日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年9月16日日曜日

◆安部裕葵は断言。「環境や先輩が 僕をサッカーに夢中にさせてくれる」(Sportiva)



安部裕葵 Hiroki.Abe


遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(28)
安部裕葵 後編


◆土居聖真「ボールを持つのが 怖くなるほど、鹿島はミスに厳しかった」(Sportiva)
◆中田浩二「アントラーズの紅白戦は きつかった。試合がラクに感じた」(Sportiva)
◆中田浩二は考えた。「元選手が 経営サイドに身を置くことは重要だ」(Sportiva)
◆スタジアム近所の子供が守護神に。 曽ヶ端準とアントラーズの幸せな歩み(Sportiva)
◆曽ヶ端準「ヘタでも、チームを 勝たせられる選手なら使うでしょ?」(Sportiva)
◆移籍組の名良橋晃は「相手PKに ガックリしただけで雷を落とされた」(Sportiva)
◆名良橋晃がジョルジーニョから継ぎ、 内田篤人に渡した「2」への思い(Sportiva)
◆レオシルバは知っていた。「鹿島? ジーコがプレーしたクラブだろ」(Sportiva)
◆「鹿島アントラーズは、まさにブラジル」 と言い切るレオシルバの真意(Sportiva)
◆「ジーコの負けず嫌いはハンパなかった」。 本田泰人はその魂を継いだ(Sportiva)
◆「アントラーズの嫌われ役になる」 本田泰人はキャプテン就任で決めた(Sportiva)
◆ユースで裸の王様だった鈴木優磨が 「鼻をへし折られた宮崎キャンプ」(Sportiva)
◆鹿島・鈴木優磨のプロ意識。 いいプレーのため、私生活で幸運を集める(Sportiva)
◆岩政大樹の移籍先は「アントラーズと 対戦しないこと」を条件に考えた(Sportiva)
◆三竿健斗は感じている。勝たせるプレーとは 「臨機応変に対応すること」(Sportiva)
◆三竿健斗は足りないものを求めて 「ギラギラした姿勢で練習した」(Sportiva)
◆森岡隆三が鹿島で過ごした日々は 「ジレンマとの闘いだった」(Sportiva)
◆清水への移籍を迷った森岡隆三。 鹿島と対等での戦いに違和感があった(Sportiva)
◆安部裕葵は中学でプロになると決意。 その挑戦期限は18歳までだった(Sportiva)


「このゲーム、難しいのは相手のほうなんだから。俺らは普通にやればいい」

 9月9日ルヴァンカップ準々決勝セカンドレグの対川崎フロンターレ戦。試合開始直前。円陣を組んだとき、内田篤人はそう話した。5日に行われたファーストレグでは1-1と引き分けた。しかし、その内容に満足している選手はいなかった。

「チームとしてもやっぱり、前節の敗因というか、負けてはいないけれど、内容が良くなかったというのは、みんなわかっていたし、ミーティングでもそういう話になった。だから、今日(セカンドレグ)は、しっかり複数点をとって、しっかり勝とうと。やっぱりこの前の試合(ファーストレグ)のフワッとした入りに対しての反省もあって、今日は立ち上がりから、しっかり入れた」と語った山本修斗が28分、37分と2ゴールを決め、試合は鹿島有利な展開に持ち込めた。

 「どうしても失点をするとドタバタしてしまうという現象があったので、レオを通じて、『3点目をとったら試合が終わるんだから、そのタイミングをみんなで見計らって狙っていこう。落ち着いてやってほしい』と伝えてもらった」

