今季限りでの現役引退を発表した鹿島アントラーズの元日本代表MF小笠原満男(39)が28日、ホームのカシマスタジアムで会見を行った。記録にも、記憶にも残る名選手。日刊スポーツの歴代担当記者がその人物像を描いた。
◇ ◇
12年1月中旬。冷たい冬の雨が降りしきる鹿島クラブハウスの駐車場で、小笠原を待っていた。同期の盟友MF本山雅志(現J3北九州)とともに、米MLSのクラブに移籍を視野に入れているという情報が入り、1対1で話すため、自主トレ終わりを直撃した。
担当を外れて1年半あまり。突然現れた記者の顔を見て「珍しいですね」と一言。直撃の理由を伝えると、一瞬の沈黙の後「記者さんもプロの仕事をしているから、書くなとは言えない。ただ、現状をしっかり説明させて下さい」と、決然とした表情で話し始めた。
表面上は自主トレを兼ねた練習参加とされたが、米挑戦の希望があること、現地で練習参加して環境や待遇を判断しないと決められないこと…。「希望しても実現するかはまだ分からない」とも。久しぶりに顔を出した一記者の仕事を鑑みながら、努めて誠実に。
自家用車の中から、窓を降ろして対応したため車内に雨が降り込んでいた。それを指摘すると「記者さんもぬれているから一緒でしょ」。結果的に即時に原稿にはせず、推移を見守り、移籍は実現しなかった。ただ、ガチンコにはガチンコで返す「男」の姿を見た。【09年鹿島担当=菅家大輔】
◆小笠原満男「記者さんもプロ」直撃取材に誠実な対応(ニッカン)