2018年12月01日(土) 14:03キックオフ 県立カシマサッカースタジアム
【入場者数】31,619人 【天候】晴、弱風、 気温15.9度、 湿度49.0% 【ピッチ】全面良芝、乾燥
【主審】佐藤 隆治 【副審】山内 宏志 【副審】五十嵐 泰之 【第4の審判員】高山 啓義
J1第34節 vs鳥栖
聖地での最終節、失意のスコアレス。鹿島が鳥栖とドロー、リーグ3位でフィニッシュ。
リーグ戦を締めくくるホームゲームは、不甲斐なきドローに終わった。J1第34節、サガン鳥栖戦。1ヶ月ぶりに帰還したカシマスタジアム、3万超の背番号12が駆け付けた最終節で、鹿島は得点を奪うことができなかった。閉塞感の漂う90分を経て、ブーイングが鳴り響く。0-0。今季のJ1は3位でのフィニッシュとなった。
11月10日、テヘランでの死闘を乗り越えてアジアの頂へと上り詰めた鹿島は、つかの間の充電期間を得た。国際Aマッチウィークに伴うインターバルを経て、21日に公式戦再開を迎える。天皇杯準々決勝の甲府戦、敵地でのノックアウトマッチは非常に難しい戦いだった。ACL王者として臨んだ初戦、結果は1-0。そして3日後、単調な攻撃からカウンターを受ける場面も少なくなかったが、昌子や犬飼、クォン スンテを中心とした守備陣がしっかりと耐えしのぎ、土居が鋭いミドルシュートを突き刺して90分で決着をつけた。
甲府から鹿嶋へ戻ったチームは、息つく間もなく次なる戦いへ向かった。3日後、J1第33節の相手は仙台。チケット完売のユアスタで、鹿島は再び苦しい戦いを強いられた。それでも堅守を築き上げ、セットプレーから昌子が先制点。後半に入ると体のキレを取り戻し、前傾する仙台の背後を突いて2つのスコアを重ねた。3-0。試合巧者の風格を纏いながら、アジア制覇後のアウェイ連戦で2連勝を果たしてみせた。2戦連続のクリーンシートを誇った犬飼は「チーム全員がいい連動性を持ってプレーできたと思う」と、充実の表情で頷いていた。
次なる戦いは1週間後、聖地に帰還する90分だ。チームは2日間のオフを確保し、火曜日にトレーニングを再開。甲府戦で長期離脱からの復活を遂げたレアンドロ、そして仙台戦で1ヶ月半ぶりにピッチに立った内田の存在も、切磋琢磨の水準をさらなる高みへと導いていく。中村もトレーニングに合流し、日を追うごとに強く揺るぎないものとなっていく一体感に包まれながら、チームは集中力を研ぎ澄ましていった。
「11人だけでは勝てない。シーズンを通して、所属する選手全員がしっかりと戦う中で、数多くの試合を勝ち続けていく。その重要性を身をもって示すことができている」。青空のクラブハウス、前日練習を終えた大岩監督はチーム全体を見渡しながら信頼を語っていた。10月31日のC大阪戦や11月6日の柏戦では、先発を大幅に入れ替えたうえで力強く勝利を掴んでいる。虎視眈々と牙を研ぎ続けた若武者たちの躍動と奮闘が、チームの底力をさらに高めたことは疑いようのない事実だ。
「“目の前の試合に必ず勝つ”という姿をサポーターの皆さんに見せるという義務、使命が我々にはある」。ホーム最終節、勝利を誓った大岩監督は仙台戦から3名の先発変更を施した。センターバックの一角に古巣との対峙に向かうスンヒョンを復帰させ、ボランチに小笠原、そして2列目に安西を起用。その他、ゴールマウスにはスンテが立ちはだかり、最終ラインはスンヒョンとともに西、昌子、山本が並ぶ。ミドルゾーンで小笠原とコンビを組むのは永木、そして攻撃陣は安西のほか、遠藤とセルジーニョ、鈴木が先発。虎視眈々とゴールを狙う。そしてベンチにはGKの曽ケ端、内田、犬飼、土居、レアンドロ、久保田、安部が座る。
11月3日、ACL決勝以来の帰還となったカシマスタジアム。フットボールのある週末が、久しぶりに帰ってきた――。聖地は突き抜けるような青空に恵まれ、アントラーズレッドが続々と足を運んでいった。ウォーミングアップへと姿を現した選手たちへ、大音量のチームコールが注がれる。四方を舞うタオルマフラーがボルテージを高め、そして14時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。
コイントスに勝った鳥栖がエンド変更を選択したため、鹿島は前半、ホーム側サポーターズシートへと攻撃を仕掛けることとなった。甲府戦や仙台戦と同様、立ち上がりは守勢を強いられる展開に。開始5分にはペナルティーエリア手前からのFKを直接狙われたが、スンテが的確な反応で弾き出した。百戦錬磨の守護神はシュートブロックの直後にポストに激突してしまったが、力強く立ち上がる。しっかりとクリーンシートを保ち、我慢の時間をしのぎ切った。
