日は出場停止と、戦力的にかなり厳しい状況。鹿島にしてみれば、追い風なのは間違いなかった。

「川崎はうまいチームだし、すごく強いチーム。相手の良さをしっかり消しつつ、粘り強く守って自分たちの良さを出して、勝利できればいいなと思います」と町田ゼルビアから個人昇格してきたMF佐野海舟は試合前から意欲満々だった。

 過去4シーズンJ2を主戦場にしてきた彼にとって、直近6年間で4度のリーグ制覇を成し遂げている川崎は国内最高峰の相手。自身のレベルを測る試金石でもあった。

「自分は前節・京都サンガ戦が初めてのJ1の舞台だった。今回、トップを走っているチームを相手にどれくらいできて、勝てるかがすごく楽しみです」と本人も目を輝かせていた。

 大島僚太、脇坂泰人、ジョアン・シミッチの3枚が並ぶ川崎の中盤はJ1屈指。アンカーである以上、彼らの動きを封じるべく、ディエゴ・ピトゥカ、樋口雄太の両インサイドハーフと連動して守り、攻撃の起点としても存在感を発揮する必要があった。


佐野海舟が川崎フロンターレに与えた脅威


 気合十分の鹿島は開始早々の5分にいきなり先制点を挙げる。鈴木優磨の左からのクロスに反応したのは知念慶。古巣対決のFWが幸先のいいヘディング弾を決め、岩政大樹監督もド派手なガッツポーズを見せるほど、感情をむき出しにしていた。

 その後は案の定、川崎にボールを握られたが、鹿島は組織的守備で応戦した。アンカーの佐野は大島や山根視来といった日本代表経験者から危ない場面で巧みなボール奪取を見せるなど、ピンチを未然に防いでいた。

「ピトゥカや雄太君が前に行っている時はチームとしてもいい状況。僕がカバーしなければ彼らは前にはいけない。自分を信頼して前に行ってほしいと思っているんで、僕が全部カバーするくらいの気持ちでやっていました」と両インサイドハーフを攻撃参加させるべく、彼は自身のボール回収能力を力強く示していた。

 これには川崎MF陣もさすがに苦戦気味だった。脇坂は鹿島の昨季との違いをこう評した。

「中盤が3枚になって、中の分厚さを感じました。守備全体としても、昨季までは1対1の強い選手が数多くいたので、それが何回もあるような感じだったけど、今年はより組織的になった印象ですね」

 その「分厚さ」を演出するうえで、佐野海舟の存在はやはり大きかった。個人昇格した鹿島で加入直後から重要なポジションに抜擢されるだけの潜在能力を大いにアピールしていたのは間違いないだろう。


「油断か隙が…」岩政大樹監督の反省


 後半も鹿島は固い守備で主導権を握っていたが、知念と樋口が下がった後半23分あたりから徐々に運動量と強度が低下し始める。百戦錬磨の鬼木達監督は勝負どころを見逃さず、後半34分に3枚替えに踏み切る。ルーキー・山田新ら攻撃の駒を複数投入したことで、川崎の反撃体制が一気に加速すると見られた。

 だが、直後に山村和也が仲間隼斗の決定的機会を阻止して一発退場。これで数的優位に立った鹿島は「これで勝てる」と確信したはず。岩政大樹監督がラスト5分でキャプテンマークを巻く鈴木優磨を下げたのも、ある程度の計算があってのことではないか。

 けれども、サッカーというのは一筋縄ではいかないもの。ここから逆に川崎のギアが上がる。終了間際の44分にリスタートの流れから家長昭博のバイシクルが飛び出し、右から飛び込んだ山田が右足を合わせてゴール。ギリギリのところで1-1に追いついた。

 ガックリした鹿島とは対照的に、川崎は「行ける」と感じたのだろう。長い後半アディショナルタイムの間にさらに攻め込み、瀬古樹のシュートを荒木遼太郎がゴールギリギリのところで防いだシーンがハンドの判定となり、川﨑にPKが与えられた。

 キッカーは家長。彼のコロコロシュートはいったんはGK早川友基の正面に飛び、万事休すかと思われたが、キッカーが蹴る前に早川が前に出たためやり直しに。2度目となれば、さすがの名手は決めてくる。最終的に川崎が逆転に成功し、1-2でタイムアップの笛。またしても敗れる結果となった鹿島の面々は呆然とするしかなかった。

「そんなに甘いものではなかった。今日勝てれば大きな自信のもとで今シーズンを進めていけただろうが、それが目の前にチラついて、油断か隙が生まれたのかもしれない」と岩政監督も反省していた。


佐野海舟の理想と課題


 川崎という高い壁に初めて阻まれた佐野も悔しさを噛みしめたに違いない。

「ボールを奪えるシーンもありましたけど、本当に大事なところで防げないといけないし、試合の流れをもっと読んで自分がどう振舞うかを考えていく必要があると思いました。

 自分もチームもやらなきゃいけないことが沢山ある。1つ1つクリアして、シーズン終盤に向けて改善して、タイトルを取れるチームになっていきたい」と背番号25は気力を振り絞って必死に前を向いた。

 そのためにも、自身のクオリティを高め、J1トップ基準の駆け引きを覚え、ゲームをコントロールできるようにならなければならない。名門・鹿島の中盤を担う選手というのは、誰もが認める圧倒的な存在感をつねに示し続けることが求められるからだ。その大仕事を遂行できるようになった先には、日本代表などの高い目標も見えてくる。まだ22歳と若く、J1経験の少ない佐野には際限ない伸びしろがある。そこは前向きに捉えていい点だ。

「僕の理想は(エンゴロ・)カンテ選手。日本で言えば、遠藤航選手や守田(英正)選手。僕はボールを奪うのが武器なんで、そこはしっかり伸ばしつつ、いかに流動的にボールを動かせるかという部分もやらないといけない。そこが課題だと思っています。

 日本代表は誰しもが目指すところ。ただ、自分はまだレベルが足りていない。課題をクリアして近づいていけるようにしたいです」

 悔しい敗戦と引き換えに、自分のやるべきことが明確になった佐野。これをどう今後に生かすかが重要だ。彼ら若い世代がどこまで力をつけていくか。常勝軍団復活のカギはそこにあると言っていい。

(取材・文:元川悦子)




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