内田篤人 (蒼きSAMURAIワールドカップをめざせ!) [ 本郷陽二 ]
「変えられる自信はある」とキッパリ
[ACL第6節]鹿島2-1山東魯能/5月22日/カシマ
「失点より、点が取れないほうが問題だと思っていた。今日に関しては」
ACLのグループステージを突破決めた5月22日のホーム山東魯能戦、内田篤人はそんな風にゲームを見ていたという。
11分にCKから先制点を奪われる展開。高いポゼッション率で主導権を握っていたのは鹿島のほうだったが、人数を割いて守る山東魯能の守備をなかなか崩せずにいた。
「4枚か5枚か分からないけど、しっかりゴール前を固められたら、相手もデカいしね、難しいよ、それが大学生や高校生だったとしても。撥ね返す力もあったし」
だが、後半に途中出場の伊藤翔が電光石火の2ゴールを叩き込み、試合をひっくり返す。同じ88年生まれのチームメイトの活躍を内田も称える。
「前の選手が点を取るのはやっぱりいい。チームとしても、彼自身も乗るし。短い時間で仕事をするのは、さすがだなと思った」
この日、内田の主戦場である右SBには腕章を巻いた永木亮太が入った。本職のボランチで見せるプレー同様、攻守両面でタフに戦った。
「亮太は、しっかり頑張るから。頑張ってやってくれている。周りからの信頼もある。ああいう真面目な選手がキャプテンをやったほうがいいね。長谷部(誠/元日本代表キャプテン)さんとかさ」
ただ、鹿島のキャプテンは背番号2だ。「早く復帰してほしいし、内田篤人が先頭に立ってアントラーズを強くする姿を見たい」と、こちらの勝手な言い分を押し付ける。
本人からすれば、迷惑な話だろう。だが、内田は「そういう声がなくなったら寂しいし、そう言ってもらえるのはありがたいですよ」とこちらを気遣ってくれる。
「身体が動けば。責任もあるし、キャプテンとしてもね、やらなければいけないことはたくさんあるんで」
歯がゆさを感じているに違いない。以前、リーグ戦でチームが不安定な戦いを続けていた時期だったか、練習後の雑談で、内田は自分以外でチームを引っ張ってくれるだろう選手の名前を何人か口にしたことがあった。だから大丈夫、心配ないよ、と。
そんな内田に、「でも自分がピッチに立っても、それができる自信があるのでは?」と問いかければ、「変えられる自信はある」とキッパリと言った。強い確信が込められて、その言葉は響いた。
5節の磐田戦で痛めた箇所がまだ芳しくなく、しばらく実戦から遠ざかっている。だが、順調に回復はしているようだ。
連覇を狙うACLはラウンド16に進出。リーグ戦でも目下3連勝中と、タイトル奪取に向け、常勝軍団がいよいよ“本気”を出してきた。ここからさらに熾烈な戦いが待ち受けるが、その時こそ、百戦錬磨の内田の力が必要になってくるはずだ。
完全復活を見据えて、今は静かに、牙を研いでいる。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
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