鹿島が主導権を握り始めたのは、20分を経過した後だった。永木と小笠原が鋭いプレスをかけ、昌子とスンヒョンも高い位置まで進出してポストプレーに対応。中盤でセカンドボールを確保できるようになると、ボールポゼッション率を高めて敵陣でのプレータイムを伸ばしていった。24分、左サイドから安西がペナルティーエリア右奥へ供給したクロスに鈴木が走り込んだが、ヘディングは枠に飛ばず。続く25分、遠藤が右サイドのゴールライン際から折り返したクロスは相手GKにキャッチされてしまった。
30分を経過しても、鹿島の攻勢が続いた。西と山本の両サイドバックも高い位置を取れるようになり、安西、遠藤との連係から突破を図る。だが、人数をかけて守備を固める鳥栖の攻略には至らず、決定機を作れないまま時計の針が進んでいった。44分にはペナルティーエリア手前で前を向いた小笠原が右足を一閃。しかし、強烈なミドルシュートは枠を越えてしまった。0-0。スコアレスでハーフタイムを迎えることとなった。
「ボックスの深い位置やサイドを効果的に使っていこう」と指揮官が指示を託し、後半45分が始まった。均衡を破るべく攻勢をかけたい鹿島だったが、前半同様、立ち上がりは鳥栖に押し込まれる時間が続いた。両サイド深くまで進出を許し、セットプレーからゴール前へ迫られる場面も少なくなかった。決定機を作られることはなかったが、中盤から前で起点を作れず、我慢の時間が続く。後半最初のチャンスは、キックオフから15分が経過したプレーだった。60分、右サイドからのクロスに反応したセルジーニョがペナルティーエリア内で軌道上に位置を取ると、刹那の判断でボールを浮かせる。右足で放ったシュートはしかし、相手DFにブロックされてしまった。
大岩監督は65分、1枚目の交代カードに土居を指名。背番号8をピッチに送り出し、攻撃陣の活性化を図る。少しずつボールポゼッション率を高めていった鹿島は70分、安西が敵陣左サイドからクロスを供給。鈴木が待っていたが、相手GKにキャッチされた。
0-0のまま、残り20分を切った。鹿島は突破口を見出そうと腐心したが、決定機を作るに至らない。激しいボディコンタクトが繰り返される中、主審の笛でプレーが止まる場面も多く、攻撃のリズムを構築できなかった。大岩監督は82分にレアンドロを投入し、ゴールへの希望を背番号11に託す。
後半最大の決定機は85分、セルジーニョが左サイドのスペースへ展開したプレーが起点となった。フリーで待っていた山本がゴールライン際からクロスを上げると、ファーサイドで待っていた鈴木がヘディングで狙う。しかし、シュートは枠から逸れていった。
指揮官はアディショナルタイムに安部を投入したが、鳥栖の守備を最後まで打ち破ることはできなかった。0-0。リーグ戦を締めくくるホームゲームは、閉塞感に覆われた90分だった。今季のJ1は3位で終了。来季ACLのプレーオフ出場権を手にし、34試合の幕を閉じた。
ホイッスルの直後には怒号が鳴り響き、失意の後に行われたセレモニーでは拍手が聖地を包んだ。アジア制覇の喜び、2つのタイトルを失った悔しさ、残された大会への決意――。師走はまだ始まったばかり、鹿島のシーズンはこれからも続く。次戦は4日後、12月5日に行われるノックアウトマッチ。浦和との天皇杯準決勝だ。舞台は再び、カシマスタジアム。ファイナル進出を懸けた決戦へ、チーム一丸で準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・今季のJ1は16勝8分10敗、勝ち点56の3位で終了。現時点で、来季のACLプレーオフ出場権を獲得した。
・小笠原と安西がリーグ戦2試合ぶりの先発復帰を果たした。
・レアンドロがリーグ戦で2試合連続の途中出場。カシマでの出場は3月31日の第5節札幌戦以来だった。
監督コメント[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・前半は全体のプレスバックが良くできていたので後半もこれを続けていくこと。
・マイボールになったとき、一人一人がしっかりとしたポジションをとり、ボックスの深い位置やサイドを効果的に使っていこう。
・後半も一体感をもって戦い、必ず先に1点を取ろう!