 後半へ向かう直前、セルジーニョはレオシルバに依頼する。

 51分、PKを決められて、失点してしまう。失点直後、DF陣を集めて内田篤人は繰り返す。「2-2でも俺らが勝てる。普通にやろう」と。

「多少(ボールを)回させても、鹿島のセンターバックは、真ん中2枚がどっしり構えている。そういう雰囲気があるけれど、第1戦の試合ではそれがなかった。ワンちゃん(犬飼智也)やマチ(町田浩樹)は、昔の(大岩)剛さんや岩政(大樹)さんみたいに数多くの経験があるわけじゃないけれど、鹿島のセンターバックって、Jリーグのほかのチームとは違うと思うんだよね、俺は。それを助けたい。DFラインをしっかり締めること、雰囲気」と内田は言い切った。若いセンターバックが醸し出すべき”雰囲気”を作ろうと考えたのだろう。それは彼が鹿島でなすべきひとつの任務でもあった。

「自分が見てきた、上の人たちのプレーをそのままやっているだけです。アントラーズの伝統というか、そういうのはやっぱり、伝えたり、表せなければ、もったいない。下に伝えるというのは、自分がやらなくちゃいけない仕事だと思っている」

 球際で激しく戦い、タッチを割ったボールが相手ボールとなれば悔しがった。小さなディテールにこだわり、闘志を表現した。

 試合の行方を決定づける3点目は、後半27分にセルジーニョが決めた。

「自分というよりは、チームとしてその3点目をとれれば楽になるので、それを考え、みんなでプレーしていた。たまたま自分のところにこぼれてきたので、それを決めることができた。こういうプラスの結果を全員が求めていたので、それができて良かったと思います」

 エゴよりも忠誠心や献身性を大切にするセルジーニョの姿勢が表れるコメントだった。

「内容や結果に波がある。俺たちには地力がまだない」

 内田はそうクラブの現状を口にする。同時にこうも言った。

「今日みたいな試合を続けていくと、気づいたときには勝ってきたな、タイトル獲ってきたなって、なるチームだから」

 9月18日、いよいよACL準々決勝セカンドレグの対天津権健戦が行われる。異例の直前の会場変更でマカオでの開催となり、ピッチを含めて、スタジアムなどの環境面での不安も少なくはない。それでも、2-0と快勝した第1戦を繋ぐ試合にしてほしい。

2018年6月、ワールドカップロシア大会を戦っていた日本代表の宿舎では、U-19日本代表も合宿を行っていた。第1戦のコロンビア戦翌日、その試合に出場しなかった代表選手とU-19は紅白戦を行っている。そのとき、安部裕葵は、U-19チームではなく、代表チームの一員としてプレーした。

「周りの選手が代表選手で、自分より巧い先輩たちのなかで、プレーする楽しさや幸福感は今でも覚えています。でも、自分がなにをプレーすべきかということしか考えてなかったです」

 19歳の安部は淡々とそう振り返った。動じない強いメンタルが伝わってくる。






――テクニカル・ディレクターに就任したジーコさんのことをどんな風に感じていますか?

「最初は非日常的な感覚がありましたね。『ジーコさん、いるんだ』みたいな。それは、アントラーズに来た当初、クラブワールドカップで準優勝した姿をテレビで見ていた選手たちを実際に間近で見て、驚いたのに、少し似ているかもしれません」

――ジーコTD(テクニカルディレクター)からのメッセージをどう受け止めていますか?

「普段、練習や試合で、先輩やコーチングスタッフからかけてもらう言葉と根底が同じなので、改めてこのクラブが大事にしているものを再確認しています。同じ言葉であってもジーコさんが、違う角度から言ってくれるので、そのメッセージの重要性を改めて理解できます。目に見えるものだけが大事なわけじゃなくて、目には見えない力というのも当然大事だし、ジーコさんの存在が雰囲気を作るだろうし、自然と意識が高くなりました」





――勝利へのこだわりというのが、アントラーズには強く受け継がれていると言われています。

「勝ち方というのも重要です。でも、アントラーズの選手は、勝つことにすごくこだわりを持っていて、その姿勢が内容に出ているだけで、僕らは内容にこだわろうとしているわけではない。勝つことにこだわっているから、勝つための内容になるんだと思います」

――そのためには、自分のゴールよりも、チームメイトのゴールを優先することもある。

「もちろんあります。だけど、自分で行くべきところもあります。チームのためが自分のためになることもあれば、自分のためにすることがチームのためになることもあります」

――競争という意味では、自身の特長をどう考えていますか?

