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[6.18 全国高校総体茨城県予選準決勝 鹿島学園高 2-2(PK3-2)水戸桜ノ牧高 カシマ]
平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)茨城県予選は18日、準決勝を行い、鹿島学園高が2-2でもつれ込んだPK戦の末、水戸桜ノ牧高に3-2で勝利。鹿島学園は22日の決勝で4年ぶりの全国総体出場を懸けて明秀日立高と戦う。
伝統のパススタイルをベースに置きつつも、今大会は勝負にこだわるサッカーで1点差ゲームを制してきたV候補・鹿島学園と、96年以来18年ぶりの全国大会出場へ向けて進撃してきた好チーム・水戸桜ノ牧との一戦は、2点を先取した鹿島学園に対し、水戸桜ノ牧が2点を奪い返す展開。延長戦を含む100分間で決着がつかず、PK戦へと突入した。
後攻・鹿島学園の1人目のシュートを水戸桜ノ牧GK根本将(3年)が左へ跳んでストップ。ガッツポーズを連発する根本が喝采を浴びるが、続く水戸桜ノ牧の2人目を鹿島学園GK根本俊(3年)が右へ跳んで止め返す。4人目がクロスバーに当てて失敗した水戸桜ノ牧に対し、鹿島学園は3人連続で成功。最後はこの日鮮やかな左足シュートを決めるなど奮闘していたMF長州誠哉(3年)のシュートを鹿島学園GK根本が左へ跳んで止めて決着がついた。ピッチに両ひざをついたままガッツポーズする根本に鹿島学園イレブンが駆け寄り、喜びを爆発。一方、紙一重の差で敗退の決まった水戸桜ノ牧は直後の3位表彰式の間も涙が止まらなかった。
昨年は全国舞台に立つことができず、今年も新人戦、関東大会予選とタイトルを逃した鹿島学園は、CB森谷実主将(3年)が「2個落としている分、今大会は勝たないといけない」と語るように、今大会は勝負にこだわるサッカーを徹底することを選手たちが決意。その意見を尊重したという鈴木雅人監督は「中盤をつくりながらやりたいですが、今回は泥臭く裏を狙う。我慢しながら裏を狙って戦います」。勝っても、負けてもやり通してきたパススタイルではなく、中盤をつくってから素早くオープンへ展開する鹿島学園。先制したのはその鹿島学園だった。
前半10分、相手のパスを中盤でカットすると、右MF金子修羅(2年)がDFの背後へループパスを落とす。左サイドからダイアゴナルに走り込んできたFW金沢良太(3年)が必死に伸ばした足でゴールへ沈め、狙い通りの形で鹿島学園がリードを奪う。対する水戸桜ノ牧はともに高い攻撃力を備えた右の長州、左のMF鈴木智也(3年)の両アタッカーをFW池田諒介やMF小森翔平(ともに3年)らがサポート。上手くスペースとフリーの選手を活用しながらボールを運ぶと、13分には10番を背負う右SB飯村惣駿主将(3年)の絶妙な左足クロスにMF市塚寛大(3年)が飛び込み、22分には左サイドから切れ込んだ長州がPAでDFかわして深くえぐる。また25分には右中間から長州が左足シュートを放つなどシュートシーンを増やしていった。
だが、再びスコアを動かしたのは鹿島学園だった。30分、MF清成俊太(3年)からのパスをPA内左寄りの位置で受けた金沢が切り返しから逆サイドのゴールネットへ右足シュートを沈めるファインショット。これで2-0となった。水戸桜ノ牧は36分に左サイドの池田からのパスをニアでスルーし、長州が決定的な左足シュートを放つが、枠外。鹿島学園が2点リードで前半を折り返した。
後半立ち上がり、鹿島学園は清成、MF日向寺見文(3年)を軸にボールを動かし、左MF室井佑斗(3年)のドリブル突破や金子の展開を交えて攻める。そして金沢が相手の急所へ飛び出すなど、攻撃時間を増やしていった。対する水戸桜ノ牧は6分にスルーパスで市塚が抜け出したが、鹿島学園GK根本が距離を詰めてシュートを撃たせず。点差を詰めることができない。
それでも11分、水戸桜ノ牧はDFに前方を遮られながらも右サイドから強引にカットインした長州が、左足でゴール左上隅に突き刺すスーパーゴール。鹿島学園・鈴木監督も「あのシュートでリズムが変わりましたね」と讃えた一撃で水戸桜ノ牧が勢いに乗る。すると、18分、右サイドを縦に仕掛けた池田がPKを獲得。これを池田が自ら右足で左隅へ決めて同点に追いついた。
ここからは勝負を決めに行った両チームによる激しい打ち合いになった。21分に相手GKのミスキックを拾った鹿島学園FW山中天太(2年)が左足シュート。明秀日立は27分に交代出場の左SB野沢優希(3年)のグラウンダーのクロスがゴール前を抜けてファーサイドヘ届きかけ、直後の右CKではファウルによって取り消されたもののCB中井孝宥(2年)のヘディングシュートがゴールネットを揺らした。その後も鹿島学園MF清成がドリブルシュートを連発し、水戸桜ノ牧もカウンターからMF弦巻柊也(2年)がシュートへ持ち込むなど、互いが前へ前へと出て行った試合は、両校DF陣の集中した守備もあって延長戦へ突入。ここでも水戸桜ノ牧は飯村のダイナミックな攻撃参加で会場を沸かせ、鹿島学園も存在感を放っていた室井の左クロスからMF須藤良介(3年)が放ったヘディングシュートやCB中村彰吾(3年)の右足FKで相手ゴールを脅かした。
鹿島学園15本、水戸桜ノ牧16本のシュートを放った打ち合いは2-2のままスコアが動かずPK戦で決着。キレイにつなぐことにこだわらず、泥臭く戦い抜いて再び接戦を制した鹿島学園の森谷は「(泥臭く勝利を目指す点は)自分たちにとって足りない部分だった。(勝ちにこだわるスタイルで)今のところ上手くいっている。(明秀日立には2年前の決勝で敗れているので)先輩の雪辱を果たせるよう、最高の準備をしたい」。鈴木監督は「(結果にこだわるあまり)今大会は1試合もいい内容の試合がないです」と苦笑いしていたが、それでも勝負にこだわって結果を残した鹿島学園が全国大会出場へ王手を懸けた。
(取材・文 吉田太郎)