サガン鳥栖:金 明輝
・守備の時、クリアー、パスをもっとはっきりさせること。
・内容は悪くないので続けること。
・受け身にならず、最後まで走り続けること。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
今日は勝利で終わりたかった、その一言。鳥栖の状況も把握していたが、前半から思ったような戦い方ではなかった。そのなかで、相手に少し合わせてしまったのかもしれない。そこはすごく反省している。
Q.最終的には3位となり来年のACL出場権も確保したが、今シーズンを総括すると?
A.今後も大事なゲームがあるので、総括という感じではないが、序盤はなかなか勢いに乗れなかったという反省点がある。昨年の悔しい思いを、スタッフ、選手とともに払拭したいという強い気持ちで臨んだが、そこが逆にプレッシャーや迷いにつながってしまった。そのあたりのマネジメントに関しては、自分の力の至らなさだと非常に反省している。しかし、W杯の中断期間をうまく利用できたこともあり、後半戦は勝ち続けることで自信をつけることができた。過密日程のなかでのタフさについては、チーム内で「タフな日程に立ち向かっていこう。自分たちがタフになろう」と話してきた。すべての大会を戦いながら勝ち上がっていくなかで、出場機会の少ない若手も含めて自信をつけていった。チーム力が底上げされ、後半戦はチームが大きくなっていった。当然、リーグ戦3位、ルヴァンカップ準決勝敗退といった結果は、このクラブではあってはならないこと。責任は感じている。まだ天皇杯、クラブW杯という大会が残されているので、しっかり選手と一体となって、タイトルに向かって前に進んでいければと思う。
Q.他会場の情報はどういった形で監督に入っていたのか? 選手には伝えていたか?
A.自分のところにはスタッフを通じて、ハーフタイム以降は逐一入っていた。選手には伝えていない。選手に対して、こちらから何かを伝えるということはなかった。
サガン鳥栖:金 明輝
サポーターがカシマまでたくさん来てくれて、本当に後押ししてくれたことが、この結果につながったと思う。内容に関しては、正直、満足できるものではなかった。狙いを持ってやってきた部分がもう少しあったが、蹴り合いになったというか、堅いゲームになってしまった。しかし、そこは致し方ないところ。やはり、アントラーズの圧力というものを感じながら戦っていたので、最低限、残留というノルマを達成できたことはよかったと思う。
選手コメント[試合後]
【山本 脩斗】
1点を取って、勝って終わりたかった。鳥栖のサッカーは映像で把握していた。前半立ち上がりは相手が前からプレッシャーをかけてきたけど、そこを耐えれば相手の動きも落ちてくると思っていた。サイドを使いながら徐々に押し込むことができていた。後半はその回数が多くなると思っていたけど、最後の局面で攻めきれず、引き分けに終わってしまった。
【安西 幸輝】
何回か崩せた場面もあったけど、点を取れていないので何とも言えない。鳥栖は全員で守ってくるチームで、崩すのは非常に難しかった。後ろをコンパクトにしていて、非常にやりにくかった。今日は攻撃陣が1点でも取れれば勝てた試合だった。
【土居 聖真】
大きな展開がなかったし、前にスピード感をもって攻める回数が少なかった。うちのいい時はサイドチェンジをよくできていると思うけど、今日はそれが少なかったと思う。前に入り過ぎている選手が多いので、1列下がってサイドや中で受ける動きを指示されていた。
【昌子 源】
受けに回り過ぎてしまって、なかなかスイッチを入れることができなかった。難しい試合になった。勝ち点3が欲しいタイミングで、取ることができなかったので悔しい。昨年と同じ。より成長した姿を見せたかった。
【チョン スンヒョン】
(フェルナンド トーレス選手は)ゴール前での駆け引きがうまい、ワールドクラスの選手。フィジカルも強かったし、ゴール前での高さを意識してマークしていた。他の日本人FWとは異なるタイプだという印象を受けた。接戦でDFがゴールを取ることができれば、勝利を掴むことができると思う。
◆2018明治安田生命J1リーグ 第34節(オフィシャル)
J1第34節 vs鳥栖
