
日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年7月25日火曜日
◆鹿島の18歳・安部のセビージャ戦のアシストはミスから生まれていた(the WORLD)
セビージャ戦でMOMを獲得した安部のプレイを振り返る

映像でプレイを見たことはあったが、実際にスタジアムで目にするのははじめてだった。今季から鹿島でプレイする安部裕葵(あべ・ひろき)は高卒ルーキーで、いまはまだ18歳(1999年1月28日生まれ)。これまで出場したJ1(第5節大宮戦、第8節磐田戦)、ACLのブリスベン・ロア戦、天皇杯2回戦のFCマルヤス岡崎戦(2得点1アシスト)でのダイジェスト映像などを見ると、動きが俊敏でスピードがあるタイプとは認識していた。
なにより、鹿島で高卒1年目の選手が試合に出るのは非常にハードルが高く、当たり前だが簡単なことではない。実力不足の若い選手が試合に出られるチームではなく、たしかな実力がなければ公式戦でピッチに立てない。そう考えると、安部が高いポテルシャルを持つことは容易に想像できたが、22日のセビージャ戦(鹿島2-0セビージャ)では期待を上回るパフォーマンスを見せてくれた。
無論、相手にドッと疲労感が出てきた後半なかばから、特徴を知る由もない相手に対してのプレイだったが、それを差し引いても強烈なインパクトを残したのは間違いない。こういった親善試合では珍しく、2得点した鈴木優磨ではなく、安部がMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出されたことがどれほど輝いていたかを証明している。
実際、先制点をもたらした72分のプレイは圧巻だった。右サイドでスローインを得た鹿島は、伊東幸敏が土居聖真へ送り、そのまま伊東がシンプルにリターンを受ける。このボールに対して、中央やや右寄りにいた安部が相手に背中を向けた状態で反応し、小さく右手を動かして「ここにくれ」と要求する。伊東がワントラップで正確にその場所へパスを送ると、安部はキレのあるトラップでまずスティーブン・エンゾンジを置き去りにし、続いてアタックにきたクレマン・ラングレも瞬時のスピードでかわす。さらに、慌ててカバーにきたセバスティアン・コルシアを“ダブルダッチ”で華麗にいなし、ついにGKと1対1に。最後はより得点になる可能性が高いラストパスを左サイドに転がし、追走していた鈴木が左足シュートを決めて得点となった。
自身がパスを受けたところから、鈴木のフィニッシュまで──。試合後、安部は一連の流れについて丁寧にコメントした。曰く、「持ちネタであり、自分の武器」と語る自信のあるプレイ、普段の練習どおりだったというデザインされた動きがあれば、突発的に生まれたミスもあったという。そうしたなか、良いリアクションが取れたことがゴールにつながったと“あの瞬間”を振り返った。
トラップミスをスピードでカバー。大岩監督は「続けることが大事」と語る

得点につながった一連の流れがはじまったプレイ、伊東からの横パスを受けたシーンについて、「あのポジションでボールが来るときに、パスが出る瞬間に一歩二歩下がって受けるのが持ちネタであり、本当に毎日の練習でも使っているプレイです。どんな選手にも通用するので、自分の武器だと思っています」(安部)と振り返った。
相手に背中を向けて自陣に下がると見せかけて、トラップの瞬間に切り返してワンタッチで相手を置き去りにする。このときマークしていたエンゾンジは極めて身体能力が高い良質な選手だが、お疲れ気味でこの動きについていけず。「後ろにスペースがあったので、1人目をかわしたらフリーになるのはわかっていました」というイメージどおりになった。ところが、このときに安部は同時にミスも犯していた。
「トラップが自分で思っているよりもちょっと内側というか、相手のほうにいってしまいました。2人目をどうするというイメージがなく、長くなってしまったんです」
少し長くなったボールに対して、セビージャはすかさずラングレが身体を寄せてきた。ここの勝負に負けていたら、ゴールはなかった。しかし、安部のミスに対するリアクションがここでの競り合いに勝利をもたらした。
「ミスによってスピードを上げないといけなくて、うまく自分がスピードに乗ることができました。相手よりも早く足が出るのが特徴なので、いいリアクションができて良かったです。練習の紅白戦でも基本はタテに早いプレイをしているので、いつもどおりでした。ゴールにつながって良かったです」
ラングレをかわした安部は、サポートにきたコルシアを今度はダブルダッチでかわし、アッという間にGKと1対1に。自分でもフィニッシュできる状況だったが、「(最後は)なにも考えていなかったです。左側にアツくん(中村充孝)が見えて、ユーマくん(鈴木優磨)が来ているのもわかっていました。ゴールも見えていましたが、左に転がせば入ると思って自然と身体が動いていました」という判断でラストパスが出され、鈴木のゴールが生まれることとなった。
セビージャ戦で強烈なインパクトを残したが、前述したとおり鹿島の生存競争は激しく、そう簡単に試合に出られるチームではない。安部はもちろん、この日に2得点した鈴木もポジションが確約されているわけではない。というより、年齢に関係なく、この部分に関してはどの選手も同じ立場というプロフェッショナルな意識が鹿島にはある。経験が浅くても、活躍によってはどんどん出場機会が増えていくのがサッカー界の常だ。大きな可能性を持つ安部、鈴木という2人の若手について、大岩剛監督は試合後に以下のようにコメントしている。
「2人とも気持ちの入ったパフォーマンスをしてくれました。これをやり続けること。本人たちが今日の試合から自信を得たかどうかわかりませんが、これからの成長の糧にして、とにかくやり続けることが大事です」
長いサッカー人生のなかで、今回のセビージャ戦がどう語られていくのか──。安部にとってハイライトとはならず、大きく飛躍する足掛かりとなった試合のひとつぐらいになることを望みたい。数年後にどんな成長を遂げているか、とても楽しみな選手である。
文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。Jリーグ登録フリーランスライター。2000年よりサンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。
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