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日本代表のブラジルW杯メンバーにJ2から唯一の選出となったDF伊野波雅彦(磐田)。A代表デビューを飾った2011年1月のアジア杯以降、国際Aマッチ出場数こそ20試合と多くないが、センターバックとサイドバックをこなし、3バックにも対応できるユーティリティー性はアルベルト・ザッケローニ監督からも高く評価されている。自身初のW杯を直前に控え、どんな心境で、どんな決意を胸に秘めているのか――。
―まずW杯メンバーに選ばれた率直な感想をお願いします。
「ザッケローニ監督になって、東アジア杯以外はずっと代表に呼んでもらっていましたが、(W杯メンバーに)入れるかどうかは分かりませんでした。ただ、もし落ちたとしても悔いはなかったですし、それまで経験させてもらったことに感謝しています。ですので、発表のときは意外と冷静というか、落ち着いていました」
―名前を呼ばれた瞬間はどんな気持ちでしたか?
「うれしかったですけど、それと同時に、これまで一緒にやってきた選手もいますし、一緒にやってきたチームメイトもいます。彼らの分までがんばらないといけない、結果を残さないといけない。そういう使命を果たさなければいけないという気持ちになりました」
―どういう状況でメンバー入りを知ったんですか?
「家にいたんですが、僕はテレビを見ていなくて、妻がテレビで見ていました。北京オリンピックのときも見ていなかったですし、(メンバーが)出てからでいいかなと」
―奥さんから聞いて知ったということですか?
「そうですね。携帯が鳴り始めて、これは入ったなと」
―ご家族も含めて周りの反応というのはいかがでしたか?
「W杯はやっぱりすごいんだなと。今までアジア杯やコンフェデなど、いろんな大会に出ましたが、W杯はまた別物なんだなと思いました。それは携帯が鳴り始めたときに感じました」
―大久保選手は1000通ぐらいメールが来たそうですが、同じような感じでしたか?
「2日間ぐらい止まらなかったですね」
―一方でチームメイトの前田選手や駒野選手は残念ながら選ばれませんでした。
「今までどおり、何事もなかったように接してもらっていて、もちろん悔しい思いはあるはずですが、そういう様子を見せずにというか、そういう状況をつくってくれています。細貝萌とも代表でずっと一緒にやってきて、僕と同じようにずっと最初から呼ばれていた選手でした。彼と一緒に行けないのは本当に残念ですが、彼の分までがんばりたいという気持ちです。(細貝とは)一緒にいることも多かったですし、お互い試合に出られないことも多かったんですが、その中でアジア杯では2人とも同じような感じで点も取りました。4年間ずっと一緒にやってきたので、彼の思いは絶対に一緒に乗っけてブラジルに行かないといけないと思っています」
―監督からは自分のどういうところが評価されていると感じていますか?
「センターバック、サイドバック、3バックになったときと、3つのポジションを果たせるというのもありますし、その中でスピードやビルドアップ、1対1の対応という部分ですかね。とにかくスピードが一番重要なところで、そこを重要視して選んでもらっているのかなと思っています」
―ザッケローニ監督の戦術はかなり緻密なイメージがあります。
「本当に細かいですね。例えばDFラインだったら、相手がどういう体勢で、どこにボールがあるかという状況に応じて、体の向きやポジショニングも1m単位で指示されます。ここにボールがあって、こういう状況のときは1m下がる、このときは3m下がる。何mという感じで言われています」
―一番最初に指導を受けたときは衝撃的でしたか?
「日本人はどうしても言われたことを聞いてしまって、それにとらわれ過ぎて、型にハマりすぎる面もあります。それで苦労した部分はありましたし、メディアからもそう言われていた時期もありました。今までだったらそれで終わっていたかもしれないですが、選手で話したりして、それだけにとらわれずにやろうという雰囲気が2年目ぐらいから出てきました。セルビアやベラルーシに負けたときも、ハセさん(長谷部誠)が指揮を執ってミーティングで自分たちのイメージを共有して、それを監督にも伝えました。めちゃくちゃ細かいですけど、自分たちの意見も共有してくれる感じですね」
―プラスアルファができてきていると?
「できているし、それを飲んでくれる監督でもありますね」
―W杯についてはどんなイメージを持っていますか?
「今までは夢というか、たどり着いて満足してしまうような状況だったんですが、やっぱりそこに行ってからが勝負だと思いますし、そこで結果を残すことが日本代表にも求められている時代だと思います。本当に大きな大会ですが、そこで結果を残さないといけないと思っています」
―気になるチームや選手はいますか?
「僕はクロアチアに行っていたので、そこで一緒にやっていた選手は気になりますね。今、モナコにいるGKのダニエル・スバシッチとはすごく仲良くしていたというのもありますし、クロアチア代表には僕のいたハイドゥク・スプリトから3人ぐらい、友達も含めたら4、5人入っています。ちょっと厳しいグループですけど(編集部注:ブラジル、メキシコ、カメルーンと同じA組)、自分がやっていたリーグでもあるので、知っている選手もいますし、気になりますね」
―W杯への意気込みと個人的な目標をお願いします。
「ここ数年、日本のサッカーに対する周りの見る目も変わってきたと思いますし、結果を求める時代になったと思います。結果を残さないと何も始まらないと思いますし、まずはそこですね。結果を残すことが一番の目的で、個人的には試合に出て、しっかり結果を残す。ピッチに立って仕事をするということですね。みんなも言ってますが、ベスト8以上は行きたいと思っています」
―個人的に結果を出すというのは?
「どういう状況でも、どういう環境でも、しっかり対応して、そこで結果を残す。失点を減らすということですね。今、守備面を心配されている人もいると思うんですけど、そういう人を見返すというか、驚かせられるようなプレーができればいいかなと思っています」
―スパイクはずっと「ティエンポ」を履いているそうですね?
「中学2年ぐらいから履いています。他のスパイクはほとんど履いたことがないですね。もともとデザインも好きでしたし、シンプルで、履きやすいです。それしか履いたことがないので、他が分からないというのもあります(笑)」
―スパイクに求める要素、こだわりはありますか?
「DFは滑ったら終わりなので、滑らないようにするのと、あとは結構、横の動きが多いので、横幅が広がりすぎないようにしてもらっています」
―ゲン担ぎみたいなものはありますか?
「試合のときだけではないですけど、子供の名前をスパイクの内側に入れてもらっているんですが、そこを触ってから紐を結ぶようにしています」
―それはいつごろからですか?
「ナイキを履き始めて子供が生まれたのが2010年なので、そのときからですね」
―それでは最後に、このティエンポを履いてブラジルでどんなプレーを見せてくれますか?
「スピードのあるプレーを見せたいですね。DFですけど、ディフェンスでのスピード。あまりティエンポはスピードがあるスパイクと思われていないので、『マジスタ』に負けないように、『マジスタ』を履いている選手に負けないようにしたいですね」
―「マジスタ」は履いてみましたか?
「履いてないです。『マジスタ』とか『マーキュリアル ヴェイパー』とか、足が速そうに見えるじゃないですか。それに負けたくないです」
―逆にそういうスパイクを履きたいというのはないんですか?
「ちょっとありますけど、それじゃ面白くないので(笑)。『この靴も負けてないぞ』『そういうスパイクにも対抗できるぞ』というスピードを見せたいですね」