聖地での最終節、失意のスコアレス。鹿島が鳥栖とドロー、リーグ3位でフィニッシュ。
リーグ戦を締めくくるホームゲームは、不甲斐なきドローに終わった。J1第34節、サガン鳥栖戦。1ヶ月ぶりに帰還したカシマスタジアム、3万超の背番号12が駆け付けた最終節で、鹿島は得点を奪うことができなかった。閉塞感の漂う90分を経て、ブーイングが鳴り響く。0-0。今季のJ1は3位でのフィニッシュとなった。
11月10日、テヘランでの死闘を乗り越えてアジアの頂へと上り詰めた鹿島は、つかの間の充電期間を得た。国際Aマッチウィークに伴うインターバルを経て、21日に公式戦再開を迎える。天皇杯準々決勝の甲府戦、敵地でのノックアウトマッチは非常に難しい戦いだった。ACL王者として臨んだ初戦、結果は1-0。そして3日後、単調な攻撃からカウンターを受ける場面も少なくなかったが、昌子や犬飼、クォン スンテを中心とした守備陣がしっかりと耐えしのぎ、土居が鋭いミドルシュートを突き刺して90分で決着をつけた。
甲府から鹿嶋へ戻ったチームは、息つく間もなく次なる戦いへ向かった。3日後、J1第33節の相手は仙台。チケット完売のユアスタで、鹿島は再び苦しい戦いを強いられた。それでも堅守を築き上げ、セットプレーから昌子が先制点。後半に入ると体のキレを取り戻し、前傾する仙台の背後を突いて2つのスコアを重ねた。3-0。試合巧者の風格を纏いながら、アジア制覇後のアウェイ連戦で2連勝を果たしてみせた。2戦連続のクリーンシートを誇った犬飼は「チーム全員がいい連動性を持ってプレーできたと思う」と、充実の表情で頷いていた。
次なる戦いは1週間後、聖地に帰還する90分だ。チームは2日間のオフを確保し、火曜日にトレーニングを再開。甲府戦で長期離脱からの復活を遂げたレアンドロ、そして仙台戦で1ヶ月半ぶりにピッチに立った内田の存在も、切磋琢磨の水準をさらなる高みへと導いていく。中村もトレーニングに合流し、日を追うごとに強く揺るぎないものとなっていく一体感に包まれながら、チームは集中力を研ぎ澄ましていった。
「11人だけでは勝てない。シーズンを通して、所属する選手全員がしっかりと戦う中で、数多くの試合を勝ち続けていく。その重要性を身をもって示すことができている」。青空のクラブハウス、前日練習を終えた大岩監督はチーム全体を見渡しながら信頼を語っていた。10月31日のC大阪戦や11月6日の柏戦では、先発を大幅に入れ替えたうえで力強く勝利を掴んでいる。虎視眈々と牙を研ぎ続けた若武者たちの躍動と奮闘が、チームの底力をさらに高めたことは疑いようのない事実だ。
「“目の前の試合に必ず勝つ”という姿をサポーターの皆さんに見せるという義務、使命が我々にはある」。ホーム最終節、勝利を誓った大岩監督は仙台戦から3名の先発変更を施した。センターバックの一角に古巣との対峙に向かうスンヒョンを復帰させ、ボランチに小笠原、そして2列目に安西を起用。その他、ゴールマウスにはスンテが立ちはだかり、最終ラインはスンヒョンとともに西、昌子、山本が並ぶ。ミドルゾーンで小笠原とコンビを組むのは永木、そして攻撃陣は安西のほか、遠藤とセルジーニョ、鈴木が先発。虎視眈々とゴールを狙う。そしてベンチにはGKの曽ケ端、内田、犬飼、土居、レアンドロ、久保田、安部が座る。
11月3日、ACL決勝以来の帰還となったカシマスタジアム。フットボールのある週末が、久しぶりに帰ってきた――。聖地は突き抜けるような青空に恵まれ、アントラーズレッドが続々と足を運んでいった。ウォーミングアップへと姿を現した選手たちへ、大音量のチームコールが注がれる。四方を舞うタオルマフラーがボルテージを高め、そして14時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。
コイントスに勝った鳥栖がエンド変更を選択したため、鹿島は前半、ホーム側サポーターズシートへと攻撃を仕掛けることとなった。甲府戦や仙台戦と同様、立ち上がりは守勢を強いられる展開に。開始5分にはペナルティーエリア手前からのFKを直接狙われたが、スンテが的確な反応で弾き出した。百戦錬磨の守護神はシュートブロックの直後にポストに激突してしまったが、力強く立ち上がる。しっかりとクリーンシートを保ち、我慢の時間をしのぎ切った。