「僕の特長というのはその試合その試合で変わっていくものだと思っています。そのうえで、まだ僕にないものを身に付けなくちゃいけないですし、あるものはもっと伸ばさないといけない。1年後、5年後、10年後まったく違うプレースタイルになっているかもしれないですし。それはわからない。何がいいのかもわからない。そこは柔軟にやっていこうと思っています」

――プロになって1年半が経ちましたが。

「小さいころから憧れていた職業に就いたわけですが、本当に幸せな仕事に就いたなと、プロになって改めて感じています。自分が頑張って、なにかをすることで、喜んでくれる人がいるというのは幸せですね。学生時代は家族や友だちだけだったけれど、今ではたくさんの人に影響を与えられる。その責任やプレッシャーはもちろんありますが、それはどんな仕事でも同じだと思います。だから特別だとは思わないけれど……」

――それでも、子どもたちに夢を与えられる。

「(そういう)仕事だと思います。小さい子が僕らに会うだけで、目をキラキラさせている。僕自身、子どものころに憧れの選手がいなかったので、そういう経験がない。だから、プロになって初めて『そういう仕事なんだ』と思いました。こういう立場にいることを感謝して、やっていかなくちゃいけない」


――ワールドカップロシア大会を現地で観戦し、地元チームとの親善試合もあったロシア遠征で、ワールドカップが現実味を帯びましたか?

「スタジアムに足を運び、その雰囲気を体感して、『ああ、ここでやりたい』と鳥肌が立ちました。そんなふうに見たモノに憧れを抱いた経験は、僕の人生では初めてのことでした」

――今後、U-20ワールドカップ、東京オリンピックと、世界の舞台に立つチャンスがありますね。

「そういう舞台を経験すれば、また想いは強くなるんだと思います」

――5年後のビジョンはどんなふうに描いていますか?

「まだ、なんとなくですけど、海外でプレーしたいというのはあります。常に新しい環境にチャンレンジするのが好きなので。それは、アントラーズを出たいというわけじゃなくて、ここでプレーし続けたいという気持ちも当然強いです。でも、挑戦できる立場なのだから、挑戦したい。今の僕は、なんでもできる立場だし、可能性がある。チャレンジできるタイミングがあれば、チャレンジしなくちゃいけない。世界中で多くの人が目指している職業になれたというのは、運がいいことですし、だからこそ、サッカー選手になったことを無駄にはしたくない」

――10月にはAFC U-19選手権(2019年U-20ワールドカップアジア予選)が開催されます。

「どんなメンバーになるかもわからないですし、僕が選ばれるかもわからない。だから、僕がやることは、アントラーズでいい準備をして、代表に呼ばれたときに、いかに力になれるかだと思っています。U-19代表のために鹿島アントラーズで練習するわけじゃなく、自分のレベルアップのためにやっていければ。日本のためにも鹿島アントラーズのためになると思っています」

――忙しくなりますね。

「この仕事をしていて、忙しいというのは、充実しているということだから、もっと忙しくなるように頑張りたい。でも、浮かれず、足元を見ながらやっていきたいです。1日1日しっかりやり抜くというのは、一番単純だけど、一番難しいことなのかなと。でもだからこそ、それを大事にしたいです」

――アントラーズというクラブの環境は、ご自身にどんな影響をもたらしていますか?

「プラスであることは間違いないです。でも、本当にそれが良いものだったのかどうかは、今はわかりません。この先、僕が日本を代表する選手になったとき、ここへ来たことが正しかったと言えるんだと思います。ただひとつ言えるのは、今僕はサッカーに夢中だということ。周りの環境や先輩の存在が、僕をサッカーに夢中にさせてくれている。だから毎日疲れも感じないです。サッカーのことだけしか考えていないので」


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