鹿島が主導権を握り始めたのは、20分を経過した後だった。永木と小笠原が鋭いプレスをかけ、昌子とスンヒョンも高い位置まで進出してポストプレーに対応。中盤でセカンドボールを確保できるようになると、ボールポゼッション率を高めて敵陣でのプレータイムを伸ばしていった。24分、左サイドから安西がペナルティーエリア右奥へ供給したクロスに鈴木が走り込んだが、ヘディングは枠に飛ばず。続く25分、遠藤が右サイドのゴールライン際から折り返したクロスは相手GKにキャッチされてしまった。
30分を経過しても、鹿島の攻勢が続いた。西と山本の両サイドバックも高い位置を取れるようになり、安西、遠藤との連係から突破を図る。だが、人数をかけて守備を固める鳥栖の攻略には至らず、決定機を作れないまま時計の針が進んでいった。44分にはペナルティーエリア手前で前を向いた小笠原が右足を一閃。しかし、強烈なミドルシュートは枠を越えてしまった。0-0。スコアレスでハーフタイムを迎えることとなった。
「ボックスの深い位置やサイドを効果的に使っていこう」と指揮官が指示を託し、後半45分が始まった。均衡を破るべく攻勢をかけたい鹿島だったが、前半同様、立ち上がりは鳥栖に押し込まれる時間が続いた。両サイド深くまで進出を許し、セットプレーからゴール前へ迫られる場面も少なくなかった。決定機を作られることはなかったが、中盤から前で起点を作れず、我慢の時間が続く。後半最初のチャンスは、キックオフから15分が経過したプレーだった。60分、右サイドからのクロスに反応したセルジーニョがペナルティーエリア内で軌道上に位置を取ると、刹那の判断でボールを浮かせる。右足で放ったシュートはしかし、相手DFにブロックされてしまった。
大岩監督は65分、1枚目の交代カードに土居を指名。背番号8をピッチに送り出し、攻撃陣の活性化を図る。少しずつボールポゼッション率を高めていった鹿島は70分、安西が敵陣左サイドからクロスを供給。鈴木が待っていたが、相手GKにキャッチされた。
0-0のまま、残り20分を切った。鹿島は突破口を見出そうと腐心したが、決定機を作るに至らない。激しいボディコンタクトが繰り返される中、主審の笛でプレーが止まる場面も多く、攻撃のリズムを構築できなかった。大岩監督は82分にレアンドロを投入し、ゴールへの希望を背番号11に託す。
後半最大の決定機は85分、セルジーニョが左サイドのスペースへ展開したプレーが起点となった。フリーで待っていた山本がゴールライン際からクロスを上げると、ファーサイドで待っていた鈴木がヘディングで狙う。しかし、シュートは枠から逸れていった。
指揮官はアディショナルタイムに安部を投入したが、鳥栖の守備を最後まで打ち破ることはできなかった。0-0。リーグ戦を締めくくるホームゲームは、閉塞感に覆われた90分だった。今季のJ1は3位で終了。来季ACLのプレーオフ出場権を手にし、34試合の幕を閉じた。
ホイッスルの直後には怒号が鳴り響き、失意の後に行われたセレモニーでは拍手が聖地を包んだ。アジア制覇の喜び、2つのタイトルを失った悔しさ、残された大会への決意――。師走はまだ始まったばかり、鹿島のシーズンはこれからも続く。次戦は4日後、12月5日に行われるノックアウトマッチ。浦和との天皇杯準決勝だ。舞台は再び、カシマスタジアム。ファイナル進出を懸けた決戦へ、チーム一丸で準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・今季のJ1は16勝8分10敗、勝ち点56の3位で終了。現時点で、来季のACLプレーオフ出場権を獲得した。
・小笠原と安西がリーグ戦2試合ぶりの先発復帰を果たした。
・レアンドロがリーグ戦で2試合連続の途中出場。カシマでの出場は3月31日の第5節札幌戦以来だった。
監督コメント[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・前半は全体のプレスバックが良くできていたので後半もこれを続けていくこと。
・マイボールになったとき、一人一人がしっかりとしたポジションをとり、ボックスの深い位置やサイドを効果的に使っていこう。
・後半も一体感をもって戦い、必ず先に1点を取ろう!
サガン鳥栖:金 明輝
・守備の時、クリアー、パスをもっとはっきりさせること。
・内容は悪くないので続けること。
・受け身にならず、最後まで走り続けること。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
今日は勝利で終わりたかった、その一言。鳥栖の状況も把握していたが、前半から思ったような戦い方ではなかった。そのなかで、相手に少し合わせてしまったのかもしれない。そこはすごく反省している。
Q.最終的には3位となり来年のACL出場権も確保したが、今シーズンを総括すると?
A.今後も大事なゲームがあるので、総括という感じではないが、序盤はなかなか勢いに乗れなかったという反省点がある。昨年の悔しい思いを、スタッフ、選手とともに払拭したいという強い気持ちで臨んだが、そこが逆にプレッシャーや迷いにつながってしまった。そのあたりのマネジメントに関しては、自分の力の至らなさだと非常に反省している。しかし、W杯の中断期間をうまく利用できたこともあり、後半戦は勝ち続けることで自信をつけることができた。過密日程のなかでのタフさについては、チーム内で「タフな日程に立ち向かっていこう。自分たちがタフになろう」と話してきた。すべての大会を戦いながら勝ち上がっていくなかで、出場機会の少ない若手も含めて自信をつけていった。チーム力が底上げされ、後半戦はチームが大きくなっていった。当然、リーグ戦3位、ルヴァンカップ準決勝敗退といった結果は、このクラブではあってはならないこと。責任は感じている。まだ天皇杯、クラブW杯という大会が残されているので、しっかり選手と一体となって、タイトルに向かって前に進んでいければと思う。
Q.他会場の情報はどういった形で監督に入っていたのか? 選手には伝えていたか?
A.自分のところにはスタッフを通じて、ハーフタイム以降は逐一入っていた。選手には伝えていない。選手に対して、こちらから何かを伝えるということはなかった。
サガン鳥栖:金 明輝
サポーターがカシマまでたくさん来てくれて、本当に後押ししてくれたことが、この結果につながったと思う。内容に関しては、正直、満足できるものではなかった。狙いを持ってやってきた部分がもう少しあったが、蹴り合いになったというか、堅いゲームになってしまった。しかし、そこは致し方ないところ。やはり、アントラーズの圧力というものを感じながら戦っていたので、最低限、残留というノルマを達成できたことはよかったと思う。
選手コメント[試合後]
【山本 脩斗】
1点を取って、勝って終わりたかった。鳥栖のサッカーは映像で把握していた。前半立ち上がりは相手が前からプレッシャーをかけてきたけど、そこを耐えれば相手の動きも落ちてくると思っていた。サイドを使いながら徐々に押し込むことができていた。後半はその回数が多くなると思っていたけど、最後の局面で攻めきれず、引き分けに終わってしまった。
【安西 幸輝】
何回か崩せた場面もあったけど、点を取れていないので何とも言えない。鳥栖は全員で守ってくるチームで、崩すのは非常に難しかった。後ろをコンパクトにしていて、非常にやりにくかった。今日は攻撃陣が1点でも取れれば勝てた試合だった。
【土居 聖真】
大きな展開がなかったし、前にスピード感をもって攻める回数が少なかった。うちのいい時はサイドチェンジをよくできていると思うけど、今日はそれが少なかったと思う。前に入り過ぎている選手が多いので、1列下がってサイドや中で受ける動きを指示されていた。
【昌子 源】
受けに回り過ぎてしまって、なかなかスイッチを入れることができなかった。難しい試合になった。勝ち点3が欲しいタイミングで、取ることができなかったので悔しい。昨年と同じ。より成長した姿を見せたかった。
【チョン スンヒョン】
(フェルナンド トーレス選手は)ゴール前での駆け引きがうまい、ワールドクラスの選手。フィジカルも強かったし、ゴール前での高さを意識してマークしていた。他の日本人FWとは異なるタイプだという印象を受けた。接戦でDFがゴールを取ることができれば、勝利を掴むことができると思う。
◆2018明治安田生命J1リーグ 第34節(オフィシャル)